北へ、南へ、シトロエン2CVと30年│ 第21回 ソースをもらいに北へ!

Yoshisuke MAYUMI

まだまだ肌寒い風の吹く3月の初旬、2CVを北に向かって走らせていた。埼玉のガレージ仲間であるカメラマンが、出張のついでに大阪のシトロエン仲間から手に入れたという美味しいお好み焼きソースを分けてもらうためだ。いくらお好み焼きにうるさい関西人が絶賛するお好み焼きソースとはいえ、わざわざ100km走っていく価値があるのか疑問に思う方も多いだろう。筆者もそう思う。

まあ、はっきり言えば気晴らしだ。たまたま予定のない休日、SNSを見ていたらガレージ仲間たちが大阪土産のソースの話題で盛り上がっていたので、ついつい筆者も欲しいと手を挙げてしまったのだ。仲間の一人が650ccのボアアップキットを組み込んだという話も出ていたから、それにもちょっと興味があった。そういえば、いつの間にか何処かへ行ってしまった2CVの左前のホイールキャップをつけるにもちょうどいい。



お前はホイールキャップすら自分でつけられないのか!とお嘆きの辛口な貴兄に言い訳するなら、2CVにホイールキャップをつけるためにはホイール内側にナットをつけなければならず、そのために2CVの変テコな車載ジャッキでジャッキアップするのが面倒なのだ、といえば分かっていただけるだろうか。ガレージに行けばちゃんとしたジャッキがある。まあ、色々と理屈をつけているが、要は気晴らしでドライブがしたかっただけだ。



よし、出発だ!と思った矢先に家庭の用事を思い出し、埼玉の田舎道を走る頃には夕陽と追いかけっこをする時間になってしまった。窓から吹き込んでくる北関東の風は3月らしい土の匂いがした。最近はマスクをしていることが多いから、季節の匂いに触れることなく日々が過ぎてゆく。そういえば今年は沈丁花の香りにも気づかなかった。



秋が深まる頃の金木犀、冬の終わりの沈丁花、春の始まりの土の香り。季節の移ろいを感じさせるそれらの匂いは、過去の記憶を呼び起こす魔法だ。浪人生活の終わりの頃、友人宅で麻雀をした帰りに沈丁花の香りがした。その時、なぜか気分が急に明るくなって、翌日の大学入試結果発表は合格ではないかという予感がした。そして、その通りになった。だから今でも沈丁花の香りがする季節は気分がいい。

今年の冬はマスク云々以前に、外出すること自体が減ったせいもあるだろう、季節の匂いに触れることなくあっという間にカレンダーだけが進んでしまった。2CVの窓から吹き込んできた春の土の香りのおかげで、ココロのカレンダーもようやく季節に追いついた気がした。



なんて、思いにふけりながらガレージに着くと、仲間たちから一斉に遅いよと怒られた。いつものように「b」だけは2CVをいじっている。今日はようやく手に入れた60年代の白いステアリングホイールを磨いているようだ。





それ以外の仲間たちはテーブルを囲みながら、そして適度な距離を保ちながら、もちろんマスクをして話し込んでいた。それにしても、これだけの人数が集まるのは久しぶりだ。そんなにソースが欲しかったのだろうか。いや、たぶん違う。みんなきっと気晴らしがしたかったに違いない。



帰り道に650ccにボアアップしたばかりのJUNちゃんの2CVを運転させてもらった。わずか50ccの排気量アップにもかかわらず、低回転域からトルクが出ていて、とても乗りやすかった。生産中止から30年以上が経つのに、こういったチューンナップパーツが手に入るのは、やはり2CVの良いところだ。自分の2CVの後ろ姿を見るのも久しぶりだなぁ、と思っていたら、ホイールキャップのことをすっかり忘れていたことに気がついた。まあ、いいか(笑)。



最後に、大阪から遥々やってきた「パロマソース」は、確かに関西人が絶賛するだけにフルーティかつスパイシーで、お好み焼きにとてもよくマッチしていたことも付け加えておこう。


文・写真:馬弓良輔 Words & Photography: Yoshisuke MAYUMI

文・写真:馬弓良輔 Words & Photography: Yoshisuke MAYUMI

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