車好きなら楽しめること請け合い|印刷博物館はメカの宝庫だ!

Tomonari SAKURAI

オクタン日本版は雑誌だ。インターネットが広がる中、紙媒体は新しい時代のちょうどその過渡期にいる。紙から電子への時代の流れだ。歴史を見ていくと書籍というのは15世紀まで手書きで、一冊一冊手書きで写されていった。いわゆる写本だ。この頃は本は貴重だし、大量生産ができないので個人が読むものではなく、誰かがその本を読み聞かせるというのがその使い方だった。15世紀にドイルでグーテンベルグ、活版印刷機が出来ると本は大量生産され個人のものになっていく。印刷機は18世紀後半になって紙送りも自動化されていく。そして19世紀、産業革命へ…

印刷の歴史を話したところで興味も湧いてこないだろうが、この頃の印刷機は何とも美しいのだ。手動から、蒸気、電気と動力を使っていきそれを歯車で動かしていく。その印刷機を見れば車好きならば絶対に興味を示すことだろう。そんな印刷機がずらりと並んだ博物館”ATELIER-MUSÉE DE L’IMPRIMERIE”(印刷のアトリエ&博物館)を訪れた。ここでもお伝えした昨年の美術本の展示会”サロン・アンターナショナル・ドゥ・リーヴル・レア”でブースを構えていた。それを見たときからもう行きたくてうずうずしていた。しかし、外出禁止令で博物館などは一切閉鎖が7カ月つづいたのだった。

ATELIER-MUSÉE DE L’IMPRIMERIE。略してami。amiは友達の意味もあるし、Citroen AMI6を想起する。

パリから南にちょうど100kmほど走ったところにそれはある。高速6号線をおりてさらに20kmほど農場の中をひた走る。新緑がまぶしく気持ちの良いツーリング。ようやく街らしきところが見えてきた。それがマルゼルブという街だ。街というよりは工場地帯といった一角にその博物館が見えてきた。

ここに入ってまず聞いたのは「なぜこんな所に!?」 それはこの街は昔から製紙工場や印刷工場がある街だからである。フランスの大手印刷会社のMAURYグループの社長夫妻、シャンタル夫人とジャン=ポール・マウリー社長は印刷をビジネスとして成功させた。二人の間に子どもがいないため、後世にその印刷の歴史や技術を伝えることにしようとこの博物館を2018年にオープンさせたのだ。

ミュージアムに入るとすぐに印刷の革命を起こしたグーテンベルクのレプリカが展示してある。世紀のレプリカでもちろん使用可能。グーテンベルグは木製のためプレスする力が弱く2回プレスしなければいけなかった。

もちろんレプリカであるが印刷の革命的発明のグーテンベルクのレプリカに始まり現代の印刷技術まで網羅する。展示されている機械のほとんどが可動する。それを実際に動かして見せたり、体験してもらう。生きた博物館であり、アトリエもありアーティストがリトグラフや、活版印刷などで依頼したり一緒に作品を作ったりするスペースもある。さらに拡大してイベント用のステージや展示スペースもできた。現在は懐かしのレコード展ということで懐かしいプレイヤーやレコードジャケットなどが展示されていた。

ワークショップで版画のプリントをするアーティスト。彼女の作品は日本の「水からの伝言」からの発想を得た。”水をイメージしたの。とても日本的でしょ!?”

その作品。ヨーロッパの中世は2D。だから作品は平面的なもので作るという。これが日本的に見えるかどうかは分からないが何種類も刷られていた。

活版印刷の体験コーナーにあったシトロエンのイベントのチラシ。

イベントスペースの入り口には4万冊の展覧会などの図録が並べられている。固定されていないのでもちろん読むこともできる。

個人的に興味があるのはリトグラフや、活版印刷そしてフランスの装丁ルリユールについて。しかし館内を案内されていくとそこに並んだ印刷機は車のエンジンにも見えてくる。どこかスチームパンクなところもあり機械好きにはたまらないのだ。その機械がいつ誰が作ったかというよりはそのメカメカしさを是非写真で堪能していただきたい。細かいメカニズムや歴史についてはまた別の機会に。

活版印刷機といえばこのハイデルベルグ。動く様は機関車に近いモノがある。

これが作られた1960年はこのハイデルベルグ誕生から110年を祝ったプレートがつく。今年で171年になる。このマシンも61歳。

各部の調整レバーもゾクゾクする。表記はフランス語になっている。

壁際に陳列された小型の印刷機の中央にはスクリーンが。ここでは印刷所のシーンの映画が紹介されている。虎屋の裏のタコ社長の工場が出てこないのが残念!

電源の切り替えレバー。

フランス、パリにあった印刷機メーカーのもの。

フラットエンジンにも見える印刷機。

シリンダーヘッド、バルブ周りにも見える。

剥き出しの歯車。

これもフランス製。ドイツ、イギリスフランス、スェーデン、チェコ製がほとんどだったらしい。

大型の活版印刷機。

18世紀の紙を手でセットする印刷機。装飾など印刷機以上の存在感がある。

第二次大戦中のレジスタンスが隠れ家で使用していた印刷機やタイプライター。つくの上のタイプライターと印刷機が何処にでも持ち運べる当時のポータブルだったのだ。

そうだ、プリントの話をしたのでついでと言っては何だが僕の写真展がまた開催されている。5月18日〜7月4日まで。東京小伝馬町のRoonee247 Fine Artsさんにて。今回は小さな展示だけどコロナの終息を願って明るいパリの夏空をテーマに展示している。ご興味のある方は是非足を運んでいただければうれしい限りである。

ATELIER-MUSÉE DE L’IMPRIMERIE
http://a-mi.fr

私事で恐縮です。現在写真展を開催中。お待ちしております!詳しくはこちらで。

写真・文:櫻井朋成 Photography and words: Tomonari SAKURAI

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