幻の「5台目」が完成、その真価は?|フェラーリ330LMBプロジェクト【後編】

Photography:Sam Chick, Tim Scott, Scott Pattenden

この記事は「レプリカではない、幻の「5台目」を創り出す|フェラーリ330LMBプロジェクト【前編】」の続きです。


高い完成度


今のところ、LMBはドレスアップしても出掛ける先がない状況だ。しかし近い将来、世界がかつての日常を少しでも取り戻したら、それも変わるだろう。今は私たちの言葉を信じていただくしかないが、まさにセンセーショナルな完成度だ。LMBはその美しさにおいて見過ごされてきた傑作だと私は思うが、外観だけでは、本物でないとは誰にも分からないだろう。ただし、1960年代のファクトリーの粗さはなく、仕上げやパネルギャップの品質は非の打ちどころがない。真紅のボディに真っ白なラウンデルも見る者を欺いている。そこからはレースを連想するが、車内の滑らかなコーデュロイやキルティングレザーが訴えてくるのは別のストーリーだ。ここにも紆余曲折があった。シートのコーデュロイは、最初はGTO風のブルーだったが、元バルディノン・コレクションのシャシーナンバー4725 SAに触れたことで、黒のコーデュロイにレザーのボルスターとする可能性が浮上した。コンペティション仕様のルッソと同じだ。本物のLMBも2座だったが、カーペットなどの洒落た装備は一切なかった。

特徴的なリアエンド。

居心地のよさそうな洗練されたインテリア。

速度計はないものの、レブカウンターの6000rpm(最高7500rpmという)が秘めた力を示しており、他のメーターも多い。こうした計器類は声高に「レーシングカー」と訴えてくるが、インテリアの全体的な印象が発する「GT」の声はさらに大きい。シートは私よりずっと長身のドライバーに合わせて固定され、ステアリングコラムは延長されているし、ドアにも肘を邪魔する余分なものはないけれど、十分に快適だ。

伊東和彦 (Mobi-curators Labo.)  原文翻訳:木下 恵

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