北へ、南へ、シトロエン2CVと30年|第23回 知恵と工夫で夏を乗り切れ!

photography : Yoshisuke Mayumi

春夏秋冬、日本の四季はそれぞれ素晴らしいと思うものの、2CVに乗るという観点だけでいえば夏はなかなか厳しい季節だ。筆者の体力的な衰えなのか、温暖化による気温上昇のせいなのか、特にこの数年、その厳しさは増していると感じる。

ご存知のように2CVにはクーラーがない。筆者は以前、ビートル&2CV用と銘打たれた後付けのクーラーキットを取り付けたことがあったが、15分も走ると油温が上がってしまい、まったくと言っていいほど使い物にならなかった。



今も室内ユニットはそのままにしていて、スイッチを入れれば「風」も出るのだが、残念ながら「冷たい風」は出ない。室内のぬるい風がかき回されるだけだ。エニカで借りにきた何人かの方には「あ、クーラー付いているんですか!」とぬか喜びをさせてしまったこともある。大変申し訳ない次第である。



それでも下半分しか開かないフロントのサイドウィンドウを上げて、フロントウィンドウ下部の開閉式ベンチレーターを全開にすれば、走行風はそれなりに入ってくる。しかし、あくまでもそれなりだ。もちろんキャンバストップを開ければ風はもっと入ってくるものの、同時に強烈な日差しも入ってくる。



ゆえに、以前から日本の2CV乗りの間では「すだれ」をルーフに付けて夏の日差しを防ぐ工夫が広まっていた。和の趣のある涼しげな見た目はなかなか素敵だ。筆者は試したことがないが、使用者に聞くと「それなりに涼しい」という。

「すだれ派」と並ぶ、もう一つの勢力(?)は「フタ派」並びに「筒派」である。ご覧のようにエンジンルーム前方から直接室内に風を取り込む筒状のダクトを設置するのが「筒派」だ。この派閥は「フタ派」が進化したものである。ヒーターやデフロスター用のヒートエクスチェンジャーから漏れてくる熱気を防ぐために、夏の間だけダクトを撤去し「フタ」をするのが「フタ派」である。そしてフタをするのではなく積極的に走行風を取り込もうと進化(?)したのが「筒派」だ。



写真の2CVは手練れの友人・bのものだが、右側のデフロスター用に「フタ」をして、左側の足元用ダクトにはエアインレット用の「筒」(雨どいを流用したもの)を差している。「足元はけっこう涼しい」とbは主張するが、筆者は試したことはない。

ところが最近になって、夏対策の新たなムーブメントが2CV界にやってきた。その名も「アバルト派」だ。こちらは風には入口だけでなく出口も必要、という最新の空気力学に基づいた理論派(?)である。

2CVはリアサイドウィンドウがはめ殺しなので、車内後部へ風の流れが妨げられてしまう。そこでトランクフードを少しだけ開けることで風の通り道を作り出そうというのがこの派閥の考え方だ。





こちらが「アバルト派」、以前ご紹介したタナカさんの右ハンドル2CVである。最初に見たとき「アバルトじゃあるまいし、2CVはここにエンジンはないですよ」とベタなツッコミをしてしまった筆者ではなるが、なるほど風が抜けるこの仕様はなかなか理にかなっている。あまりに風が抜けるので車内やトランクのものが飛ばないよう網を設けているそうだ。



そしてタナカさんのアバルトルックな2CVに刺激を受けたのが世界4大有名大衆車オーナーのサイトーさんだ。何しろサイトーさんのチンクエチェントはご覧のように本家(?)アバルトである。きっと何か燃えるものがあったのだろう。ご覧のように2段階にリフト量を調整できる仕組みを編み出した。







「すだれ」も「フタ」も「筒」も「アバルト」も、いずれにしても素晴らしいのは、材料をホームセンターなどで調達しているので、非常にお安く仕上がっていることだ。しかも、例えばタナカさんはSNSの情報を手掛かりに、何度もホームセンターに通って試行錯誤を重ね、知恵と工夫を盛り込み、完成系になるまでにけっこうな時間と手間を費やしている。



それに比べ、例によって知恵も工夫もない筆者は、クーラーに挫折した後、当時英田舎が売っていたリアウィンドウ開閉キットを安直に導入した。ありきたりな手法ではあるがコイツはトランクフードを開けるのと同様に風の通り抜けに非常に効果的だ。何より純正品のような見た目がスマートではないか。安直に導入したが、今となってはいい買い物をしたと思っている。

同様のものが一時期、海外の2CVパーツサイトにあったので、てっきり自分のものも海外のものかと思っていたが、今回、気になって調べたところ実は日本製であることが判明した。今も2CVの整備などを手掛ける埼玉県行田市の白根自動車さんが英田舎と一緒に開発したオリジナル商品だったのだ。

埼玉県行田市の白根自動車は大型トラックの整備がメインだが、2CVはじめとしたシトロエンなど、ちょっと変わった輸入車も手掛けている。

最初は2CVのリアサイドガラスに穴を開けて汎用品のヒンジを取り付けようとしたものの、強化ガラスなので粉々になってしまった。ちなみに穴を開けようとした英田舎のアライさんの本業は歯科技工士、その腕と道具を持ってしても強化ガラスは粉々になってしまったのである。



しかし2人は諦めなかった。そして自動車部品商に掛け合って、自動車用ガラスの国産大手メーカーに2CVサイズの特注品を作ってもらうことに成功した。ヒンジやウェザーストリップはスズキアルトバンのものを流用している。そう、開閉キットにも、英田舎と白根自動車の知恵と工夫が注ぎ込まれていたのだ。「3万円?高いなぁ〜」とかほざいていた20数年前の自分を恥じる次第である。

この時、作ったのは白根自動車の社長の記憶によれば30セットほど。もちろんとっくの昔に完売している。海外サイトのものもずいぶん前から在庫なしの状態だ。入手難もあって、すだれ派、フタ派、筒派、アバルト派に押され気味の開閉キット派であるが、筆者としてはイチオシだ。

「もう一度、作ったら?」と白根自動車に言ってはみたものの、「う〜ん、売れるかなぁ」と少々懐疑的だった。リア窓開閉キットはけっこうニーズのある商品だと筆者は思うのだが、全国の2CV乗りのみなさん、いかがでしょう?


文・写真:馬弓良輔 Words & Photography: Yoshisuke MAYUMI

文・写真:馬弓良輔

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