伝統と職人技の奥深さを求めて|マクラーレンGTで鍋島焼の秘窯を探訪する

McLaren Automotive

伊万里・鍋島焼の風鈴の音色に導かれるように向かった秘窯(ひよう)の里、佐賀県は伊万里市大川内山。ここは江戸時代、鍋島藩(佐賀藩の別名で鍋島家が藩主であったことに由来する)の御用窯が置かれた地である。今回、私はスーパースポーツカーを輩出するマクラーレンのラインナップのなかでもその名が示すとおり、グランドツアラーとして同社のノウハウが徹底的に追求されて誕生したマクラーレンGTで福岡から長崎や佐賀を巡りながら件の秘窯の里を訪ねた。

まさに「グランドツアラー」の本領を発揮


スタートボタンを押すと「ヴォンっ!」とひと吠えしてくれるのは“Ready to Go!(いつでも出かけられるよ)”の合図。車高は低いがとにかく視界が良く乗り心地の良い(といっても世の中のサルーン系のソレとは“質”が違うけれど)マクラーレンGTは福岡の市街地から高速へと向かう間にすっかり自分の身体に馴染んでいた。高速道路に乗り巡航走行に入ると、車体にカーボンファイバー製のコア構造を採用するマクラーレンGT特有のボディ骨格を感じつつ、滑らかでフラットな走りに安心感を抱きステアリングを握る力を緩め、玄界灘を横目に見ながらクルーズドライブが楽めた。



佐賀の宿に向かう前の寄り道に選んだのは、島原半島のほぼ中央に位置する雲仙だ。ここは雲仙岳をはじめとする1000m級の山々に囲まれる標高700mのところに温泉街がある。“雲の上の避暑地”と呼ばれるだけあり、大自然の中のワインディングドライブをアップ&ダウンとともに楽しめる。さらに街の中心をしばし歩けば“雲仙地獄”のモクモクと沸き上がる噴煙と熱気、そして硫黄臭に火山のパワーをもらいつつリフレッシュできること間違いない。



振り返ればマクラーレンGTというスーパーカーとの真の意味でのクライマックスは「仁田峠」のドライブだったと思う。小浜仁田峠循環線は島原半島を一望する一方通行である点が珍しい。道幅は狭いが動物の飛び出しに注意をしつつも対向車などの心配がないのがいい。





4L V型8気筒ターボエンジン(620ps/630Nm)を7段ATで走らせる後輪駆動のマクラーレンGTは競合モデルに比べ200kgほど軽量につくられている。その軽量がもたらす軽快ぶりは街中でも十分に感じられるが、ステアリングを左右に操舵しながら、アクセルやブレーキ操作とともに走らせればさらにその身軽で俊敏なマクラーレンらしい走りを味わえるというもの。ドライバーは地面に近いところでボディの低重心な様を感じながら、ステアリングの決して重すぎずしかし精密な感覚を味わうためにコーナーは一つよりもいくつも続くほどいい。それまで控えめに聞こえていたエグゾースト音もアクセルの踏み込み度合いで強弱が生まれトルクの増減を体感と耳とで確かめながら、つまり対話するように走らせればこの上ないスポーツドライビングが堪能できる。



その一方でマクラーレンにとっての今後のグランドツアラーの在り方を独自に解釈したというマクラーレンGTは、同社の最高峰アルティメイトシリーズの最新モデル「Speedtail」と同じDNAを受け継ぐスーパーカーでありながら、移動の快適さや“旅するスーパーカー”としての実用も兼ね備えている。

もっとも特徴的なのがフロントとリヤに570Lの荷物収納スペースを確保している点だ。キャビン後方にエンジンを搭載するミドシップレイアウトのマクラーレンのフロントフード(いわゆるボンネット)下には深くてスクエアなスペースを有するのはすでにお馴染みだが、後方にもエンジンの高さを低める改良を加えることでゴルフバッグやスキー板のような長尺ものも搭載可能。



さらにガラス張りのCピラーとクオーターウインドウはマクラーレンGTのデザイン的な魅力や個性を引き立てているだけでなく、後方の視界も広がり扱いやすさにも大きく貢献。この手のモデルはリバースギヤで行う車庫入れなどに車両感覚的な“慣れ”が極めて必要になるものだが、バックカメラも活用しながらも抵抗なく扱える気がするのもGTならでは。ちなみに、このようなガラスを多く採り入れた設計/デザインを可能としているのも、車体骨格主要部とコクピットを軽量で高い強度を持つ“カーボンファイバー製のコア構造”をベースとしているからなのである。

さらにレーシングカーのような構造を持つマクラーレンらしいのが、このGTモデルに至っては車体の“剛性を下げる”設計が行われているというのもユニーク。通常のスポーツカーであっても“剛性を上げる”ことに尽力するものだ。マクラーレン特性のグランドツアラーはこれにより車体やメカニカルなノイズが最小化され、ある意味でマクラーレン史上最も洗練度の高いマシンとなっているのだそう。

今回の宿泊先である佐賀県武雄温泉の旅館「御宿竹林亭」は、15万坪という広大な敷地内に客室数はわずか11室という贅沢な空間だ。

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