マイナーチェンジ前後のアルピナD5Sを乗り比べ|新旧それぞれの魅力をひもとく

Hiroki KOTSUKA

「ツウ好み」のブランドとして自動車愛好家から高い評価を得ているアルピナだが、具体的にはどのような面が評価されているのだろうか。この春、日本に導入されたD5Sのマイナーチェンジ前後の車両をモータージャーナリストの高平高輝氏が乗り比べた。現行型と従来型それぞれのドライビングフィールや内外装を比較しながら、「ツウ」を虜にするその本質を探っていこう。



分かる人には堪らない


昨年の日本カー・オブ・ザ・イヤーで初参加にして現行型B3がパフォーマンス・カー・オブ・ザ・イヤーに輝いたせいか、以前に比べれば格段に浸透しているようだが、それでもいまだに「知る人ぞ知る」ポジションを守っているのがアルピナである。自動車好きには釈迦に説法もいいところだが、一般人にはなおちょっとスペシャルなコスメティックパーツを取り付けたBMWぐらいに思われている節がある。他メーカーのように大々的な宣伝をすることもないし、何よりも販売台数が少ないからだ。


正式社名「アルピナ・ブルクハルト・ボーフェンジーペンGmbH+Co.KG」は、端正で高性能なスペシャルBMW(車名はBMWアルピナとなる)を製造販売する独立した自動車メーカーとして、1965年の創業以来、BMW本社と密接な関係を維持しているいっぽうで、メルセデスAMGやBMW Mとは異なり、両社の間に資本関係はない。きわめてユニークなポジションを占めているのである。

写真 左:従来型D5S   右:現行型D5S


近年では年間生産台数1500台前後、最大でもおよそ1700台にすぎないアルピナは、今や最も少量生産の自動車メーカーだろう。年間13万台以上を生産するメルセデスAMGやBMW M社はもとより、フェラーリやランボルギーニよりもはるかに少ない。限られた顧客向けに特別なモデルを少量生産するビジネススタイルを、既に半世紀以上健全に続けているのだから、これはもう非常に稀な孤高のブランドといっていい。当然彼らの製品もいわゆるコニサー向けに細部の違いにこだわったもので、しかも端正で控えめなエレガンスを旨としているのだから、自動車趣味のひとつの究極といえるだろう。それゆえにいつでも定番商品が手に入るわけでもないし、在庫がふんだんにあるわけでもない。趣味に合うものにたまたま巡り合えたら幸運。小体な専門店とはそういうものではないだろうか。

ディーゼルでもこの高性能


アルピナD5SはG30型BMW5シリーズをベースにしたアルピナの最新ディーゼルセダンで、2017年の東京モーターショーが日本初お披露目だった。4.4リッター ガソリンV8ツインターボを搭載するB5ビターボ同様「アルラット」、つまりxDriveシステムをベースにアルピナ専用チューニングを施した4WD車である。4WDのディーゼルセダンはアルピナ初だというが、もはやビターボや4WDの文字はどこにも見当たらず、簡潔にD5Sを名乗る。昨年ベースモデルの5シリーズのマイナーチェンジに伴って、D5Sもバージョンアップされ、グリルとエアインテークがより大型化されるとともに、インフォテインメントシステムなどが最新仕様に進化し、この春から日本に導入された。

写真 奥:現行型D5S   手前:従来型D5S


アルピナのトレードマークである20スポークデザインのホイールは受け継がれている。

直列6気筒3リッター ツインターボディーゼルの最高出力と最大トルクは、255kW(347ps)/4000~4200rpm、730Nm(74.4kgm)/1750~2750rpmというもので、従来型のツインターボディーゼルユニットのスペックである240kW(326ps)/4000~4600rpmと700Nm(71.4kgm)/1750~2500rpmに比べると若干強力になっていることが分かるが、最大の変更点は48V駆動のマイルドハイブリッドシステムを搭載したことにある。おかげで、再始動はさらに静かでスムーズになっているようで、ディーゼルエンジンのかすかなビートも事実上感じられない。とはいえ、新旧の違いはそのぐらいのもの。現代の新世代ディーゼルは4気筒でも十分パワフルでスムーズであることは周知のことだと思うが、直6ディーゼルの滑らかさと力強さはまた別格であり、初めて乗る人ならディーゼルとは気づかないに違いない。本家BMWの日本仕様にはB57型直6ディーゼルターボはX5以上の大型SUVにしか設定されておらず、3シリーズや5シリーズで6気筒のディーゼルターボが選べるのはアルピナだけである。

従来型エンジン

現行型エンジン:どちらも直列6気筒DOHCディーゼルターボを搭載する。



文:高平高輝 写真:小塚大樹  Words: Koki TAKAHIRA Photography: Hiroki KOTSUKA

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