これまでに見たことのないロールス・ロイス|コーチビルドによる「ボート・テイル」

ROLLS-ROYCE



意図的に「わがままを通す」


今回発表されたロールス・ロイス初の「ボート・テイル」は、「並外れた想い」「並外れたコンセプト」「並外れた品々」の集大成であり、依頼者にとっての完璧な体験を形作るクライマックスだ。世界的に成功し、ロールス・ロイスの特注プロセスにも深い理解をもつ依頼者は、まさに「目利き」そのもの。キュレーションしてきたラグジュアリー作品は芸術の域に達している。その提案は、意図的にわがままを通すものだった。依頼者の願いは、努力し、成功を収め、祝福を必要とする人生への贈り物を創り出すことであり、「ロールス・ロイス ボート・テイル」は、家族と一緒に楽しむことができる、歓びに満ちた車でなければならないのだ。

依頼者は1932年ロールス・ロイス ボート・テイルをコレクションとして所有しており、それゆえボート・テイルのフォルムに魅了されたのだ。このクラシックカーを、あらたなボート・テイルの完成に間に合うよう愛情をこめてレストアしてきたという。

このボート・テイルは全長約5.8m。正面から見ると、新たに手を加えられた、ロールス・ロイスの象徴でもあるパンテオン・グリルとライトを中心に据えたものとなっている。フロント・エンドの水平方向を強調したデザインと、深い位置に配されたデイタイム・ランニング・ライトによって、にらみを利かせるようなボート・テイルのブロウラインをかたちづくりながら、ロールス・ロイスの伝統的デザインを思わせるクラシカルな丸型ヘッドランプを縁取っている。



横顔を見れば、船舶を連想させるものが多くあることがわかるだろう。左右に回り込んだウインドスクリーンはモーター・ボートのバイザーを連想させ、緩やかに後方へ傾斜するAピラー、広大ですっきりしたフロントのボリューム、そして後方に向けて細くなるリヤ・エンドは舳先を上げて海上を疾駆するモーター・ボートの姿を思わせる。ボディ側面下部の徐々にえぐられていくような造形は、ロールス・ロイスの代名詞ともいえる伝統的なランニング・ボードのデザインをもとに考案されたものだ。



真後ろから見ると、ボディは徐々に緩やかに薄くなっている。ロールス・ロイスの伝統的なデザインである縦型のリヤ・ライトではなく、深い位置に配置された横長のリヤ・ライトが水平方向を強調していることがおわかりいただけるだろうか。





実際、船舶に関連する要素をよりはっきりと認識できるのは車両後部だ。後甲板を意味する「アフト・デッキ」は、歴史的なボート・テイルの木製リヤ・デッキを現代風にアレンジしたもので、帯状の木の板を組み合わせたもの。ここにはロールス・ロイスのエンジニアリングの粋を集めた「カレイドレーニョ・ベニア」が使われており、一般的にはインテリアに使うグレーとブラックの素材を、美観を損なうことなくエクステリアにも使用できるよう特別な処理が施されている。



ボート・テイルの型破りなフィックスド・キャノピー・ルーフには、建築の影響がはっきりと見受けられる。彫刻的なフォルムに加えて、弧を描くルーフラインはリヤへ向かうにつれて華奢な構造体へとつながり、フライング・バットレス(飛梁)を彷彿とさせる。もちろん、ルーフを外しているときに悪天候に見舞われた場合、停まって一時的に雨宿りをするためのトノーも収納されている。

「ロールス・ロイス ボート・テイル」のエクステリアは、海洋を暗示する複合的な色調の青色だ。ロールス・ロイスで初めての手塗りのグラデーション・ボンネットは、進歩的でありながら堅苦しくない美しさと、前方から見たときの全体にがっしりとしたボリューム感を特徴としている。

インテリアのレザーはボンネットの色を反映しており、フロント・シートはこのボート・テイルのドライバーを重視する姿勢を意識させる意味で濃いブルーを、リヤ・シートは薄いブルーを採用。細部のステッチやパイピングは車載時計の針に着想を得た、より強いブルーを使用している。ボディの下部には、航跡の波を正確に模した55度の角度で鮮やかなブリリアント・ブルーが織り込まれたテクニカル・ファイバーが配されている。

現代的な美しさを表現するため、フェイシアは意図的にシンプルにデザインされている。このボート・テイルのために特別にオーダーしたボヴェ(BOVET 1822)の時計やペンのコレクションに依頼者の思い入れを見ることができる。特に大事にしているモンブランのペンは、ボート・テイルのグローブ・ボックス内に特別に設えたアルミニウムとレザーを使った手作りのケースに収められている。

インストルメント・パネルの文字盤には、高級宝飾品や高級時計でよく見られる「ギョーシェ」と呼ぶ装飾技法が採り入れられた。また、エレガントな細身のリムを持つツートン・ステアリング・ホイールには、ブルーのテーマ・カラーを採用している。

オクタン日本版編集部

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