もはやスーパーカー!?ミドシップに生まれ変わったシボレーコルベットの真価

Kazumi OGATA

シボレー・コルベットは従前のファン層を捨てた、とは言いすぎだろうか?ロングノーズ&ショートデッキのFRマッスルカーが、8代目(C8)となる現行モデルからいわゆる“スーパーカー”然としたミドシップ・スポーツカーに生まれ変わった。MTの設定はなく8速デュアルクラッチを搭載し、日本には右ハンドルのみが正規輸入される。



6.2LのV8自然吸気OHVエンジンは、先代モデルの「LT1」を進化させた「LT2」と呼ばれるものを搭載している。強烈な横Gに耐えるべくドライサンプ式となったLT2エンジンは、オイルポンプは従来の1つから3つになり、リザーバータンクはエンジン一体型となった。また、オイルパンの容量も減らすことができ、エンジンの搭載位置はC7よりも2.5㎝下げられているという。そのほかオイルクーラーの高効率化が図られ、従来よりも25%冷却性能を上げている。整備性も考慮されており、イタリアのミドシップのような頻度でエンジンを下ろす必要はない、と言われている。

ついにミドシップとなったが、コルベットの開発の歴史においてこのエンジン搭載位置は1970年からあったもの。完全に熟成された6.2LのV8NAエンジンを縦置きにしている。エンジンサウンドは初爆以外はマイルドだ。

ゆっくり発進させると、さながら高級車のようなしっとり滑らかな乗り心地と、コルベットらしからぬ静けさに拍子抜けするほど。フロントタイヤの位置がステアリングを握るドライバーにグッと近づいたからか、操舵に対するボディの反応がとにかくダイレクトでどんな速度域でもコンパクトな雰囲気を感じさせる。車速感応式電動パワーステアリングは最近の車としては当たり前の装備だが、ステアリングインフォメーションが至極ナチュラルで路面状況が文字通り、手に取るように伝わってくる。



センターコンソールが大きく迫り出し、正にコクピットの様相。コルベットとしては初の右ハンドル仕様となるが、ペダルレイアウトはまったく違和感がなく操作でストレスを感じることはまったくない。

コンソール左部にはエアコンコントロールのスイッチ類が一列に並ぶ。クライメイトは左右別々に調整が可能で、シートヒーター&クーラーも装備されている。


右ハンドル仕様とて、ペダルレイアウトやシートポジションに文句のつけどころはない。アクセルペダルを踏み込むと、すぐにキックダウンするが変速ショックらしいものは皆無。そして、アクセルペダルを踏み込んだ量だけ加速する様は、自然吸気ならではのリニアさでとにかく気持ちが良い。さっきまでの静けさが嘘のようにコルベットならではの図太い和音が、エキゾーストのフラップ開閉によるボリュームアップしてドラマチックだ。しかも驚くなかれ、自然吸気エンジンで0→100km/h加速は2.9秒と正真正銘のスーパーカー性能が与えられている。



どんな速度域でも地面を鷲掴みしているかのようなグリップ力には、ただただ安心感しかない。車検証上の重量配分は39:61だが、フロントのグリップに不安を覚える場面は皆無。コーナリングにおいてもリアヘビーのはずなのに、そんなことは微塵も感じさせない一体感で駆け抜けていく。試乗途中、一時的な集中豪雨に見舞われたが、ドライの状況と同じく不安を覚えることはなかった。もはや、サーキットに連れ出さないと新型コルベットの真価は測れないほどの高性能マシンに仕上がっている。



C8はミドシップの常である後方視界の悪さを補うべく、バックミラーには高精細カメラによるマルチビューシステムが標準装備されているが、慣れるまでは多少の違和感が伴う。また、ドアミラーのステーは助手席側をやや長くすることでドライバーの左後ろ側の視認性を高める工夫がなされているが・・・、車線変更には気を遣う。

大きなリアウインドウ上部に設置されたバックカメラ。バックミラーは通常の仕様とカメラ使用が選べるようになっており、天候や明暗度で使い分ける。左右斜め後方視界が極端に見えづらい以外、問題はない。

