BENTLEY BENTAYGA FALCONRY by MULLINER

鷹狩りは紀元前からユーラシア大陸とその周辺に広く伝播し、もっとも洗練された狩猟形態のひとつとして知られていた。ベントレーとマリナーはその高貴な伝統を、今も自家薬籠中のものとしている。

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狩猟は文明が発達して以来、人類が採集生活の手段として腹を満たすために行うのではなく、支配者や貴族の遊びであり軍事教練でもあった。街を離れ平時のカントリーサイドにて、昔も今も行われているそうした狩りは、必ずしも獲物を狩って食することが目的ではない。それは、狩るために必要な装備を用意し、訓練された人員を配し、機先を制して指示を飛ばし、野を駆け、然るべき瞬間に確実に行為を完遂するという、判断力や統率力を磨くための演習でもあった。

鷹狩りは、獲物となるような山鳥や小動物が豊富にいた古代中央アジア、ステップ草原で始まり、日本や欧州にも紀元後まもなく伝わっていったといわれる。鳥という自由な生物の中でもっとも強い猛禽類を、意のままに操って獲物となる鳥や地上の動物を捕えるという、そのノウハウは、狩猟術の中でもっとも高貴なものに列せられる。

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ベントレーが今、砂漠というフィールドに「ベンテイガ・ファルコニーbyマリナー」、いわば鷹狩りのためのスペシャルなSUVを送り出した理由は、そこにある。現在、アブダビやドバイなど、鷹狩のノウハウはアラブ首長国連邦において積極的に、保存と実践が試みられているのだ。

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まず目を引くのは、グローブボックス上の嵌木細工だ。430ピースもの木片を用いて砂漠の上を翔けるセーカーハヤブサ(中東で鷹狩りに使われる)の意匠があしらわれる。だが、その特別な誂えは決して装飾的な部分だけに終わらない。

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トランクルームには大小のユニットに分けて、マスター・フライト・ステーションとリフレッシュメント・ケースが置かれる。いずれも表面はコルクで覆われ、前者を開くと猛禽を見失わないためのGPS追跡装置や双眼鏡、休める時に目に被せるカバーや、その爪から腕を護るためのグローブなど、必要なエキップメント一式が無駄なく収められる。また後者はメタル製水筒&カップ、ブランケットやタオルなど休憩用の道具を収納できる。

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ちなみに快適装備は人間だけでなく、時には1羽100万ドル以上で取引されるという、セーカーハヤブサにも用意される。マスター・フライト・ステーションの脇には、止まり木2本がコルク張りのケースに収納されており、トランクのゲート下部近くには止まり木を立てるための穴がある。さらにセンターアームレスト後端には、走行中に猛禽の特等席となる着脱可能式の止まり木と係留用のフックが設けられている。かくしてセーカーハヤブサは、トランクハッチの下やキャビン内で、砂漠の直射日光を避けて休むことができるのだ。

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純粋な目的を持つ道具特有の美しさ、ワンオフならではの優雅さを、かくも見事に表現したSUVが果たして、地上に存在しただろうか? 図らずとも二度見させられる一台だ。

文:南陽一浩 Words : Kazuhiro NANYO

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