まだまだ現役!キューバの街を彩る「アウトウニオン」愛好家を訪ねる旅

Photography:Matthew Howell



ヒストリックカーがあふれるキューバで⋯


現在では多くの信頼に足るモダンな車の姿も街にはあるが、シートベルトやワイパーが外されたミニバスを借りたこともあるし、漏れ出した燃料ホースから軽油の臭気がしていたこともあった。たとえばフェンベルトが切れてレッカーされてしまっても、そんなことはどうでもよくなってしまう。しかし、ここではそれが当たり前なのだ。生活はゆったりとしていて、車は穴が開いた舗装路をゆっくりと走り、歩行者は気ままに道路を横切っていく。車が近づきすぎたときには、注意喚起の意味でヤジが飛んでくることは多いが、あくまでも友好的な意味合いとして捉えられるものだ。ときには、過積載のトラックやスクーターの家族を見かけるが、モロッコやインドのような狂気じみた雰囲気は感じられない。ハバナでの運転はローマ、パリ、ロンドンなど、ヨーロッパのノンストップな都市に比べると、はるかに安全なものであると感じる。



ほとんどの人たちは非常に愛らしい雰囲気を持っており、エドゥアルドとオルランドが整備士の友人の家に案内してくれて、そこでゴンサロ・メンデスをはじめとする他のオーナーたちに会った。彼はキューバの地方の美しさについて楽しそうに話してくれて、彼自身の国であるキューバについてどう思うか、また戻ってくるかと何度も尋ねてきた。それに対して、私たちは必ず戻りたいと約束した。



一行はエドゥアルドの壊れたエンジンの点検に取り掛かったが、談笑や喫煙が多く、すぐに修理を終えそうな様子はなかった。後からレストランで全員と合流することにして、ここは彼らに任せることにした。



これはキューバ車の世界においては歴史的な夜になるだろう。私たちは時間通りに到着し、2ストローク独特の弾けるような、楽しげな音が再び聴こえるときを、首を長くして待った。希少なCCV、DKWムンガがヘッドガスケットを吹き抜いて立ち往生しているという悲しいニュースもあったものの、ここでは時間はより柔軟なようで、ようやくちらほらとオーナーたちが到着し始めた。

食事がはじまると、アウディ・トラディションから書籍や盾、ヘリテージ証明書などが贈呈され、オーナーたちは興奮と感謝の気持ちを込めて、インフォーマルなスピーチに興じた。その中で、「キューバにDKWがあるということはヒロイックだ」そして「キューバのアウディは私たちの文化の一部だ」、この二つの言葉が私の心に残った。彼らは必要に迫られて乗っていることは間違いないだろうが、車への愛情は実に深いのである。

編集翻訳:伊東和彦 (Mobi-curators Labo.)  原文翻訳:オクタン日本版編集部

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