007のあの秘密兵器も間近で見られる!?いざ、伝説のスパイの世界へ潜入

SpyScape

車のフォルムは見慣れたもので、ミラノのツーリングの作品であることは明らかだ。だが、この角度から見ることは滅多にない。セピア色の映像は、小さなテレビの中で繰り広げられるアクションを眺めていた子供の頃の記憶を呼び起こしてくれる。モンティ・ノーマンやジョン・バリー、そしてヴィック・フリックのギターをミックスした音楽は、グラマラスさとスリリングさとエキサイトメントを感じさせてくれる。ジェームズ・ボンドに挨拶せねば、「おはよう」と。

だが、COVID-19禍の影響でニューヨークに行くことができないので、私は今、イギリス・ベルファストの自宅にある朝食テーブルの前にいる。そして、ティーカップの横に置いた13インチのスクリーンの中に広がる、ジェームズ・ボンドのアドベンチャーワールドにのめり込んでいる。

スパイの展示


『SpyScape』のバーチャルツアーに入ると、最初に目に入るのは、天井から吊るされた複数のアストンマーティンDB5と、そこに投影されたボンド映画の名作シーンだ。これまでにもヘリコプターやクレーン(まれに天井)から車が吊り下げられているのを見たことはあったものの、まさか3台もDB5が吊り下がっているとは思ってもよらなかった。よくレストアされたものであれば、60万ポンドという高値がつくこともあるからだ。

もちろん、私がここで見ているものは本物のDB5ではなく、3Dプリンターで造られたレプリカで、大きさは実車の半分程度のものだ。『SpyScape』のマーケティング責任者であるフランシス・ジャゴは、この3台のセットを設けるのがいかに困難であったかを振り返ってくれた。

「まず、DB5の3Dモデル・データを見つけなければなりません。アストンマーティ社が持っているに違いないと思ったのですが、2Dの設計図面しかなかったのです。ですから、DB5のボディの正確な3Dモデルを手に入れるのは、とても難しいことでした」

「次に、どのような素材で造るのか。3Dプリントであの規模のものを製作できる人はいるのか。さらに、天井を壊さずに取り付けられるほど軽い素材で造ることができるのかという問題があります」

「このように、ものを作り、それを設置するためには、物理的、技術的、概念的にいくつか大きな課題がありました。プロジェクションマッピングも簡単なものではありませんが、幸いこの国には優秀な映像技術者がたくさんいて、彼らが作業をおこなってくれました。そして、適切なストーリー、適切なシーンを選ぶ、編集の役割もあります。一見シンプルな作品でも、美しく仕上げるためには、たくさんの作業が必要なのです」

実車展示との相乗効果


『SpyScape』のスクリーンに話を戻すと、1995年の『ゴールデンアイ』で使用された本物のDB5が置かれた部屋があり、マシンガン、タイヤスパイク、脱出シートなど、車に搭載されたオリジナルの装備がどのように機能するかを説明するディスプレイもある。



ボンドの生みの親は、Qのモデルには特殊作戦実行部隊のチャールズ・フレイザー・スミス、武器専門家のジェフリー・ブースロイド(イアン・フレミングがボンドの銃について相談)など、実在の人物をモデルにした。1930年代にイギリスに渡ったドイツ人難民で、最終的にRAFの地上攻撃機タイフーンを操縦していたケン・アダムが、映画制作チームに参加している。才能豊かなアーティストでありデザイナーでもあるアダムは、豪華なDB5をモーター駆動の戦闘マシンに改造したり、あの印象的な隠れ家を作ったり、私たちが知っているようなボンドの視覚的言語を生み出したりした。

秘密兵器のホイールスピナーも間近で見ることができる。

ボンド映画が公開された直後、MI6のボンドカーの装備を開発している部署には、「それを使わせてもらえないか」という電話が、部下の“本物の”スパイからよくかかってきていたのだという。

「同じように、『ミッション:インポッシブル』がアメリカでテレビシリーズ化されたとき、CIAの科学技術部には、所属するスパイから「これをやってくれないかとか、あれがほしいという声が上がっていたそうです。CIAは、我々の失敗は公然のものであり、我々の成功は完全に私的なものであると、口癖のように返答していたそうです。ハリウッドで自分たちの仕事が取り上げられ、ファンタジックに映されることが嬉しかったようです」とジャゴは語ってくれた。

『SpyScape』のコンセプトは、観て体験して、実在のスパイと架空のスパイに対する人々の魅力を深く掘り下げたものである。アベンジャーズの俳優ヘイリー・アトウェルが、スパイ活動や大活躍の実話を語る音声もある。歴史的な展示物もあるが、博物館ではなく、「スパイのディズニーランド」と自称しているが、テーマパークでもない。



ロックダウンされるまで、『SpyScape』に対する顧客評価は、『Museum of Sex』を含む他の主要なニューヨークの観光スポットよりも高かった。その後、『SpyScape』は新しい『007✕ SpyScape』の展示をオンラインで公開され、誰でも無料で見ることができるようになった。『SpyScape』はアストンマーチン・ファンやボンド・ファンのみならず、スパイ・オタクでも、誰もが楽しむことができる。フランシス・ジャゴは「私たちは、ボンド映画のストーリーとスパイ技術の文化はたいへん重要だと思っており、それを共有できる場として『SpyScape』を制作した」と語っている。

来場者は、他人が嘘をついていることを見破ろうとする、嘘発見機も体験することができる。また、戦時中の特殊作戦実行部隊の活躍を知ったかと思えば、ジェリー・ゴールドスミスが作曲した『The Man From U.N.C.L.E.』(邦題:0011ナポレオン・ソロ)のテーマに合わせて踊ることもできる。また、シフトレバーのノブを開けて赤いボタンを押し、ボンドになった気分になって、それをスクリーン上のシーンとシンクロさせるという、スリルを味わうこともできる。

会場には、映画で使われた小道具、デザイン案、イラスト、スクリーン上の大爆発で犠牲になることを想定して作られた建物のスケールモデル、さらに2012年公開の『007 スカイフォール』で、ヘリコプターに襲われて黒焦げになった3分の1スケールのアストンマーティンまで、オリジナルやレプリカが多く展示されている。

家の設計図の前にはボンドのDB5が置かれている。

「Q」の世界。

現在の実際の状況下では、『SpyScape』を観ようとニューヨークを訪れることは叶わないが、オンライン展示でも、10歳の頃(?)に映画を観て感じたあのワクワク感を味わうことができるだろう。

もしかすると前時代的な男性像を描く007は、現代の価値観には逆らっていると非難されるかもしれないが、それはボンドとスパイの永続的な魅力を無視していることにもなる。

「彼は親しみやすいキャラクターで、親しみやすいスーパーヒーローです。でも、ボンドやボーンの場合は、私たちがよく知っている人物と同じく、なにかしらの弱みを持っています。この組み合わせが、彼らを魅力的で有名な存在にしているのです」とジャゴは語っている。

『SpyScape』のサイト(spyscape.com/access-007)で、自分がスパイになるのにふさわしい気概と知性を持っているかどうかを是非試してみてほしい。私はといえば、つい子供の頃と同じように、アストンマーティンDB5のクラシックなフォルムとスパイの世界の深い思惑にすっかり魅了されてしまった。


編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:オクタン日本版編集部 Words: Neil Briscoe

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:オクタン日本版編集部 Words: Neil Briscoe

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