まっさらな気持ちで向き合うと見えてくる|BMW アルピナ B7の神髄

Images:NICOLE AUTOMOBILES

BMWアルピナが活気にあふれている。2020-2021 日本カー・オブ・ザ・イヤーでBMW ALPINA B 3が「パフォーマンス・カー・オブ・ザ・イヤー」に選出されたことは記憶にあたらしい。B3に10点を投じ、以来BMWアルピナを高く評価しているジャーナリスト西川 淳が、フラッグシップのB7 Limousineのインプレッションを通じて、その魅力を熱く語る。


"アルピナ"ほど、今一度、車好きが再検証しておくべきブランドは他にないのではないか。できれば良し悪しを含め自分の知識や理解をまずはいったんすべて忘れて、白紙で向きあって欲しい。過去にはこうだったという経験さえ、かえって目を濁らせてしまう。最新アルピナ車のドライブフィールはそれほど鮮烈で予想を覆すものであるからだ。  

もちろんアルピナは本名をBMWアルピナというくらいだから、確かにBMWである。ところがそこが正に誤解を生みやすいところで、だからと言ってBMWの"速い版"であるとか"豪華版"であるとかというふうにシンプルに思い込むと真相に辿り着けず、車好きとしてもったいない話になる。 



先日もこんな話があった。BMWアルピナを褒める昨年末以来の筆者(B3が個人的なイヤーカーだった)の記事をいくつか読んで、「本当かなぁ」と疑っていた"クルマ経験"豊かな友人がいた。過去にはアルピナの経験もあったようだ。そこまで言うなら最新のアルピナ(とおそらくは西川の評価能力)を確かめてみようと思い立ったところ、運よく新型B3を手に入れることができた。半信半疑で乗ってみれば完成度の高さに大いに驚き、急ぎそれまで日々のアシとして使っていたドイツ製高級スポーツカーを手放してしまった。同じような例が他にもまだいくつかあった。  

経験豊富な猛者たちを一瞬にして虜にする最新アルピナのドライブフィールとは一体どんなものなのか。BMW以上にBMWであることを熱心に追求した結果、BMWとは一線を画す存在になった、とでも言おうか。その事実をフラッグシップモデルのB7リムジンロングアルラッドのインプレッションを通じて詳らかにしていきたい。  

ハナからお金の話で申し訳ないけれど、B7の車両本体価格はおよそ2600万円だ。この値段を見てとあるBMWを思い出した方はかなりのツウである。そう、本家のフラッグシップサルーンM760Li xドライブとほとんど同じ設定だ。ただし、あちらは至宝の6.6ℓ V12ツインターボエンジンを積む。対するアルピナB7は4.4ℓV8ツインターボ。なんだ格下じゃないか、などとここも浅読みするなかれ、そのスペックは本家12気筒とほとんど横並び、少し軽いこともあってか加速性能ではわずかに上回る。マイナス4気筒、でも同等の性能、というか多分に本家の存在を慮ったパフォーマンスを狙って出してきたアルピナのしたたかかつしなやかなエンジニアリングに舌を巻く。まさに「名を捨てて実を取る」、である。  



試乗車両は特別ペイントのアルピナブルーをまとい、伝統のクラシックタイプホイールも21インチの鍛造品がおごられていた。タイヤは今となっては他のリムジンでは見かけないミシュランパイロットスポーツ。ちなみにこの個体の車両価格はなんと3000万円超えだったが、そのエクストラコストのほとんどはリア二座仕様のプレジデントパッケージ(326万円)で、これにペイントと21インチタイヤ&ホイールを合わせるとちょうどそれぐらいになる計算だ。  



ユニークなストライプと計算されたエアロパーツ、そして伝統の20本スポークホイールといったエクステリアの見所もさることながら、アルピナといえばやはりインテリアの見栄え質感の高さに目を奪われる。事実上、制限がないアルピナのインテリアオーダーだが、ごくスタンダードに近い仕様であってもその上質な雰囲気は一験に値する。乗り込めば自然の心が浮き立つコクピット。たとえBMW流のデザインを見慣れた人であったとしても。

もちろん、アルピナの真骨頂はその走りにある。市街地の速度領域ではソリッドだがまるで嫌味なく程よい硬さの乗り心地を提供する。静粛性の高さも特筆に値し、なかでもリアシートに座れば極上のスペースだ。  



とはいえ運転席の放棄はもったいない。全長は5.3mに近く、ホイールベースも3.2mを超える大型サルーンであるB7をスポーツセダンと気安く呼ぶことは躊躇われるけれど、狭い峠道を快活に走った後ではそう表現せざるを得ない。ワインディングロードをB7でこれほどまでに楽しめるとは!後輪操舵はこの世代の7シリーズで最も注目の機能だったが、アルピナはそれをフルに活用して巨大なサルーンを一流のスポーツセダンに仕立てあげたのだった。  



もうひとつ、大いに感動した性能があった。路面が少し濡れた高速道路、工事区間が終わって再びの加速。そのスタビリティの高さはもちろん、路面の水分を感じさせない滑らかな走りは完全に本家12気筒モデルを上回っただけでなく、もう一つ上のセグメントに勝るとも劣らないドライバビリティの高さだと感じた。  



またまた~。マサカそこまでじゃないだろう。経験豊かな友人から再び疑われそうで ある。

文:西川 淳 写真:ニコル・オートモビルズ Words:Jun NISHIKAWA Images:NICOLE AUTOMOBILES

文:西川 淳 写真:ニコル・オートモビルズ Words:Jun NISHIKAWA Images:NICOLE AUTOMOBILES

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