日本車も大人気!|フランスGARAC国立自動車学校の「学園祭」を探訪してみた

Tomonari SAKURAI

パリの北西に位置し、セーヌ川に面した街アルジャントゥイユ。この町の名を聞くと現在は治安が悪く、できれば行きたくないと思う街のひとつ。でも今日はそのことを忘れて出かけてみた。それはここにあるGARAC国立自動車学校の企画するEXPOが開かれるというからだ。キャンパス内に300台ほどの車やバイクが参加するというもの。この日は土曜日。学校ということもあって半日のみのイベント、3時間EXPOなるものだ。以前に紹介したコンサヴァトワールは本当に修理工場のような出で立ちで、まさに職業訓練校のようなたたずまいだったが、ここは入場する門からしてキャンパスである。その校内に所狭しと車が並べられた。

45年を記念して建てられた碑。フランス最古の国立自動車学校の証。

メインステージとなっている所に陣取っていたのはフランスローターリークラブというのが興味深い。

ルノーのブース前のブガッティType50。

このGARACはフランスで最初に作られた車の学校だ。第二次大戦後、ようやくヨーロッパも、フランスも復興が始まると、これからは車の時代が来ることを予見しこの学校を設立したのが始まりだ。開校は1948年。現在では車、オートバイ、バスやトラックなど大型運搬車に対応。車両のメカニックは当然ながらエレクトロニクス、車体つまりボディやシャシー、それに塗装などを習得できる。コースは細分化されていて、面白いのは「旧車科」があること。寄宿舎なども完備した国立の学校ならではの設備を誇る。

先週のモンレリにも来ていたシトロエン・ヒストリカルからのサポートカー。シトロエンZX RALLYE RAIDとプジョー203 U8を展示。

シトロエンM35も展示。プロトタイプ、シャーシナンバー119。それでもナンバー付きで公道を走れる。

シトロエンM35のエンジンルーム。

展示された車両はパートナーなどの車メーカーが持ち込んだものもあるが、コレクターや、愛好家、そしてもちろん学生の自慢の愛車もある。学生達が自慢の愛車を来場者に細かく説明したり、コレクターやプロが持ち込んだレストアされたりチューニングされた車両を学生達が興味深そうにそれを見入ったりしている。また学生の両親が来たり、会場はさながら文化祭、学園祭のようなお祭りだ。

オーナーのカスタム自慢の始まりだ。

シトロエンのロータリーエンジンはNSUとの共同開発、なのでNSUの車両があるのはおかしくない。そんな中に日本車、マツダのRX7も展示されている。シトロエンとは違いロータリーエンジンで最も成功したマツダの車両を展示する

会場の車両を見て回ると日本車もかなり増えてきている。フランスは日本以外で一番アニメや漫画の消費の多い国でもある。外出禁止令が緩和されて半年ぶりに映画館が再開するとダントツで『鬼滅の刃』をはじめとする3本の日本アニメが席巻する勢い。そんなこともあり彼らが日本車に興味を持つのは不思議ではない。

フランスでは今まで見かけなかった光景。

全塗装されたシビック。こういった、いわゆるヤングタイマーが人気。

前を歩く学生の着ているブルゾンには「GARAC CLASSIC」と描かれており、どうやら旧車課の学生のようだ。その一人の首にぶら下がるカメラはフィルムカメラ。彼らのモチベーションが高いのがひしひしと伝わってくる。

校舎のピロティがメインステージ。学園祭、文化祭といった感じだ。

カスタムされたBMW F900とS1000XR。流行のカフェレーサーってのがないのが寂しい。後にはRD350年なんていうものも。

校内に展示されたひとつは消防車。大型車両の整備を学び資格を取得すれば、消防局の車両整備という将来があることを示している。消防局も人員確保のためのアプローチだ。ちなみにここに来ていたのはパリの消防隊。消防隊は通常は消防局に属するが、このパリの消防隊は首都の防災ということから防衛省の管轄。つまり軍隊と同じ。なのでライフルを所持しているし訓練もする。7月14日の革命記念日のシャンゼリゼの軍事パレードにパリ消防隊が参列しているのはそのせいなのだ。

パリ消防隊が持ち込んだ消防車。こういった車両の整備という道もあるという展示だ。

といった具合でまだ夜間外出禁止令が出ているがこういったイベントも再開されたことに素直に喜ぼう。そして、フランスの車文化の奥深さや根強さを感じさせられたのだった。

写真・文:櫻井朋成 Photography and Words: Tomonari SAKURAI

写真・文:櫻井朋成 Photography and Words: Tomonari SAKURAI

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