2世紀以上の時を経て、「8」のデザインを受け継ぐ「グラン・セコンド スケルトン」の魅力が増す理由

ジャケ・ドロー

18世紀のヨーロッパでは理性による人間の解放、平等、思考の普遍性を唱える啓蒙主義が広まっていた。またイギリスでは産業革命が勃興し、近代科学が花開こうとする時代でもあった。一方で宮廷をパトロンとしたバッハやモーツアルトを誕生せしめた新しい文化芸術の時代、「典雅の世紀」とも言わる。そんな科学と芸術という二律背反する人間活動を生涯にわたって行き来した天才が、「ジャケ・ドロー」の創始者、ピエール-ジャケ・ドローだ。

1721年に生まれ、1738年には時計の聖地スイス、ラ・ショー・ド・フォンに最初の工房を開き、1774年にはロンドンに工房と貿易会社を、そして 1784 年にはジュネーブとして最初の本格的な工房を構えて、世界中の王侯貴族達を顧客に成功をおさめた。これらの顧客には、フランスのルイ15世、ルイ16世、王妃マリー・ アントワネットやスペインの国王のフェルナンド6世、そしてロシアや中国の皇帝たちが名を連ねる。当時のヨーロッパの高貴で華麗な王侯貴族たちを魅了しただろうジャケ・ドローの代表作が、「文筆家(The Writer)」、「画家(The Draughtsman)」、そして「音楽家(The Musician)」という3体のオートマタ(人造人間)だ。ラ・ショー・ド・フォンで発表されたこれらの作品は、天才時計師ならではの複雑機構を、当時勃興しつつあった工作技術をもって製造し、芸術的表現へと昇華させている。

スイス・ヌーシャテル歴史美術博物館に所蔵されている、ピエール・ジャケ・ドローによる3体のオートマタ(人造人間)

背面からその複雑な機構を覗き見る。「文筆家」を例にすると、カムの組み合わせ次第で自在に文字を書くことができる

そんな天才時計師が遺した傑作が「グラン・セコンド」の懐中時計だ。調和と完全をコンセプトに数字と無限を象徴する“8”を文字盤で表現したデザインは、2世紀以上の時を経てなお古びることなく、進化を遂げながらアバンギャルドな存在感を放っている。そもそも時分針をセンターからオフセット(中央からずらす)することはムーブメントの汎用性と設計に大きな制約を与える。そのオフセットの目的が、本来時間を知る上では重要度の低い秒針を配置することを狙ったものだと想像すると、それこそジャケ・ドローが当時思い巡らせたはずの時間という概念への問いかけにも見えてくる。

グラン・セコンドは18世紀に制作された懐中時計に着想を得ている。右はその懐中時計の復刻モデル「ポケットウォッチ(THE POCKET WATCH)」

ここに紹介する「グラン・セコンド スケルトン(GRANDE SECONDE SKELET-ONE)」は2018年に創業280年を記念して発表されたスケルトンシリーズの最新作だ。彫刻や建築をイメージさせる大胆な装いのグラン・セコンド スケルトンは、意外にもその発表から2年ほどしか経っていない。にもかかわらずそれがまるで長い時を経て熟成されたかのような佇まいを見せるのは、そもそものグラン・セコンドのデザインの高い完成度によるものであることは間違いない。さて、2021年の新作はそのアイコニックなデザインはそのままに、6時位置では細部まで堪能できる手作業で組み立てられたムーブメントを背景に、サファイアガラスダイアルの上を回転する大型の秒針がまるで宙を舞っているような印象を与える。ムーブメントはシリコン製のヒゲゼンマイとアンクルの先端、約3日間(68時間)のパワーリザーブを確保するツインバレル、41.5mm のケースを取り巻くようなオープンワークの 18Kホワイトゴールドローターを備えている。


グラン・セコンド スケルトン セラミック グラン・セコンド コレクション
各世界限定 28 本
ムーブメント/自動巻き/ケース径 41.5mm/厚さ 12.48mm/ブラックセラミックケース/ 3気圧防水/パワーリザーブ 68 時間

価格 : 3,146,000 円(税込価格)/2,860,000 円(本体価格)

ジャケ・ドロー ブティック銀座
03-6254-7288
www.jaquet-droz.com

発表されたグリーン、スカイブルー、イエローカラー3つのバリエーションは、各色わずか世界限定 28 本。それぞれの色が手縫いのストラップ、針、インダイアルの時分表示にもあしらわれ、グリーンとスカイブルーカラーの仕様は、どちらも 18K ホワイトゴールド製のインデックスとネジを採用している。またコントラストを演出するために、時分表示リングとケースはブラックセラミックとなっている。一方、イエローカラーのモデルはよりやわらかな色調を纏う、プラズマセラミックのケースが特徴。ちなみに《プラズマセラミック》は、高温の窯で鍛造することで金属粒子を加えることなくメタリックな光沢を放つとともに、セラミック固有の特性を一切失うことなく特別な色調を獲得している。

天才時計師と称されることの多いピエール-ジャケ・ドロー。ただその功績を見るに、彼は(現代に置き換えれば)ある種の天才プログラマーであり、技工士であり、芸術家であり、経営者でもあったはずだ。その天才の片鱗を窺えるという視点で「グラン・セコンド スケルトン」を眺めると、また違った味わいが漂うはずだ。いずれのモデルもあまりに生産本数が少ないことから、実物を目にする機会はないかも知れない。が、「グラン・セコンド スケルトン(GRANDE SECONDE SKELET-ONE)」の進化と深化は、今後も目が離せなさそうだ。


4月17日(土)~5月5日(水・祝)まで、ジャケ・ドロー ブティック銀座にて、一部新作と定番6モデルを一堂にご覧いただける「グラン・セコンド スケルトン フェア 2021」を開催。フェアの詳細はこちらから。

オクタン日本版編集部

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