「ヤバいぐらいに」熱い志をもつ3人が生み出した、ワンオフのアルピーヌ「Ravage」

Remi Dargegen X Ravage

アルピーヌは1955年にジャン・レデレ氏によって設立されたスポーツカー製造社であり、今までに数々の傑作モデルを輩出している。特に1963年にデビューしたアルピーヌA110は魅力的だ。鋼管バックボーンのシャシーにFRPモノコックボディが載せた独特の軽量構造により、デビュー時にはわずか1100ccの排気量ながら抜群に走りでファンを魅了した。

もともとラリー競技に長けていたアルピーヌ社は、まず1964年にジャック・フィレがアルピーヌA108でカテゴリー優勝。1971年にはオヴェ・アンダーソンがあのモンテカルロ・ラリーでA110 1600Sを駆り、歴史的な完全優勝を遂げている。また1973年から始まるWRC開幕戦のラリー・モンテカルロでも、A110 1800Sは表彰台を独占。同年A110はWRCの初代マニュファクチャラーズチャンピオンに輝き、その名を世界に轟かせることになる。

ただし1973年にアルピーヌ社は経営不振によりルノー傘下に入った。A110の製造も1977年にて幕を閉じる。その後アルピーヌというブランドは一旦途絶えたものの、40年後の2017年には旧モデルの車両名称と同じ「A110」として復活を果たし、世界のファンを喜ばせている。また2019年には新しいA110でもラリーバージョンが追加され、しかも初めてモンテカルロで優勝した50年後、2021年1月に開催された第89回ラリー・モンテカルロでも、現行アルピーヌA110ラリーがR-GT部門で優勝(総合22位、出走5台は全車完走)し、記念すべき快挙と報道されている。

さて、特異なエンジニアリングで注目されるRavage社は、このラリーモンスターの血統を継ぐ現行A110をベースに、グループBにインスパイアされたロードゴーイング・スポーツカーの製造を進めていたのだ。携わったのは情熱あふれる3名の「チームRavage」である。大手自動車メーカーでシニアデザイナーとプロトタイプエンジニアの経歴をもつ2名と、もう1名はこの特注のアルピーヌA110のオーナーが加わった。彼はオーナー兼クライアントでもあり、しかもパートナーでもあるというわけだ。



製作に掛かるコストと時間を節約するために、なるべく低走行のアルピーヌA110をドナーカーとして購入。チームRavageの作業は、まず改造やチューニングへの投資がすべて目的に値するものかを精査することから開始することになる。たとえばリアウィングは100%カーボン製だが、フロントウィングはカーボン強化のグラスファイバー素材を採用。その判断理由は「フルカーボンは最終的に重量面での貢献が少なく、その割にはるかに高価になってしまうため」といった具合。同じ観点でインテリアの仕様、ドアやボンネット素材はオリジナルのままとした。また登録インスペクションを容易に取得するために、ブレーキやエアバッグなど、車の基本構造に関わるホモロゲーション要素はまったく変更されていない。

(C) Ravage

アルピーヌRavageは、ラリーモンスターマシンへのオマージュというわけではない。したがってターボ排圧をコントロールして、マフラーから火を噴くようなアンチラグシステムを装備することはない。ただしこのA110に搭載されるルノー・スポール製1.8リッター・ターボチャージャー付き4気筒エンジンにはライトチューンが施され、0-62mphは4.5秒、トップスピードも249km/hを叩き出すなど十分な性能を持ち合わせている。ハイスペック仕様のA110Sやコンペティション仕様のA110ラリーがこの数値に近い値を示していることを考えると、Ravage社のこのモデルは現実的なアップグレードであるといえるだろう。特筆は新たに採用した、ランチア・デルタS4のようなリアバンパーの下に配置されたストレートスルーのエグゾーストシステムだ。これはチタン製をチョイスすることも可能だという。

(C) Ravage



また足回りには、オリジナルのアルピーヌ製ラリーカーに装着されていたゴッティ・ホイールからインスピレーションを得た、特注の鍛造3ピース18インチ・ホイールが採用される。4つのタイヤハウス後方に取り付けられた赤いマッドフラップが、ダークブルーのペイントワークとのコントラストを上手に生み出している。





フロントを見てみると、イエローティントのヘッドライト、CIBIE社製の長距離用LEDスポットライトがバンパーの両側に取り付けられ、中央にはフランス国旗のトリコロールカラーの繊細なストライプが施されている。



もちろんこのようなエクステリアのカスタム化によってパフォーマンスが向上するわけではないが、フェンダーが拡張されたおかげで、よりトレッド幅が広く、グリップの良いミシュラン・カップ2タイヤ(フロント225、リア265)を装着することができ、安定性とトラクション伝動が向上している。





Ravage社は、このプロジェクトにはベース車を含めて10万ポンドの費用が掛かったことを明かしている。今回のA110プルミエールエディションをベースにしたこのモデル自体はオーナーのアイデアを形にしていったものであり、今のところワンオフとされている。しかしRavage社は、彼らの言う“ヤバいぐらいに”熱い志をもったオーナーからのオーダーがあれば、この「スタイル・スピード・敏捷性を備えたフレンチクーペ」を限定で生産し、フランスのビスポークの創造性を世界に発信していくことには大いに意欲的である。1台目は3年間のプロセスを経て実現した長期のプロジェクトであったが、「2台目は最大でも3カ月の工期があれば十分です」と彼らは述べている。なぜならすでにボディ金型は完成しているおり、1台目よりもはるかに合理的に創り上げることができるからだ。

興味があるかたは問い合わせてみてはいかがだろう。





Ravage
Instagram account : ravage_auto

文:オクタン日本版編集部 Words: Octane Japan Photography:Remi Dargegen X Ravage

オクタン日本版編集部

RECOMMENDEDおすすめの記事