こんな機会はめったにない!1960年代のアストンマーティンDBを乗り比べてみた

Octane UK



DB4、DB5、DB6を楽しむ


車に乗り込むと、まず最初に感じるのは、レザー、ガソリン、オイルが混ざったような独特の匂いだ。ドアは、アルミニウムやスチールで造られ、閉める時にバタバタと音がする。ダッシュボードには数々の警告ランプが並んでいる。ほとんどの車には、最新のスターターが取り付けられているので、エンジンがスタートしないという心配はない。特によくチューニングされた車は、むらのなく、威勢のいいアイドリングをするはずだ。



DB4には、クロスまたはワイドレシオのギア比を持つデイビッド・ブラウン製の4段型トランスミッションが備えられていることが多い。5速がないことや、クラッチが重いことへの批判はあるが、ギアの変速は軽く、ダイレクトである。特にレイコック・ド・ノーマンヴィル製のオーバードライブが付けられている場合は、ギアは素早く噛み合う。多くのDB5と6には、ZF製のS5 325型5段トランスミッションが搭載されていた。これは、重い上に、騒音がし大きく、内部に巨大なギアが入っていたため、変速しづらかった。ギアボックスが冷えていると2速には入らず、熱くもなりやすいので、常に繊細さが求められる。後期の5S、6Sにはボルグワーナーの3速オートマチックトランスミッションがオプションで用意されていたが、これもとても扱いづらい。

乗り心地はとてもよく、むしろ柔らかすぎるくらいである。最近では、多くの車がハービー・ベイリー製のハンドリングキットを搭載している。これにより、足回りを硬め、ボディロールや荷重移動を抑えることができるが、リアがギクシャクしてしまう。エンジンは中回転域が幅広く、カムタイミング、キャブレターによって、最高出力が発揮される回転数が変わってくる。後期のDB6はより制御が安定し、トルク特性もよくなっている。アクセルペダルを1回踏むだけで、病みつきになるような轟音が車内に響くとともに、驚くほどの加速が出る。

最近の試乗レポートでは、この3台がアンダーステアになりやすいと批判されることが多いが、それはこれらの車の特性を理解せずに走っているからである。タイヤの動きに合わせてステアリングを微調整しながら、カーブにゆっくりと入っていき、加速していかなければならない。それが、これらの車の特徴であり、親しみやすさでもある。ハードに走らせると、ターン中に4輪ドリフトし、細長いボディのリアがスライドしてしまう。

他のアストンマーティンと同様、タイヤも非常に重要だ。しかし、ミシュランXWXやピレリ・チンチュラートなどの新しいタイヤはこのタイプのクラシックカーには合わず、タイヤ幅も最大で205mmまでのものでなければならない。ブレーキは効きがよく、パワフルで、ペダルのレスポンスも優れている。しかし、車を定期的に使用していなかったり、ブレーキオイルを毎年交換していなかったりすると、ロッキードのツインサーボシステムが誤作動してしまうおそれがある。

これらのアストンマーティンが苦手とするのは、交通量の多い道路や、狭くて整備されていない道路である。ステアリングはパワーステアリングがないために重く、足回りも硬い。また、ミラーがなにかに衝突すると、高価なボディパネルを曲げてしまうおそれがあるため、ミラーが取り付けられていない車が多い。渋滞中はオーバーヒートを起こしやすく、熱い金属の匂いまで車内に漂ってくることもある。

1970年、DB6 Mk.IIとその後継型であるDBSが一緒に生産されていたが、その2台を比較すると、DB6は明らかに古めかしく感じられた。ロードテストでは、現代のジャガーに比べてDB6には快適さが欠けていると指摘され、デイビッド・ブラウンは在庫を確保するために値引きせざる得なかった。

世間では、貴族的な、独特の雰囲気を醸し出す後期の“クラシックDB”に対する評価は低かった。しかし、DBは、熟練したドライバーにとってはとても面白い車で、素晴らしいグランツーリスモだった。現在、DB4、DB5、DB6の価値は非常に高くなっているため、それらをを公道で見かけることがほとんどないのは、残念でならない。

文:Andrew English 編集翻訳:オクタン日本版編集部

文:Andrew English 編集翻訳:オクタン日本版編集部

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