こんな機会はめったにない!1960年代のアストンマーティンDBを乗り比べてみた

Octane UK


DB4の派生モデル


その後、アストンマーティンは新しいバージョンが出るたびに、パワーや快適性は向上していったものの、重くて純粋さが欠けたモデルを生産していた。1959年のDB4 GT、そしてその翌年に発表されたザガートバージョン、DB4のシャシーを改造して造られた61年発表の4ドア・サルーン、ラゴンダ・ラピードがその代表例だろう。レースでも同様で、1959年に世界スポーツカー選手権で優勝した栄光を持つアストンマーティンだったが、その後は黒星が続いていた。

DB4がシリーズVに発展したころには、ホイールベースが延長され、ヘッドランプも新しくなり、実質的にはDB5となっていた。1963年の中頃に発売されたが、不評であったため、ハロルド・ラドフォードが改造した12台のシューティング・ブレークと、123台のドロップヘッド・クーペを含んでも、わずか1021台のみが生産されたにすぎない。DB5は、スーパーレッジェーラ構造を採用した最後のアストンマーティンであり、シリーズIVのDB4よりもトルクが40lb−ft向上した一方で、車重は154kgも増加してしまった。

DB6


1965年末には、DBシリーズの中で最も実用的なDB6が発表された。プレス整形のスチールボディを採用したこのモデルは、DB5と同じ重量でありながら、ボディは4インチ延長され、リアエンドを切り落としたカムテールを採用し、高速走行時の安定性が高められた。1970年末までの5年間で1782台のDB6が生産され、当時のアストンマーティンの人気モデルとなった。Mk.Iと燃料噴射装置を採用したMk.IIの2種類があり、215台のヴォランテ・ドロップヘッド・クーペ、ハロルド・ラドフォード作のシューティングブレーク、そしてDB4やDB5と同様に高性能のヴァンテージ・バージョンが生産された。

DB4のパフォーマンス、DB5の高騰ぶり


特に、3気筒の4リッター・エンジンと有効なオイルクーラーを装備したDB4は、乗り心地がいいことで知られている。また、DB4は他のDBシリーズより軽量で、レスポンスに優れ、スポーツカーらしいモデルだ。1961年に『The Motor』誌がおこなったテストでは、ダンロップRS5タイヤを履いて、最高出力240bhp、4速(ODなし)、ツインキャブレターを備えて、車重搭載1397kgのDB4が、最高速度139.3mph、0-60mphが9.3秒のパフォーマンスを発揮し、燃費は平均で16.5mpgであった。 アストンマーティンDB4は、パフォーマンス、コントロール性、快適性が融合され、非常に魅力的な車に仕上がっていた。試乗したドライバーは「長時間の運転でも、エンジントラブルを心配することなく、快適なドライビングを堪能することができる」と好評だった。

しかし、生産された3730台のDB4、DB5、DB6の中で、改造されていないオリジナルの車はほとんどなくなってしまった。映画の影響でDB5の価格が高騰してしまってからは、クラブロード/レーサーとして改造された多くのモデルが、ボンドカーと同じシルバーに塗られ、“フルオーバーライド・バンパー”を装備したモデルに改造された(Corgi製のモデルカーにあるように)。人々は、少しでも自分の車の価値を高めようとボンドカーに似せたのである。しかし、街中での実用性などを考えると、その異常ともいえる高価格は妥当とは思えない。



文:Andrew English 編集翻訳:オクタン日本版編集部

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