XKSSでLAをクルーズすれば、気分はスティーヴ・マックイーン

Octane UK

マックイーンは、ニコルズ・キャニオン・ロードの頂上にある、ソーラー・ドライブという通りに住んでいた。彼のプロダクションの名前にもなっている「ソーラー」だ。そこには、街全体を見渡す絶景が広がっている。日曜日の早朝、私たちはXKSSを静かにドライブウェイに入れようとしていた。その4.2リッターDOHC直列6気筒エンジンは、トリプル・ウェバーを備えて328bhpを搭載し、サイドマフラーという仕様のXKSSを、できる限り静かにバックさせようといていた。オリジナルのXKSSとは仕様が異なるが、見た目は同じである。エンジンには後期型のDタイプ用カムカバーを持ち、ウェバー社製の従来型アルミ製ラジエーターとオイルクーラーを備えている。



近所はまだ寝静まっているので、極力音を立てまいと緊張しながら準備をする。私が「アクション」と声をかけると、ポールはXKSSを出し、私はシャッターを切った。これからが本当のアクションだ。散歩している人が「素敵な車ですね」と言わんばかりに車をみる。

XKSSはまさにここ、ロサンゼルスの山道を走るために造られたかのような車だ。ニコルズ・キャニオンからサンセット通りに向かって走る。エグゾーストノートが丘に響き渡る。近所の人たちを起こす心配ももうない。

サンセット通りからローレル・キャニオン通りに抜ける道には、車が1台も走っていない。右折してビバリーヒルズに向かって西に進み、シャトー・マーモント、サンセット・プラザ、タワー・レコード、ザ・ウィスキーを過ぎる。

マックイーンが訪れたのは、ハリウッドで最も古いホテルのひとつであるシャトー・マーモントだ。このホテルは90年以上の歴史を持つ。“キング・オブ・クール”の異名を持つ彼も、日曜日の朝、この時間にコーヒーをここで飲んでいたかもしれない。私たちは店の前で写真を撮り、再び交通量の少ない道を心地よく駆け抜けていく。これほど静かなロサンゼルスは滅多にない。

空気は冷たく、太陽は昇り始めたばかりの早朝だ。ローレル・キャニオンの頂上を目指し、マルホランド・ドライブに向かう。ここは、ジョニー・ミッチェル、ジミー・ヘンドリックス、クロスビー・スティルス・アンド・ナッシュらが住んでいたローレル・キャニオン・ブルバードであり、ジム・モリソンの家やハリー・フーディーニの家を通り過ぎていく。路面はコンクリートとアスファルトが混在しているが、ひび割れや段差が多い。



マックイーンの妻であるネイア・アダムスに、彼のXKSSの感想を尋ねたことがある。「スティーヴはローレル・キャニオンを縦横無尽に飛び回り、対向車線の車を追い越し、スピードを出しすぎて、いつも私の髪を乱していました」

マルホランド・ランのあとパラマウント・スタジオを目指す


マルホランドは、ロサンゼルスとサンフェルナンド・バレーを分ける山の頂上に沿った2車線の道路である。ここは車窓からの景色と急カーブで有名である。その昔、マックイーンとその仲間たちは真夜中に集まり、午前4時までレースをしていたと噂されている。XKSSの直列6気筒のエンジン音はデザインと同じくらい美しい。

私たちが向かったのは、1919年創業のハリウッドで最も古いグリル・レストランとして知られる「ムッソ&フランク」だ。ここは、昔ながらの赤いスポーツコートを着たウェイター、高い天井と堅木の壁、マティーニのウォッカなど、昔ながらのハリウッドの雰囲気が漂っている。ある夜、マックイーンとチャールズ・ブコウスキーがここで酔って喧嘩をし、勤務を終えたバーテンダーに家まで送ってもらったという逸話が残っている。

マックイーンの仕事場(パラマウント・スタジオ)にも行かなければならない。メルローズの入り口にある巨大なゲートを目指す。ハリウッド・ブルバードを進み、マンズ・チャイニーズ・シアターを過ぎてガワー・ストリートに入り、左折してメルローズに入る。友人のポールはXKSSに乗った有名人を装うが、当然ながらパスを持たない私たちはゲートを通ることはできない。



ポールのXKSSレプリカは、イギリスの“Shapecraft”がショートノーズDタイプの木型をベースに製作した。ボディは100%ハンドメイドで、完成までには3000時間もかかるという。ポールはこのレプリカを1年ほどロサンゼルスに置いているが、本物のXKSSに限りなく近いという。しかもこれは、1957年に16台だけ造られた、本物の何分の1かの価格で手に入れることができるのだ。


編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:オクタン日本版編集部 Words: EVAN KLEIN

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:オクタン日本版編集部 Words: EVAN KLEIN

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