これまでに見たことのないロールス・ロイス|コーチビルドによる「ボート・テイル」

ROLLS-ROYCE


究極のおもてなし


「この車はおもてなしの舞台となり、それにふさわしいものを提供しなくてはならない」というのが依頼者の要望だった。これに応えてリヤ・デッキには、従来の自動車の世界には存在しなかった極めて野心的なコンセプトが、目立たぬように搭載されている。



ボタンを押すと、このデッキは蝶の羽のように大きく開き、手の込んだ、広々としたおもてなしのホスティング・スイートが現れるのだ。このホスティング・スイートにはサプライズがふんだんに盛り込まれており、自動車の概念そのものを覆す造作が訪れる人々に驚きと歓びをもたらす。



このホスティング・スイートのリッドが開くと、可動する仕掛けの「宝箱」が、正確に15度の角度でホストに向けて差し出される。この箱には、ロールス・ロイスのアルフレスコ・ダイニング(野外の正餐)を体験するのに最適な備品が用意されている。片側は食前酒用、もう片側は料理用で、「Boat Tail」と刻印されたパリのクリストフル社製カトラリーが収まっているのだ。さらに、このために開発された二重の冷蔵庫には、依頼者お気に入りのヴィンテージ・シャンパン「アルマン・ド・ブリニャック(Armand de Brignac)」が収められている。





現代のロールス・ロイスでは、悪天候を想定してロールス・ロイス・アンブレラをドアに収納するのが定番のデザイン・エレメントになっているが、このボート・テイルでは、楽しい、ひねりの効いた仕掛けとして、日除けのパラソルがリヤ・センターラインの下に収納されている。



さらに、カクテル・テーブルホスティング・スイートの両側に開き、その下に収納された極めて現代的なミニマリストのスツール2脚が現れる。ロールス・ロイスがデザインし、イタリアの家具メーカーであるプロメモリア社が製作したこの細身の連結式スツールは、車両のエクステリアに使用しているのと同じテクニカル・ファイバーで作られている。



BOVET 1822とのコラボレーション


時計についても依頼者のリクエストにより、ボヴェ(BOVET 1822)社の世界レベルの職人たちが、ロールス・ロイスのその道の達人たちと手を携えて作業をおこなった。機械に思い入れがあり、スイスのボヴェ社とロールス・ロイスの製品の熱心なコレクターである依頼者は、自分たちのボート・テイルのために極めて精巧で画期的な時計を作ることを期待したのだ。ボヴェ社とロールス・ロイスが、ロールス・ロイスの象徴であるダッシュボード・クロックを再構築した結果、どちらの業界でも実現したことのない成果を得ることができた。紳士用と淑女用の2つの精巧なリバーシブル時計は、腕に着けることも、車載時計としてボート・テイルのフェイシア中央にセットすることもできるようにデザインされているのだ。



表も裏も両面が使えるこの時計は、ロールス・ロイスとボヴェ社が3年の歳月をかけて共同開発したもので、今日までで最も複雑なアマデオ・コンバーチブル・システムをリマスタリングしたもの。その結果、ボヴェの技術力が見事に反映され、ビスポークのトゥールビヨン・タイムピースが自動車に搭載されることになった。

困難な課題を克服


「ロールス・ロイス ボート・テイル」の開発では、依頼者からの並々ならぬ要望に応えるため、極めて困難な技術的課題を克服しなければならなかった。実際のところ、この車のために1813個ものまったく新しい部品が作成されたのだという。このプロジェクトの特徴は、時間、根気、献身、そして情熱だ。生産を開始する以前の予備設計の段階でさえ、延べ20年以上の歳月が費やされている。

また、ボート・テイルは認証を取得した公道走行可能な自動車であり、運転することを前提としているため、他のロールス・ロイスと同様に、高速走行でリヤ・ホスティング・スイート内の物品が十分に固定されているかどうか、また走行中は静粛かどうかを分析するなど、厳格な動的テストを受けてから初めて正式に譲渡された。

ロールス・ロイス・モーター・カーズ最高経営責任者のトルステン・ミュラー・エトヴェシュは、次のように締めくくった。「ボート・テイルは、共同作業、野心、努力、そして時間の集大成です。この車は、成功を祝福する永続的な遺産を作りたいという願いから生まれました。ロールス・ロイス ボート・テイルは、その驚くべき実現性によって、当ブランドの歴史と現代のラグジュアリー界を見渡した中で、極めて重要な瞬間を刻んでいます」

オクタン日本版編集部

無料メールマガジン登録   人気の記事や編集部おすすめ記事を配信         
登録することで、会員規約に同意したものとみなされます。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事