なぜ、いま初代ロードスターなのか|オリジナル再生にこだわるショップを探訪

EURO PORT

初期型ロードスターのデビューから30 年以上の時間を経て、今再びその価値が見直されようとしている。開発者に対する畏敬の念をもち、オリジナル再生にこだわる神戸のショップを訪ねた。


世界に誇るべき日本車を残したい


初代モデルのユーノス・ロードスター(以下ロードスター)がデビューを果たしたのは1989年のこと。欧米ではMX-5MIATAという名称で発売された。全長4mを切るコンパクトなボディサイズに、パワフルではないが吹け上がりの良い1.6リッターエンジンと、小気味よいシフトフィールをもつ5段マニュアルトランスミッションの組み合わせは、当時280馬力車が全盛となりつつあった日本のスポーツカーマーケットに対して、文字通り一石を投じるインパクトを有していた。初期型ロードスターの累計販売台数は世界で43万台以上。数々の英国製ロードスターや、イタリア製のバルケッタに勝るとも劣らない造形や走行感覚が、今また見直されつつある。

製造元のマツダが本格的なレストアサービスを提供するようになったことは、日本車を愛するファンにとっては朗報であった。もちろんロードスター愛好家は世界中に存在し、彼らもそれぞれ独自の方法で、永くロードスターを乗り続けることに心血を注いでいる。その多くは、走りの楽しさを追求したカスタムやチューニングを施すタイプ。そんな中、オリジナルにこだわる手法で、あらためてロードスターの再生に力を入れ始めた人物がいる。

それは、田中佑介氏である。神戸でユーロポートというショップを営み、主にプレミアカーの販売を手掛けている。自動車ビジネス界においてはやや異色な存在で、著名なクリエイターを友人にもち、自身でも世界のユニークなコンテンツを経験しては、それを仕事にフィードバックしている。毎年数多くのプレミア新車を特別にオーダーして楽しむのも「真の価値を知るため」とのこと。学生時代を北米カリフォルニア州で過ごしたので英語が堪能なのも、彼の強みかもしれない。

田中氏がロードスターに興味をもったのは、とある知人の、若い中東富裕層のコメントであった。「日本車で、今欲しいのは初期のMIATAかな。あんな楽しそうなスポーツカーはない」必ずしも高額かつ希少な車ではなくても、永く魅力をもち続ける車は存在する。さらにいえば誰もが知っている、たとえばトヨタ2000GT のような特別な車ではなくても、大衆車レベルながら、品の良いポテンシャルを身に着けた日本車があることを、あらためて思い知らされたという。海外での評価の高さは、もっと日本でも誇るべきものなのだと。

ただし、リアルにロードスターの本領を楽しむには、まだ田中氏は若すぎた。そこでまず、なるべく程度の良いロードスターを全国から探してみることにした。魅力あふれる小型スポーツカーの“味わい”を自身で感じ取るためだ。トータルのクオリティを高めていくために、できればまず10台を集めて並べたいと考えている。2020年5月の取材時には既に5台がストックされていた。1.6リッターのNA6CE 型はVスペシャルほか4台、他にNA8Cシリーズ1型のVスペシャルがあり、すべて完全なオリジナルに戻すべく整備を行っている。

完成した1.6リッター(写真左)と内装を仕上げ中の1.8リッター(写真右)。ともにV スペシャルである。本物を知るためにはオリジナルコンディションに近いところまで徹底的に仕上げて2台を乗り比べてみるべきとのこと。

程度の優れた個体を集めることは、実は容易なことではないという。個人からの買い付けも考えているが、低走行でオリジナル度が高い車のオークション取引では、結果的に「相場を勝手に引き上げてしまいました(笑)」という事象さえ起こっているという。

輸入車に比べて、パーツ注文時のレスポンスが早いことは圧倒的にうれしい。たとえば、よくあるロードスターのドレスアップで、フロントのナンバープレートを左横にずらした改造を見掛けるが、これも純正パーツのプレートホルダーを新品で取り寄せて元の状態に戻す。幌ももちろん純正新品が手に入るが、リアウインドウだけは「もっと傷が付きにくい、クオリティの高いものがないか」、工夫をしたいと考えている。ただし、既に手に入らないパーツも、もちろんある。たとえばカセットテープに対応した純正の2DIN オーディオだ。ナビ付きの汎用オーディオ製品に代えられていることが多いそうだが、これも中古パーツを探し出してストックしていく。またVスペシャルに装着されていた、スピーカー付きヘッドレストを覚えている方はいるだろうか。このスピーカーの純正パーツはすでに欠品。さすがに状態の良いオリジナル品は残っていないので、これだけは程度の良い換装品を探しているというこだわりようだ。

Vスペシャルのヘッドレストにはスピーカーが内蔵されていて、オープンエアの楽しみ方へのこだわりも感じられる。

オクタン日本版編集部

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