北へ、南へ、シトロエン2CVと30年|第24回 灼熱の北関東グルメドライブへGO!

photography : Yoshisuke Mayumi

なんで7月に2CVを買ってしまったのか。2年に一度の車検が来るたび、そう思う。いつも車検をお願いしている埼玉県行田市の白根自動車までは片道100km、時間にして約2時間の道のりだ。しかも行田市は、日本の最高気温1位となる41.1度を記録した熊谷市や、40.5度で14位の群馬県伊勢崎市、40.3度で20位の館林市などの「北関東高温有名都市」に隣接している。そんな日本屈指の高温地帯にクーラー無しの2CVで乗り込まなければならないのだ。



そんななか、商売熱心な車検屋さんからご丁寧なことに2回も格安車検のご案内を頂いた。「あなたの街で一番安い車検」「完全車検で基本料1万円」。実に魅力的なキャッチフレーズだが、しかし筆者の心は1mmたりとも動かない。2CVの整備は慣れたお店に任せたいからだ。ところで完全車検ってなんだろう?

暑くなる前に白根自動車に持ち込もうと思っていたが、今年は友人のMリヤさんやAサブキさんに先を越されてしまった。しかもMリヤさんの2CVはリア足回りからの異音が出ているようで、リフトに上がっている写真がSNSに上がっていた。これは時間がかかりそうだ、と思っているうちに梅雨が明けてしまった。しかも来週からしばらく首都高は+1000円。その前にいかなければならない。

さあ、灼熱の北関東ドライブへ出発だ(泣)。



暑さ対策はご覧のように入念に行った。コーヒーは水分補給になるのか少々疑問だが、家の冷蔵庫で冷えていたのがこれしかなかったから仕方ない。糖分補給の飴は塩分チャージ系が良いのだろうけど、大好きなマスカット飴でも代用できるだろう。ちなみにカバヤのマスカット飴は1975年生まれだそうだ。出てきたときは衝撃な美味しさだったなぁ。タオルは2種類、スポーツタオルはタイガースのマークが少々暑苦しいが機能には関係ない。そして今回の期待の新人は缶コーヒーの横にある水色のひんやりタオルだ。水に濡らして振り回すと気化熱で冷たくなるらしい。



車内の温度計は40度以上指しているが、外気温は32度ほど。湿度がそれほど高くないことは幸いだ。前回、自慢したように筆者の2CVはリアサイドの窓が開くので、このくらいの気温と湿度であれば走行風のおかげで意外と暑くない。そして、早くもこの段階でひんやりタオルが今日のMVPであることを確信した。首筋に当てるととても涼しい。そして使わないときは丸めておくと「持ち」が良いことに気がついた。丸めれば40分くらいは十分に涼しさをキープしてくれる。



首都高の荏原入口から東北道の蓮田SAまで、高速に入ってからは休憩ポイントがない。しかしオリンピックがらみの4連休前ということもあって首都高は車が少なく、ひんやりタオルの効果が薄まる前に難なく蓮田に到着した。



蓮田では冷えたスポーツドリンクを入手し、ひんやりタオルも水に濡らした。もはや怖いものはない!今日はGoogleMapが圏央道ではなく羽生ICからのルートを選択したので、素直にそれに従って行田へ向かう。そんなに汗もかかず、ひんやりタオルの活躍もあって、拍子抜けするほどあっさり行田に着いた。

埼玉県行田市は観光地としての知名度は高くない。しかし映画「のぼうの城」の舞台となった忍城(おしじょう)が市の中心部にある。忍城は石田三成の水攻めでも落ちなかった城、つまり豊臣秀吉が唯一落とせなかった城として有名だ。今でも市内には石田三成が築いた石田堤が残っている。

また、行田は江戸時代から足袋の生産が盛んで、1930年代には国内生産の8割を占め、今もその生産量は日本一。市内には足袋蔵と呼ばれる倉庫が残っており、「和装文化の足元を支え続ける足袋蔵のまち行田」のストーリーが、平成29年4月、埼玉県内初の「日本遺産」に認定されている。

他にも古代蓮の里や、埼玉の名前の由来となった埼玉(さきたま)古墳群などの見どころもあるが、しかしそんな行田の最近の観光資源はなんと言っても「フライ」と「ゼリーフライ」だろう。

名前は似ているがフライとゼリーフライは全く別の食べ物だ。そしてフライは揚げ物ではなく、ゼリーフライにゼリーは使われていない。



こちらがフライ。見た目はお好み焼きに似ているが、生地はクレープのようにふわっとしている。具は店によって様々で、白根自動車のそばにある「かねつき堂」は卵や焼きそばを入れることができる。水で溶いた小麦粉をフライパンで焼いて作ることからフライという名がついたらしい(由来には諸説あります)。



そしてゼリーフライがこちら。衣の付いていないコロッケというべきか。ジャガイモやネギ、ニンジンなどに加えておからが入っているのが特徴。ゼリーフライという名前は形が小判型なので銭フライがなまってゼリーフライとなった説が有力だ。



少し前からスポットライトを浴びるようになった全国のB級グルメ。その多くは、明治以降の殖産興業の流れに合わせ、工場で働くようになった人たちのファストフードとして生まれた。戦後に開発された「リゾート地」ではなく、「街」に多いのはそれが理由だ。行田のフライも農家のおやつから始まり足袋工場で働く女工さんたちの手軽な間食として愛されてきた歴史を持っている。少しオーバーに表現すれば産業遺産の一種なのである。



それにしても今回立ち寄ったかねつき堂さんには、2CV同様にクーラーがなかったのは誤算だった(笑)。でも店内は風通しが良く、美味しそうな「かき氷」もあったので、涼みたい方はそちらをぜひどうぞ。



お腹を満たし白根自動車で久しぶりのクーラーで涼をとっていたら、Aサブキさんご夫婦が車検整備の終わった愛車を取りに来た。Aサブキさんの2CVはグリーンストライプの幌に、グリーンのシート生地(山手線のシート!)など、白と緑のコーデがおしゃれさんだ。うちの2CVとは製造番号がわずか20番違いで製造日は同じ。31年前の同じ日に、遥か彼方のポルトガルの工場で生まれた2台の2CVが、時空を超えて極東の島国、灼熱の北関東で再会するとはなんとドラマチックなのだろう。まあAサブキさんとは20数年前から何度も会っているのだが(笑)。

というわけでWebではあるが紙幅が尽きた。肝心の車検整備の内容などは次回に!

文・写真:馬弓良輔 Words & Photography: Yoshisuke MAYUMI

文・写真:馬弓良輔 Words & Photography: Yoshisuke MAYUMI

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