ジャンパオロ・ダラーラの夢、「ムジェッロ・マシン」がサーキットを走る!

Photography:GRAFILM

カーボンファイバー構造、エアロダイナミクス、運動性能という、ダラーラ特有のスキルを存分に味わうために設計された特別な車、「ダラーラ・ストラダーレ」。世界中のレーストラックで培ったレーシングテクノロジーが注ぎ込まれたこのマシンは、乗る人に純粋なスポーツカーの楽しみ方を教えてくれる。


4月18日のツインリングもてぎ。Idlers6時間耐久レースを制覇したのはアトランティック・ファビオ・レーシングのダラーラ・ストラダーレであった。スプリントレース向けのマシンではありながらも、その圧倒的なパフォーマンスは6時間を通して無敵であった。しかし、まだデリバリーが始まって一年も経っていないまっさらな市販モデルであるから、レースに向けての最適化は手探り状態であったという。

「優勝したことはとてもうれしいことです。さらに私達はダラーラ社と共に、次のステップへの準備を既に進めています。ダラーラ・ストラダーレはスポーツカーの楽しみ方というテーマにおいて、どんなマシンよりも先んじていますから、その楽しさを皆に知らしめるのが私達の役目です。ですから、またたくさんのプランがあるので、止まっているわけにはいかないのです」チームオーナーである野澤隆之氏は満面の笑顔で語った。

ダラーラ社会長であるジャンパオ ロ・ダラーラ。彼が長年にわたって蓄積してきたスポーツカー作りのノウハウから生まれた夢の車がダラーラ・ストラダーレだ。ダラーラ社はレース界において無くてはならない存在であるだけでなく、世界中のハイパフォーマンスカー開発を支える影役者でもある。それらのノウハウがダラーラ・ストラダーレに活かされているわけだ。

ダラーラ社の創始者であるジャンパオロ・ダラーラによる理想のスポーツカー作りの想いに共鳴して日本のインポーターとして名乗りをあげたのがアトランティックカーズのオーナーである野澤隆之氏であった。二人はすぐにカーガイとしての強い絆で結ばれ、まもなく野澤氏は日本におけるインポーター契約書にサインをすることになる。それがまさに二年前のことであった。ダラーラ・ストラダーレ日本第一号車が鈴鹿サーキットで開催されたスーパーフォーミュラ開幕戦におけるデモ走行を行い、日本デビューとなった。同時にアトランティックカーズがダラーラ・ストラダーレの日本におけるインポーター、つまりダラーラ社の言うところの、より対等なパートナーシップを共有する"ブランドアンバサダー"となったことが発表されたのだ。

ムジェッロセッティングにより更に戦闘力を増したアトランティック・ファビオ・レーシング・チームのダラーラ・スト ラダーレ。強力なダウンフォースによる安定した走りは耐久レースにおいても大きな強みとなった。

ダラーラ・ストラダーレは、インディカー・シリーズ、このスーパーフォーミュラなど世界のレース界を支えるダラーラ社の創始者、ジャンパオロ・ダラーラの夢から生まれた。「私が設計したランボルギーニ・ミウラは世界の名車として認められましたが、いつの日か、現代版ミウラを作りたいという夢を私は持っていました。ええ、私の名前を持った理想的なロードカー、それがダラーラ・ストラダーレなのです」とジャンパオロは語った。

ダラーラ・ストラダーレはアマチュア・ドライバーがサーキットへ乗り付け、そのままでサーキットランを楽しむことができるスポーツカーを目指して開発された。キーワードはライトウエイトと強力なダウンフォースだ。強靱なカーボン製センターモノコックを持つマシンの乾燥重量は僅か855kg。そして280km/hの最高速において820kgという強力なダウンフォースを生み出す。この二つのファクターを徹底的に追求することで、小排気量のエンジン、且つ複雑な電子制御デバイスを備えないにも関わらず、最新の大排気量のマシンと互角に走ることができる。どんなレベルのドライバーでも安全にドライビングを楽しむことができるし、何より自らの手で車を御してしているという実感を持つことができるわけだ。

ダラーラ・ストラダーレは自社製の軽量かつ、高い剛性を誇るCFRP 製センターモノコックをベースとする。 軽量化のみならず F1マシンを凌ぐ強度が確保されている。つまりサーキットにおける安全性も突出しているのだ。

この、ダラーラ・ストラダーレの思想に野澤氏は惚れ込んだ。"お客様に勧めるためには自分自身が楽しみ、その姿を見てもらわなくてはならない"というポリシーを彼は大型クルーザーやファニチャーの世界においても実践してきた。アトランティック・ファビオ・レーシングのマシンとしてダラーラ・ストラダーレを導入し、野澤氏自身もレースにおいてそのステアリングを握っているのは単に彼の楽しみのためだけではないのだ。

世界的にみてもスピーディなペースでダラーラ・ストラダーレの導入が進んでいる日本市場であるが、インポーターとしてレース活動を行っているのもこのアトランティックカーズだけだ。ダラーラ社はレースカー・コンストラクターであるから、レースといえば目の色が変わるスタッフが揃っていることは言うまでもない。アトランティックカーズとダラーラ社の開発チームは毎日のようにコミュニケーションを取り、サーキット走行のデータをフィードバックし、ダラーラ側がすぐにそのソリューションを提供するという理想的な環境の元でダラーラ・ストラダーレのレースに向けての準備は進んできた。

野澤氏とチーフ・メカニック、ドライバーの喜びもひとしおだ。レースにおけるノウハウが通常のメインテナンス にも活かさせるし、走りに合わせた各所のアップデートも計画されている。

今回の耐久レースでは、ダラーラ社の開発チームがイタリアのムジェッロ・サーキットに向けて最適化を行ったコンフィギュレーションが部分的に採用されている。ダラーラ・ストラダーレはあくまでもロードカーであるから、快適性も重視されているし(これはこの外観からは想像もつかないレベルだ)、どんなレベルのドライバーでも破綻なく走ることのできるようなセッティングになっているのだか、今回はそれを少しハードな方向性へと味付けしたという訳だ。サスペンション廻りには新たに設計されたパーツが用意され、リアウィングもサーキットに合わせてアジャストが可能となっている。果たしてテストランを行ったチームのドライバー達はこの"ムジェッロ・マシン"を縦横無尽に振り回し、アドレナリンをたっぷりと放出したのであった。


文:越湖信一 写真:GRAFILM Words:Shinichi EKKO Photography:GRAFILM

アトランティックカーズ
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文:越湖信一 写真:GRAFILM Words:Shinichi EKKO Photography:GRAFILM

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