歴史を彩ったグランプリマシンが本気で走る!グランプリ・ドゥ・モナコ・ヒストリックの熱き戦い

Automobile Club de Monaco

パンデミックの煽りを受けて2020年のグランプリ・ドゥ・モナコ・ヒストリックは中止となった。しかしその後すぐにモナコは2021年、グランプリの5週間を宣言。ヒストリック、F1そしてフォーミュラEを行うと。その頃はコロナ騒ぎも終息していると願いを込めていたのだろうが残念ながら今も猛威は止んでいない。しかし、モナコは宣言通りに「グランプリ5週間」を実行に移した。まずはヒストリックレースを4月23日からスタートさせたのだ。その模様はライブで配信され日本でも再びの緊急事態宣言の中でも感染リスクなく観戦することができたので、寝不足な週末を過ごした方も多いのではないだろうか?ここでは各カテゴリーごとにお伝えすることとする。



SérieA:2018年から始まった戦前の車両によるカテゴリー。これが好評だったため今回も続けて開催された。前回同様Frazer Nashがポールポジションでその強さを見せつける。レースも半分まで先頭を走り続けるがメカニカルトラブルでリタイア。マセラティ6CMの猛追を払いのけてタルボ=ラーゴT150Cがトップ、ブガティ35Bがつづきフランス車の1-2という結果になった。
優勝したTALBOT-LAGO T150C。

SérieB:1955年から59年までの車両によるカテゴリー。独走で優勝したギレルモ・フィエロ・エルタはこのマセラティ250Fの当時のドライバーでもあった。また優勝したこのマセラティ250Fは世界初の女性ドライバー、マリア・テレーザ・デ・フィリッピスの駆ったマシンであり、彼女のデビューがこのモナコである。2位に入ったロータス最後のフロントエンジンとなったロータス16。2番目スタートでギレルモとのバトルを誰もが予想していたがスタートで出遅れ何台にも抜かれてしまう。その後巻き返して2位になったもののギレルモのマセラティ250Fとは20秒ほどの差がついていた。3位はフェラーリ246Dino。
実際にマセラティ250Fのドライバーだったギレルモによるドライブで見事優勝。

SérieC :1952年から57年のフロントエンジンのスポーツカー。このカテゴリーにも参戦したギレルモ・フィエロ・エルタはマセラティ300Sで再びポール・トゥ・ウィン。2021年のモナコで2回の優勝を勝ち取った。スタートで3番手だったジャガーDタイプは好スタートでギレルモをパス。2番手のゼッケン38マセラティ300Sと共にトップ争いを繰り広げる。マシントラブルで交代した38番のマセラティをかわしてギレルモがトップに。セリエBのような独走にはならず終始ジャガーDタイプとテールトゥノーズの接戦を繰り広げての優勝だ。ゼッケン38のマセラティ300Sは7周目で前後に大きなダメージを受ける大破でリタイア。何とこのマシンは、史上初の女性グランプリドライバーであるマリア・テレーザ・デ・フィリッピスがかつて駆ったものだった(メイン写真)。
セリエCのスタート。

SérieD:1500ccエンジンで1961年から65年まで。ちょっと寂しい7台でのレース。ポールポジションのロータス21を駆るマーク・ショーは完璧なスタートを決めて危なげない優勝を。2番手スタートのロータス18はこれを失敗。失速するも最終的には2位を獲得。終わってみれば3位がロータス24とロータスによるポディウムの独占となった。
プールを抜けて行くロータス24。

SérieE:1966年から72年の3リッターエンジンのグランプリカー。 ポールポジションのマクラーレンM19Aは決して悪くないスタートを切れた。2番手スタートのサーティスTS9が上り坂のボー・リヴァージュで一気に加速して抜き去った。その後は12週までマクラーレンがアタックするが一度も譲らずチェッカー。興奮の12周だったわけだがその後ろ、3位を争う2台マーチ721とブラバムBT31がファイナルラップのシケインで接触ブラバムはそのまま3位でチェッカーを受けた。マーチ721は5位に。このマーチは1972年にドイツのロルフ・シュトメレンがドライブしこのモナコを走ったマシン。
矢印のマーキングがそのまま突き刺さるような走りを見せたサーティスTS9。

SérieF:1973年から76年までの3リッターグランプリカー。ジャン・アレジがニキ・ラウダの1974年にここモナコでポールポジションを取ったマシンを駆る。レースでは2番手スタート。ポールはロータス77。素晴らしいスタートを決めたジャン・アレジはすぐにトップを奪い、猛追するロータス77と激しいバトルをする。18周で行われたレースの15周目、最終コーナーの立ち上がりでロータスに後ろから接触したアレジのフェラーリ312B3はウォールに激突した。ロータスはウィングに少しダメージを負っただけでこのままチェッカーを受ける。ファイナルラップではサーティースTS19がコントロールを失いスピンをしてウォールに当たり、破片が路上にまき散らされた。その後すぐに赤旗でレースは終了。アレジに接触したペナルティでロータスは3位に降格。繰り上げて優勝したのはマクラーレンM26。3位降格のヴェルナーはポディウムに上がるのを拒否し、トロフィーも受け取らないという一幕も。ジャン・アレジは”素晴らしいレースだったので残念だった。でも来年また挑戦するよ”と語った。
ジャン・アレジのマシンはニキ・ラウダのフェラーリ312B3。残念な結果だったがアレジは来年に向けて意欲を燃やしている。

SérieG:1977年から80年までの3リッターグランプリカー。ポールを取ったArrows A3は2番手のヘスケス308Eにホールショットを奪われる。序盤抜き返しにかかるがウォールにヒットさせサスペンションを傷めてリタイア。シケイン手前でスピンし大破したマクラーレンM26はかつてジェームズハントが駆ったマシン。同じシケイン手前ではウィリアムズFW07Bもスピン。フロントを激しく大破。2位を争っていたティレル010とアロウズA3。アロウズを駆るのはベテラン、アラン・フェルテ。しかしアラン・フェルテがシケインでバリアに接触、フロントタイアをバーストさせる。最終ラップの2位争いとなった2台のティレル010。セリエFと同様に最終コーナーで接触バリアに激突という結果に。アクシデントも多く激しい闘いだったセリエG。それを制したのはヘスケス308E。ドライバーはイギリスのマイケル・ライオンズ。よく見ると彼は今回セリエE/F/Gと3レースで優勝ハットトリックを決めたのだ。
気がつくと3つのカテゴリーで勝利を収めたマイケル・ライオンズ。彼がこの日最後のレースで優勝したヘスケス308E。

観客数も限られ、何よりモナコ以外からの入国に制限され、出走車数も少なかったもののレース自体は相変わらず熱く激しいものだった。このレース自体動画サイトで何時でも観戦できる。家から出られないGWはヒストリカルレースにどっぷり浸かるのもひとつの手かもしれない。

Grand Prix de Monaco Historique 2021
https://acm.mc/en/edition/grand-prix-de-monaco-historique-2021/

文:櫻井朋成 写真:Automobile Club de Monaco

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