ミシェル&セバスチャン・ブラスのレストランにも注目!パリの新名所、安藤忠雄が手掛けた現代美術館

Tomonari SAKURAI

パリに新しい名所の誕生だ。現代美術館となる「Bourse de Commerce - Pinault Collection」”ブルス・ド・ コメルス-ピノー・コレクション”だ。パリの中心、シャトレーにある旧商品取引所跡を安藤忠雄の手による改装で蘇らせたもの。コレクションはフランスの実業家のフランソワ・ピノーの所蔵品を展示する。ピノー・コレクションとしてはヴェネチアにある二つの博物館につづいくもので、いずれも歴史的建造物を元にしている。本来は昨年の6月にオープン予定だったがCOVIDの影響で1年ほど遅れて5月22日にオープンとなる。オープンに先立ってこのパリの新名所を訪れる機会を得た。


この商品取引所は16世紀にメディチ家の宮殿として建てられたのが始まりで、その当時のものは塔のみが残っている。この塔はカトリーヌ・ド・メディシス(メディチのフランス語読み)の専属の占星術師が星を観測するための塔として建てられたもの。宮殿の解体後1767年に穀物取引所ができ、金属フレームのガラスのドームを持つ建物として1812年に完成。その後パリ万博時に改修して今の形になった。

この建物の原型が唯一残っているのはこの塔。カトリーヌ・ド・メディシスの専属占星術師が占いのための星を見るために16世紀に建てたものだ。

その内装を美術館として改装するプロジェクトを手掛けたのが安藤忠雄だ。中に入ると広がる広く高さのあるドームは圧巻。見上げるとその上には壁画が見られる。そこには5つの世界の地域の貿易の様子が描かれたフレスコ画が広がっている。それぞれ別の画家による作品で、1886年から1889年に制作されたその作品たちは今も残され、活かされているのだ。

鉄のフレームを持つガラスドームから自然光が入り込む。天候や季節によって表情を変えるのも面白い。その下には19世紀に描かれたフレスコ画が残されている。商品取引所だったため世界の貿易に関するテーマで描かれている。

フレスコ画のアジアのパートでは日本らしき所も。アジアの場面はジョルジュ・クレランによる。

フランスでは普通のスーパーでもスズメやハトが侵入してくることはめずらしくない。が、ここに集まったハトたちはもちろん作品のひとつである。

今回、ドームの中央で展示されているインスタレーションはウルス・フィッシャーによるもの。中央の像はまるでこのブルス・ド・ コメルスに最初からあったものかと見間違えるほどマッチしているが、そうではなく彼による作品だ。オープニングの展示として今年いっぱい見ることができる。安藤忠雄の作品の特徴であるコンクリートの打ちっぱなしに囲まれたこの空間に彫像と共に置かれたイスも含めたインスタレーションとなっている。

巨大なこの空間に息を呑む。中央の像、並べられたイスはウルス・フィッシャーのインスタレーション。

ウルス・フィッシャーの作品。ロウによる実物大の像。設置後ここで、ロウに火を付けて頭部が溶けて完成としている。

壁に沿った階段を上ると、2階と3階に展示スペースがある。3階から見ていこう。現在展示されているのは、ルドルフ・スティンゲルに始まりトーマス・シュッテ、マルレーネ・デュマスなどの作品。2階に降りると写真を使った作家の作品があり、学生時代に僕が夢中になったシンディー・シャーマンなども展示されている。

ベルトラン・ラヴィエの作品。プジョー103。チャンバーが改造されているモデルというのが気になる。


マルレーネ・デュマスの作品が並ぶ。これらの部屋はモジュラー式で展示に合わせてレイアウトの変更が可能。今後の展示も楽しみである。マルレーネ・デュマスの作品は年内12月31日まで。

僕が学生時代に夢中になった作家の一人シンディー・シャーマンの作品もオープニングで展示される。

1階の特別展示にはデビッド・ハモンズが展示されている。そこを抜けて出口に向かうとミュージアムショップがある。ここのオリジナルグッズもなかなかよくできている。日本と違って、ここでしか買えない「限定モノ」などが少ないフランスにありながら、ここにはちょっとしたグッズがおみやげとして購入可能なうれしい品揃えになっている。

デビット・ハモンズの“Orange Is the New Black”

これもハモンズの作品。

規模はそれほど大きくないが、ミュージアムショップが併設されている。

オリジナルグッズはワクワクさせられる。

このショップの入り口に、見落としてしまいそうな作品があった。壁に穴を開けたネズミさんである。ライアン・ガンダーの作品だ。でも、パリにある美術館や博物館にはこの手の手法は多く見られる。美術館などをよく見て歩くと隅っこの方に穴の板壁にネズミが描かれたりしているので、現地ではそんなところを探しながら廻るのも良いかもしれない。

ミュージアムショップの入り口に、見逃してしまいそうな作品。

ここでもう一つ忘れてはいけないのは最上階のレストラン。日本でも展開するミシュランの星を蹴った”ミシェル&セバスチャン・ブラス”のレストランがあるのだ。内側の席ならドームを眺めながら、外側の席ならサントゥスタッシュ教会を眺めながらなど贅沢な食事が楽しめる。もちろんティータイムにスィーツを楽しむのもいい。

最上階にはミシェル&セバスチャン・ブラスのレストランが。眺めも最高である。

ミシェル&セバスチャン・ブラスオリジナルのチョコ。

料理だけではない。食器やナプキンなどもここのためにオリジナルでデザインされている。ミシェル&セバスチャン・ブラスのナイフは有名だ。

パリは2024年のオリンピックに向けてこのような施設の改修や新規オープンが今後目白押しとなる。今、東京オリンピックの開催で揺れている現状から手放しで見ていられないのが現状だが、この厳しい状況の中で少しでも明るい話題がここパリから発信できるのは喜ばしい事である。フランスの感染者は未だ日に数万人から下がることはないが、いよいよ7カ月ぶりに博物館や、一般商店、カフェにレストランが制限付きだがオープンする。ふたたび感染者数の上昇が不安ではあるものの、前に進んでいく状況は夏に向けて人々の気持ちをさらに明るくしていくこととなるだろう。

窓の外を眺めるとシャトレ-レ・アル駅を挟んでポンピドゥー美術館が見える。

写真・文:櫻井朋成 Photography and Words: Tomonari SAKURAI

写真・文:櫻井朋成Photography and Words: Tomonari SAKURAI

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