伝統と職人技の奥深さを求めて|マクラーレンGTで鍋島焼の秘窯を探訪する

McLaren Automotive


職人の技術と美意識が作り出す繊細な作品たち


何軒もの窯が軒を連ねる鍋島藩窯坂を虎仙窯から坂を降りきったところに畑萬陶苑はあった。工房とショールームを兼ねた建物は現代のお洒落な佇まいをしているのに、見上げた煉瓦が積まれた煙突と“萬”のマークが時代を感じさせてくれる。





こちらでは代表の畑石真嗣さんが製造工程を成型から絵付け、焼成までを丁寧に説明してくださった。釉薬をかけて本焼きした器物に絵や模様を上絵付けする装飾「赤絵付け」が行われることで見た目はもちろん実際にも重ねた色が凸を生み、一枚の皿の奥行きが生まれる。職人の一筆が作る作品の世界を知るほどに真価も伝わるというものだ。また鍋島様式には植物を絵柄に使うことが多いこと、最近では外来種のお花なども採り入れるのが当たり前になってきたことも教えてくれた。日本人としては古典的な図柄に期待通りの美しさを感じつつ、洋食器をも思わせる現代風のそれにも惹かれる筆者であった。







畑石さんが「コレクション性も持たせたい」とおっしゃる香水瓶に至っては、小さな瓶に繊細な絵柄が描かれていることに加え、磁器の瓶に磁器の栓をするのだが、その密閉性と上質な感触を感覚で調整、製造されていると聞き、まさに職人技術の高さのみならず奥深さを知ることができた。



レザーのような風合いを持つ最新作の「キュイール(仏語で革)」は5度の焼きと冷すテクニックによってことヒビを作り、レザーのような風合いと感触がとてもユニーク。焼成前の生地を手作業で約1ミリまで彫り込む「透かし彫り」は、光の具合で浮かび上がる図柄の上品な美しさにも魅了されたこちらも、新しいシリーズだそうだ。



虎仙窯の川副さんは「畑萬さんの白磁はうちにも出せない素晴らしさ」と絶賛されていたが、茶器やお皿、「透かし彫り」シリーズをはじめ、白磁の白が薄くて軽くて滑らかな印象を素人目ながら、触れる前からオーラのように漂わせる印象をより強めているように思える。



藩窯としての役目を終えたものの伊万里・鍋島焼は今もその高い技術とともに歴史や伝統を今も子や孫に受け継がれ、職人たちの高度な技術を自負とともに守りながら時代の移ろいに寄り添う変化も受け入れ新たな技術も生み出している。それはまさにかつてのトッププレイヤーと呼べる大名たちの嗜好を採り入れるべく高められていったビスポークの技術や理念が現代に活かされていると言えるだろう。



マクラーレンGTもF1(モータースポーツ)の世界で活躍するトッププレイヤーたちのために製作された技術を市販車であるロードカーにそのDNAとともにアレンジされた一台。シンパシーを感じずにはいられなかった。

“本物”の価値を知る旅の相棒にマクラーレンGTは意外なまでに色々な意味で整合性もあり相性がいい。ドライビングプレジャーと移動する楽しさを与えてくれる旅するスーパーカーで伊万里・鍋島焼の風鈴の音色に導かれる“粋”を味わってみてはいかがだろう。





文:飯田裕子 写真 : マクラーレン ・オートモーティブ Words: Yuko IIDA Images: McLaren Automotive

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