トップスピードだけの時代は終わった。コンセプトカーのブガッティ ボリードが量産化へ。

The Quailのほかペブルビーチにも展示されたブガッティ ボリード(Photography: Hirokazu ISHIWATA)

まごうことなき本物。パワー、軽さ、加速の真骨頂ともいえる究極のドライビングマシン。ブガッティが2020年秋にテクノロジーコンセプト「ボリード」を発表したとき、当初は走行可能な実験車両、つまりワンオフだった。しかし今回、ブガッティは、カリフォルニア州で開催されたモータースポーツイベント「The Quail」において、ボリードを少数生産モデルとして発表した。



ブガッティの社長であるステファン・ヴィンケルマンはこう述べている。「昨年、ボリードは非常に多くの熱狂と興味を呼びました。その発表後、多くの愛好家やコレクターの方々から、実験的なボリードを市販車として開発してほしいという要望をいただきました。世界中のお客様から寄せられた反応やフィードバックには本当に驚かされました。そこで、40人のお客様にこの素晴らしい車を体験していただくために、ボリードを少数生産することにしました。私たちのチームは現在、サーキット用の究極のドライビングマシンであるプロダクションモデルの開発を進めています」

これにより、ボリードは伝説的な8.0リッターW16エンジンを持つマシンのなかで最も“尖った”存在となり、ブガッティのコレクターにとっては必須のアイテムとなる。

2020年秋に行われた思考実験で、ブガッティは次のような質問に答えた。「もしブガッティが、伝説の8.0リッターW16エンジンを中心にした根本的に軽い車を作ったらどうなるか?」



結果として市販のW16エンジンを搭載し、最大のダウンフォースを考慮して設計された最小限のボディワークを持つ、レーストラック指向のハイパースポーツカーとして、ブガッティ ボリードを実験的に研究することになったのだ。このエンジンを純粋な形で提示することが、ボリードの真骨頂なのである。

パワートレインを中心としたボリードの開発

ブガッティのエンジニアとデザイナーは、限定生産のボリードにおいて、4つのターボチャージャーを備えたW16エンジンの強力なパワートレインを中心に、これまでにない極限の車両コンセプトを作り上げ、究極のブガッティ・パフォーマンス・キックを作り上げることを約束した。ブガッティ・デザイン・ディレクターのアヒム・アンシャイトは、「ボリードという過激な思考実験を市販車として実現できることは、私の17年のブガッティキャリアの中で最も困難なプロジェクトであり、夢のようでもあります」と説明している。



ボリードのデザインは、ブガッティのスタイル哲学である「form follows performance」のミニマルなアプローチを踏襲し、さらに妥協のない軽量構造のアプローチを採用している。このデザインは、1920年代のブガッティの輝かしいモータースポーツの歴史に敬意を表したものだ。

多数のエアダクトと繊細なフロントエンドは、ハイパースポーツカーというよりも、空力的に洗練されたF1マシンを彷彿とさせ、その外観を印象づけている。またボリードの車高は非常に低く、ルーフにはエアインテークスクープが設けられ、超スポーティなシートポジションが採用されている。そして印象的なリアディフューザーとの組み合わせにより、圧倒的なリアウィングが高いダウンフォースをもたらし、最適なトラクションを実現している。他のブガッティの車と同様、デザインチームはカラースプリットを選択したが、ビジブルカーボンパーツの割合は他のモデルよりも多くなっている。



ブガッティは技術革新の象徴だ。ブガッティの技術の象徴であるW16エンジンは、自動車の歴史の中で最も優れたエンジンのひとつである。実験車両「ボリード」の1,850PSという出力は、110オクタンのレース用燃料によって達成されているが、市販車では世界中で入手可能な98RONのガスを使用しているため、オーナーは世界中で問題なく車を使用することができるという。最高出力は1,600PS、最大トルクは1,600N・m(2,250rpm)だ。ブガッティのエンジニアは、サーキットで使用するために毎分の回転数が高くなるようにチューニングし、吸排気システムと合わせて、より速く、より自然に、より過激に反応することを実現した。また、ターボチャージャー、エンジン、トランスミッション、ディファレンシャルの冷却システムも、最適なパワー開発のために改良されている。

FIAのルールに沿った安全基準

ブガッティのデザイナーとエンジニアは現在、エアロダイナミクスとハンドリングに磨きをかけ、FIAの国際安全基準に沿ってボライドを開発している。純粋なドライビング体験において最大限の安全性と十分な快適性を保証するために、ブガッティは一連の新しいコンポーネントを開発した。安全面では、HANSシステムへの対応、自動消火システム、燃料ブラダーを用いた圧力式給油、セントラル・ホイール・ロック、6点式安全ベルトシステムなどを採用している。

デザイン、空力、品質、安全性の各分野での最適化により、量産車の車重は1,450kgとなり、98RONガス使用時の重量出力比は0.9kg/PSとなっている。



「私たちはお客様の安全を第一に考えています。お客様の安全を第一に考え、常に安全な環境を確保し、ボリードの息を呑むようなパフォーマンスを徐々にご紹介していくために、このエクストリームな車両のための特別なサーキット走行を提供することにしました」とステファン・ヴィンケルマンはコメントした。「最大限に軽量化されたことで、お客様はエンジンのパワーとトルクをフルに体感することができ、それを気に入っていただけるでしょう。デザイン、品質、車両の安全性を向上させながら、視覚的にも技術的にも、市販車を技術実証車に近づけることに成功したことを誇りに思います」とも付け加えている。



この新型ハイパーカーは2024年に納車される予定だ。価格は400万ユーロ(約5億1700万円)、40台限定の生産となる。


オクタン日本版編集部

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