あなたはフォード派?それともルノー派?|80年代にココロときめいたホットハッチの名車選

PAUL HARMER

1980年代、多くの自動車メーカーが世界一のホットハッチを世に送り出そうと奮闘していた。フォードも力を入れていたが、VWとプジョーにとっての最大のライバルは間違いなくルノーであった…。

プジョーとフォルクスワーゲンが苦戦する中、ルノーは次々にヒットさせた


ルノー5GTターボは、1980年代半ばのホットハッチ界に大きな衝撃を与えた。第一世代のR5は、“アルピーヌ”・ターボエンジン(英国では“ゴルディーニ”の名を冠した)が搭載されていたが、GTターボのベースとなったのは、横置きエンジンと優れたハンドリング特性を兼ね備えた、第二世代のR5だった。その115bhp(後の120bhp)の1.4リッターのプッシュロッドエンジンは、シンプルで頑丈であり、ターボチャージャーとの相性もよく、ハンドリングも鋭かった。もっとも、内装はプラスチック製品が多かったが…。このルノー5 GT ターボは今となっては、非常にめずらしく、人気も高い。
ルノー5GTターボ

1990年代、プジョーは94年に205GTIの生産を終えると、代わりに大型の306GTI-6とそのラリー仕様車、そして小型の106GTI、そのシャシーやエンジンを共有するシトロエン サクソVTSなどを生産した。306シリーズは非常に楽しい車ではあったものの、205 1.9をベースにして造られた、309 GTIの代替品であった。プジョーはその他にも、低コストのクラブラリーカーとして、よく回る1.3リッターの小さなエンジンを搭載した106 ラリーを世に送り出した。

1990年代後半にプジョーは206 GTIを考案し、後に207 GTIも製造されたが、どちらも205のように、“走りっぷり”を味わう車ではなかった。フォルクスワーゲンも同様に、エキサイティングさに欠けたゴルフのMk.3とMk.4にGTIを生産したが、評判はさほどよくなかった しかし、2004年に発表したゴルフGTI Mk.5は違った。このエキサイティングなホットハッチのDNAは、今日のMk.7とゴルフRにも継承されてきている。プジョーの208 GTIもドライビング面では劣っていないが、デザイン性はフォルクスワーゲンの方が優れている。
フォルクスワーゲン ゴルフGTI

この2台以降、ルノーのクリオ16Vとそれを基盤とし、大きなエンジンを搭載したパワフルなクリオ・ウィリアムズなどがハッチバック界をリードしていった。

それ以来、ルノーは常にトップクラスのホットハッチを輩出してきた。ルノー・スポーツはクリオやメガーヌなど今もエッジが効き、ドライバーにフォーカスした車を開発し、素晴らしい発展を遂げている。

1980年代フォードの失敗と成功


最初のエスコートXR3、およびフィエスタ・スーパースポーツのデザインは素晴らしかった。グラフィック、ホイール、ディテールのすべてにおいてスポーティーが感じられたからだ。他社のホットハッチほどのドライビング性能はなかったにしろ、多くのドライバーにとっては、十分に満足できるレベルであった。
フォード エスコート

しかし、燃料噴射とサスペンションのファインチューニングによりエスコートは改善されたとはいえ、RSターボを含め、批評家にとって魅力的といえるものではなかった。そして、Mk.4エスコートについてはさらに評判が悪かった(ただし、シェラRSコスワースを除く)。フィエスタ・スーパースポーツの後はXR2になり、フォードは苦戦を強いられていた。1989年、XR2iはフィエスタシリーズの中では最上位グレードであったが、205シリーズやR5シリーズに比べると劣っていた。

『Car』誌は、「もうひとつの醜いが速いフォードの誕生」という見出しで、XR2iを痛烈に批判した。フィエスタRSターボは改良されたが、同じ価格帯の車と比べると、魅力的ではなかった。1992年にフォードはこれらの批判を受けて大きく動いた。予算だけに囚われるのではなく、エンジニアリングを優先したのであった。こうして誕生したのが、当時のホットハッチでは最高傑作といえるモンデオだ。

スポーツモデルの中で、特に優れていたのがプーマ・レーシング、スポーツ Ka、STモデル、そして2002年のフォーカスRSである。それ以降、フォードはハッチバックにおいて、成功を収め続けている。
フォード フォーカスRS

GMはオペル/ヴォクスホールでハンドリング性能を研鑽した


初代アストラGTEには、機構面でゴルフGTIに似ている部分が多くあった。しかし、GM系のホットハッチは、ハンドリング性能が低く、ステアリングレスポンスが遅く、ヒール・アンド・トーが容易ではなかった。そのため、オペルのアストラGTEやノヴァGTE、コルサGSiはドライビングが楽しくなかった。特に、コーナリングではスロットルでのコントロールができなかったのである。このような車は1990年代まで製造されたが、ときどきではあるが、パワフルなエンジンを積んだ面白い車もあった。16バルブ・エンジンを搭載した第二世代のアストラGTEは、実に楽しい車であった。後に、電子制御システムの誕生により、シャシーの安定性が向上し、今までにないアグレッシブなヴォクスホール/オペルが生まれたのであった。
オペル カデットGSi

イタリア勢の成功


ランチア デルタ インテグラーレは、ホットハッチのジャンルを超越するほど栄光に満ちた車であった。初期のHFターボとそのHF 4WDにも着目すべきである。特に後者は、リアウィングがない以外は、インテグラーレに非常によく似ていた。これらのモデルは、ともにめずらしく、素晴らしかったのである。フィアットのリトモ・アバルト130TCはブレーキやドライビング・ポジションなどの欠点はあったが、ランチアと同様に、速くて強烈な車だった。速いが、造りが“ずさんな”ウーノ・ターボよりも優れていた。
ランチア デルタ インテグラーレ

アルファロメオから派生したアルファスッドは、他のホットハッチの“必須アイテム”であったリアウィングを備えたのは最後期であったが、真のホットハッチと呼べる存在だ。特に初期のものは、ハンドリング性能がライバルよりも優れていた。しかし、後期のパワフルなエンジンを搭載したモデルになると、そのハンドリング性能も衰えをみせ、ゴルフGTIが人気を取り戻した。
アルファスッド

そのほかの魅力的なモデル


現在では忘れられてしまったが、非常に楽しく、優れたホットハッチもまだまだたくさんある。シトロエンヴィザGTI(205 GTIと共通のエンジン)や、BX GTI 16V(160bhpエンジンを205に換装した例が多々ある)などが挙げられる。日本車では、日産サニーGTIやトヨタ カローラGTi-16(および後輪駆動のAE86)、高回転を得意とする“VTEC”エンジンを搭載したホンダ シビックなどがある。1990年からわずか2年間だけ製造された、三菱コルト1800 16V GTiは痛快で、現在ではとてもめずらしい。
シトロエンヴィザGTI

ホンダ シビック タイプR

そして最後に、英国車には、ティックフォード社がMGマエストロ2.0EFiをベースに手掛けたMGマエストロ・ターボがある。0-100km/hを6.7秒でこなし、長いあいだ最も速い加速力を誇るホットハッチの座に君臨していた。


編集翻訳:オクタン日本版編集部 Words: John Simister

オクタン日本版編集部

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