情報通の読者ならばアメリカのC8のエントリーモデル、LT1が6万ドルであることをご存じかもしれない。日本に導入されるエントリーモデルはオプション装備が満載されたLT2ゆえに、1180万円という新車時価格でも破格であることを強調しておきたい。日本仕様は「Z51パッケージ」を標準装備する。これはサーキット走行も考慮した専用ブレンボ製ブレーキ、パフォーマンス・エキゾースト、専用リア・アクスル・レシオ、電子制御LSD、前後スポイラー、ミシュラン製パイロットスポーツ4S(フロント245/35ZR19、リア305/30ZR20)、専用の強化クーリング・システムを搭載したもの。ドライバーのハンドル操作、ブレーキ操作をセンサーで感知し、ダンパーのコイルに電気信号を送って磁力を変化させオイルの粘度を1/1000秒単位で切り替える「マグネティック・セレクティブ・ライド・コントロール」、BOSE製14スピーカーの高級オーディオも標準装備している。歴代コルベットがそうであったように、C8も性能、装備、質感を踏まえると抜群のコストパフォーマンスを誇っている。ミドシップになったことによりイタリアン・スーパーカーと比較すれば、なおさら、だ。

クーペモデルにはLT2のほかLT3(1400万円)と呼ばれる上級グレードが設定される。ハードウェアに違いは一切なく、ランバーサポートの効いたスポーツシート、インテリアにおけるカーボンパネルの装着、カーボン製タルガルーフ、LT2と同サイズながら凝ったデザインのアルミホイール、段差でフロントを擦らないようノーズリフター機能などが備わる。なお、タルガトップの着脱はマニュアル操作だが一人でも容易だし、無駄に油圧機構を備えず重量増加を避けられるので個人的には良いと思う。


伝統のBOSE製14スピーカーパフォーマンスシリーズサウンドシステムを搭載。タルガ仕様でもボディ剛性は非常に高く、このオーディオシステムの実力をしっかりと堪能することができる。

3LTのホイールとキャリパー。装着されるタイヤは、ミシュラン「パイロットスポーツ4S」で、サイズはフロントが245/35ZR19、リヤが305/30ZR20となっている。


タルガトップは軽量に作られており、慣れれば一人で取り外すことができる。リアトランクに専用ラッチが設けられており、グイっと押し込むことで簡単に固定できる。ルーフを仕舞わなければ小型ゴルフバッグの収納は可能。

タルガトップの取り外しはフロントウインドウ上部の二つのレバーと、リア側一つのレバーで脱着可能だ。ハザードランプはバックミラー上部に設けられており、ドライブ当初は位置を探してしまった。

面白いもので新型コルベットのフロントエンドをじっくり眺めると、C7の進化系であることが伺える。リアのテールランプはカマロのようでもあるが、Cピラー周りからリアデッキにかけての“絞り込まれた”ボディラインはC2のリアウィンドウ周りを彷彿とさせる。また、リアのエンジンフード上部には「スティングレイ(アカエイ)」のオーナメントが配されている。日本では単に「コルベット」として販売されるが、アメリカでは「コルベット・スティングレイ」が正式名称として用いられている。ミドシップになったことで新型コルベットは過去と決別をしていているようで、随所に歴代コルベットを感じさせる工夫が凝らされている。従前のコルベット・オーナーにもしっかり媚を売っている、とは言いすぎだろうか?結局は新しい購買層にも、従前のコルベット・オーナーにもアピールする欲張りな一台に仕上がっている。かくいう私はコルベットを購入したことがない新しい購買層になるだろうが、ガッチリとハートを掴まれた・・・。特にカーボン装飾やノーズリフターには興味はなく、ハードウェアの差がないのであれば、個人的にはLT2で十二分に満足できる。

フロントにも十分なラゲージスペースが用意されている。イメージ的にはフルフェイスヘルメットとレーシングスーツなどを載せてジェントルメンドライバーを気取りたいところだ。

リアウインドウ後部センターに用意された細長い「エイ」のエンブレム。この新型はスティングレー(エイ)をモデル名に与えなかったが、こういったところに名残があってユニークだ。

タン革のシートとオプション特別色のゼウスブロンズメタリックの組み合わせは実に上品で、明るいボディカラーと比べると、まったく別の車のように映る。8インチタッチスクリーンパネルは、各種デジタルデバイスとリンクできる。


今秋登場すると言われている「Z06」はクランクシャフトをレースモデルである「C8R」譲りのフラットプレーンにする、と噂されている。既にシボレーの公式YouTubeアカウントでエンジン音だけが公開されているが、驚くほど高回転型エンジンになることは誰の「耳」にも明らか。コルベットによるスーパーカー界への殴り込みは、まだまだ始まったばかり、ということだろう。




文:古賀 貴司(自動車王国) 写真:尾形 和美
Words:Takashi KOGA (carkingdom) Photography:Kazumi OGATA

文:古賀 貴司(自動車王国) 写真:尾形 和美 Words: Takashi KOGA (carkingdom) Photography: Kazumi OGATA

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