日本でわずか11軒のルレ・エ・シャトー認定の宿へ、アストンマーティンDBXで行くラグジュアリーな旅

Ken TAKAYANAGI


ルレ・エ・シャトーが提唱する、真のヨーロピアン・ラグジュアリー


ホームページによると「ルレ・エ・シャトーの歴史は、パリとニースを結ぶ国道7号線上にある8つのオーベルジュのオーナーたちがパートナーシップを結び、1954年に創設した『レ・ルレ・ド・カンパーニュ(田舎の宿)』からスタート」し、1950年代にはスペイン、オランダ、ドイツ、オーストリア、スイスのホテルが加盟、国境を越えた最初のフランスのホテル組織となったようだ。1961年には、初のヨーロッパガイドブックも刊行、1974年に現在に続く「ルレ・エ・シャトー」が誕生している。 「パリに本部を置き、ホテルとレストランのオーナーが加盟し、自治運営する非営利団体の協会組織として毎年発展し続け、ルレ・エ・シャトーは食と旅の世界のベンチマークとなって」いる。「今では、世界62ヶ国、約580のホテルとレストランが加盟。新規加盟には厳格な審査と、ルレ・エ・シャトーの価値を共有できる、個性あるホテル・レストランのみが加盟を認められ」る狭き門だ。 「加盟するメンバーは、お客様ひとりひとりとの一期一会を大切にし、本物のリレーションシップを築くという情熱を共有しています」と定められている。

日本でルレ・エ・シャトーに加盟することが許された宿泊施設はまだ11軒のみ。今回向かったのはそんな11軒のひとつ、『扉温泉明神館』だ。

森の中にひっそりと佇む宿の様を象徴する控えめな看板とエントランス。

そこがもとは純和風旅館だったことを想像するのも難しい、すっきりとした佇まいのフロントロビー。

明神館には3種の温泉施設があり、こちらはまるで屋外の緑と一体化したかのようなインフィニティプールさながらの「立ち湯」。

歴史と芸術が息づく街、松本の名宿『扉温泉 明神館』


『扉温泉明神館』があるのは長野県松本市。東京からは中央自動車道道塩尻ICを経由しておよそ250km、名古屋からも中央自動車道で230km(大阪から400km弱)と、東西都市圏からのアクセスとしては最高の立地だろう。松本といえば、近年は松本城下に往時を忍ばせる蔵が立ち並ぶ中通りが整備され、街には清らかな美しい女鳥羽川が流れる風光明媚な都市だ。また中通の蔵がギャラリーとして使用できるようになっていて、若手陶芸家や木工芸家らの作品発表の場ともなっている。草間彌生の常設展でも知られる松本市立美術館(現在大幅なリニューアル工事に入っている)に代表されるように、歴史と芸術の街としてあらためて注目されつつある。

我々は東京からの出立となったが、高速道路に乗るや気づくのがこのDBXがGTカーに近い運転感覚をもたらしてくれるということ。まず、低く感じる着座位置(競合となるだろうSUVとの明確な数値比較ではない)が、高速道路では”高すぎる”視点よりも個人的にはとてもリラックスできた。また大半をGTモードで走行したが、アクセルに対するレスポンスがいい意味でマイルドで、緊張感を伴わないところが長距離移動には嬉しい。前方が開けた際に数回スポーツ、スポーツ・プラスモードを選択したが、その際ですら暴力的な加速ではなく、どこかジェントルなものを感じずにはいられなかった。これは結論にもなってしまうが、総じてこのDBXというSUVは、他メーカーとの比較からではなく、アストンマーティン・オーナーが求めるSUVの形を具現化させたモデルであることを強くアピールしている。事実、アストンマーティン所有者の75%以上がSUVを所有しているそうで、アストンマーティンとしてはビジネス的にも商品的にもアストンマーティンとしての”色”に強く拘ったのは当然のことだろう。

明神館のヴィラとしての位置づけとなる『Satoyama Villa DEN』に立ち寄り。古民家を補修、リノベートした一棟貸しの宿で、食事はやはりルレ・エ・シャトーにレストランとして登録される松本市内の『ヒカリヤ』から供される。

ともに22インチながら、フロントに285/40、リヤには325/35というサイズを異にする巨大なホイールを奢る。

最高出力550PS/6500rpm、最大トルク700N・m/2200-5000rpm を発生する4リッターV8ツインターボがトラス構造のアルミフレームに収まる。

DBXにとっての300kmはむしろ近距離ツーリングかもしれない


この”ジェントルだけれどもスポーツ”を感じるDBXは一方でインテリアもまさにその中庸を行くようで、レザーやウッドには凝った加工が施されながらも、全体としてはシックにまとまり、近年のSUVにありがちな押し出しの強さがないところも好感が持てる。ホールド性の高いシートはそのくせ3時間に渡る着座状態がまったく苦にならなかったし、ストレスらしいストレスをまるで感じなかったところも素晴らしい。

前進、後退、パーキングなど主だった操作はダッシュの中央のボタンセレクトとなる。案外使い易い印象だ。

12.3インチの液晶タイプを採用したメーターパネル。走行モードに合わせて表示デザインやカラーが変化する。

エアコンディショニング機能が付くフロントシートは機能性だけでなく、その設えの美しさがなんともラグジュアリー。

バーガンディの落ち着いた内装色。それにしてもこの畝るようなデザインと、レザー・ウッド・メタルの組み合わせが美しい。

文:前田陽一郎 写真:高柳 健

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