栄光の歴史を辿って|一度は訪れたい、ル・マン博物館

燃費のスペシャリストとして他を凌駕したパナールが名車の数々と共に称えられている。(Octane UK)

オープンから30年、サーキット入口に集められた150台のまばゆいコレクションをたどれば、栄光の歴史を体験できる。


ある年齢以上の人は、古きよき時代のル・マンをふり返ると笑顔になるだろう。といっても、ドライバーがマシンに駆け寄り、ドアを跳ね上げて走り出した時代ではなく、1960年代以降の話だ。マトラの高音とシボレー・コルベットの轟きがコントラストを成していた時代である。そのあとには、ロータリーエンジンのマツダが甲高く叫ぶ787Bで勝利をつかみ、喝采を浴びた。観客は、マシンが通過するときに口を開けると耳が痛くならないことを学んだものだ。圧巻のアストンマーティン・ニムロッドがたてる地面を震わす轟音も忘れられない。広大な出店村ができ、レースの間ずっと営業している広い遊園地もあった。そんな中でひときわ目を引く不気味なたたずまいの納屋が、ル・マン博物館だった。

今では、博物館はサーキット入口の明るい現代的な建物に移り、レースにも負けない“必見”の内容となっている。オープンは1991年で、収蔵する150台を二つに分けて展示している。サーキットとゆかりのあるレーシングカーと、その多くが自動車史に重要な地位を占める主にフランスの車両だ。また、エットーレ・ブガッティから、デレック・ベルやトム・クリステンセンまで、ル・マンの名声を高めた重要人物も取り上げている。

コレクションの最初を飾るのは、レオン・ボレーが造った2台目の車だ。1887年にル・マンで製造されたもので、一緒に展示されている他のボレーもすべて興味深い。フランス自動車史の展示をたどっていくと、よく知られた数多くのメーカーに加えて、コーレやサイガといった馴染みの薄いメーカーもある。ベントレーやロールス・ロイスと並ぶのは、後輪がキャタピラになった1920年代のシトロエン・ケグレスだ。その多くが、世界で最も人を寄せつけない場所を、たった30bhpで走破した。

ル・マン市で造られた1887年レオン・ボレー。

同様に個性的なのが、ガスタービンを動力とした流線型のソセマ・グレゴワールや、ロータリーエンジンのシトロエンなど、代替動力の車両だ。レーシングカーのエリアに進むと、見事なコレクションに想像が掻き立てられる。ルノー4CVを見れば、性能指数賞や熱効率指数賞の時代へと心が飛ぶ。これらは燃費に優れた小型車のエントリーを奨励するためだった。その流れを加速させたのが、空力効率に優れたDBパナールだ。あらゆる形と大きさのポルシェも揃っている。ジャガーやアルピーヌ、クラージュ、ロンドーといったル・マンの巨星も、興味深い現代のマシンと並ぶ。

1971年ル・マンではリタイアしたポルシェ917 L。

レーシングカーのホールを抜けると、世界一周をした有名なシトロエン2CVが待っている。チリの僻地を走行中のこと。ギアボックスのオイルが漏れて空になっているのにクルーは気がついた。そこへひとりの住民が通りかかり、ギアボックスを調べると、バナナを何本かむいて、それを押し込んだという。こんな一時しのぎで、数百kmも走り切ったのだ。ほかにも、1923年のルノーの消防車や、小舟のようなマホガニー製のブガッティ・タイプ30など、コレクションはさらに続く。見事な二輪の数々もあり、映像も流れ続けているので、家族で一緒に楽しめる。素敵なカフェやギフトショップについてはいうまでもない。サーキットを歩いて巡るツアーもある。

サーキットを離れて、ル・マンの市街ですごすのも素晴らしい。立派な大聖堂や中世の趣が残る旧市街は、1日を費やす価値がある。1日といわず1週間滞在すれば、車検やドライバーズパレード、夜間の練習走行が見られる。ミュルザンヌ・ストレートをはじめとするサーキットの公道部分を走行してもいい。ツアーを主催する旅行会社で、自分に合った旅程を組んでもらうのがいいだろう。

ル・マン24時間レース博物館
9 Place Luigi Chinetti 72100, Le Mans
時間:10時~18時(10月1日~4月30日)/10時~19時(5月1日~9月30日)
料金:大人9.50ユーロ、子ども7ユーロ(10~18歳、10歳未満は無料)


編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Transcreation:Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) Translation:Megumi KINOSHITA

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Transcreation:Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) Translation:Megumi KINOSHITA

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