車もレントゲン検査 !?「物事の姿をありのままに見せる」斬新なアートの世界

mad gallery

イメージやうわべばかりに囚われがちな今日の社会で、イギリスの芸術写真家 ニック・ヴィージー氏は、物事を真に構成するものを問い、探索し、現代の空虚さに立ち向かっている。物を創造し、変形させるのではなく、ヴィージー氏はそこに存在し得る物つまり、知っていると思い込んでいたにも関わらず、実際はそうではなかった、というオブジェに常に焦点を当てているのである。

ヴィージー氏は人工、自然を問わず、日常よく使用するあらゆる物の細かい層や構造を表現するため、放射線画像装置を使用し、ごく普通の物を魅惑的に表現するという、物の「肖像画」を作成している。

場合によっては死に至りかねない量のX線を浴びながら制作活動に臨む彼の作品は詩的かつ優雅。普段は見ることができない世界への扉を開いてくれる。幽霊を想起させながらも、穏やかな側面を持つ固形の物体に入り込み、新しい世界観に触れ、新鮮な視点で現実を見つめるという感覚を与えてくれる。ヴィージー氏の作品は芸術と科学の融合が生む典型的な例であり、「写真」の域を超えている。科学研究所までもが彼の作品展の開催を希望するという厳粛さを持ち合わせている。



元冷戦時代にスパイ用基地とされていた英国南部、ケントの草原に位置するレーダースタジオを軍組織から購入し、改装した。少人数のチームと共に作業をしている。致死量に達しかねないX線の電磁波量と使用時間を考慮し、ヴィージー氏にはこの隔離された立地条件が非常に重要となる。「健康に来しかねない問題を考えれば、自宅の隣でX線機器を使用されては誰もが嫌がるでしょう」と語る。 



作品用の写真を撮る上で彼は、フィルム粒子がなく極めて鮮明なイメージを実現する緩焼性フィルムを使用している。病院などで見かけるX線装置とはどこか違う。病院で一般に使用されているX線装置は出力量100キロボルトで0.2秒発射されるのに対し、ヴィージー氏の機器は200キロボルトの出力量で、発射時間は時によっては20分にも達する。

オクタン日本版編集部

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