これまでに見たことのないロールス・ロイス|コーチビルドによる「ボート・テイル」

ROLLS-ROYCE

ロールス・ロイスが特別な顧客のために、その趣味や嗜好に応じた車両を創る「ビスポーク」。卓越した高級品製造の世界的中心地であるロールス・ロイスの本拠に集められた設計者、技術者、職人たちは、顧客のライフスタイルを解釈するための、独自の高度なコミュニケーション術を持っている。その結果、従来持つ能力や受容量の範囲をはるかに超えた「コーチビルド」という領域にまで踏み込んだ、これまで以上に野心的な依頼を受けるようになった。

ロールス・ロイスはこのような非凡なオーナーの依頼に応えるため、その歴史的ルーツのひとつに立ち戻り、「ロールス・ロイス・コーチビルド」という独立した部門を立ち上げることにした。「ロールス・ロイス・コーチビルド」は、現代のパトロネージの真の姿だ。「コーチビルド」とは、ロールス・ロイスのビスポークをより高度に精製された表現で実現することであり、既存の制約を超えたいと考える人のためのものである。

これに応えるため、ロールス・ロイスは2つの世界について問い直し、深く理解する必要がある。その1つ目は、顧客自身の生活の場、祝福のされ方、また何が周りにあり、誰と一緒なのか、といった依頼者の親しんだ個人的な背景事情や、これら特別な人々の人生における最高の瞬間を定義した経験。2つ目は、コーチビルドされた車が存在する、より広い文化的背景だ。この場合、ブランドとして、依頼者の文化や建築運動、衣服の仕立て、色彩の好み、芸術的嗜好、さらには客人をもてなす際の微妙な心配りの違いまでも探り出すことが必要である。

コーチビルド・ムーブメントの幕開け


2017年に発表された「ロールス・ロイス スウェプテイル」が現代のコーチビルド・ムーブメントの幕開けとなった。史上最高のインターコンチネンタル・ツアラーの一台として瞬く間に評判となったこの作品は、コーチビルドの可能性を大幅に拡大した。依頼主と共同でロールス・ロイスの遺産(レガシー)が定義づけられることを確認することができたのだ。

ロールス・ロイス スウェプテイル

スウェプテイルは新たな可能性のベンチマークを設定し、コレクターやアートの後援者、現在の象徴的な建物を依頼する人物といった特別な立場の人たちは、その魅力に気付く。こうした人たちは、自分たちにもユニークな仕事を、例えばより深みのあるものや、より高度なキュレーション感覚を提供することができないかと、ロールス・ロイスに持ち掛けてきたのだという。ロールス・ロイスはこれを承諾し、そして、ホーム・オブ・ロールス・ロイスであるグッドウッドに常設の現代的コーチビルド部門が誕生したのである。

このグループの中で、3人のパトロン候補が、現代の船舶デザインに造詣が深いことが明らかになった。このクライアント主導による創造的表現は、ロールス・ロイスのシャシーにコーチビルダーの手で帆船の船体の造形を移植する「ボート・テール・タイポロジー(類型論)」を現代の手法で表現したいという、ロールス・ロイスのデザイン・チームが長年抱き続けてきた野望とも一致。このデザインの方向性を提案すると、3人のパトロンは異口同音に賛成し、この3人からは「いままで見たことのないものを作って欲しい」という共通のリクエストが提示された。

関係するクライアントとの協議により、3台の車は共通のボディを持ちながら、それぞれが独立しており、極めて個性的で、ロールス・ロイスとそれぞれのオーナーのビジョンや能力、野心の重なり合いが反映された作品になるという合意がなされた。

「ロールス・ロイス ボート・テイル」は、このようにして考案された。

オクタン日本版編集部

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