ボロボロのジャガーXK140には、66年間のドラマがあった

Bonhams

10月31日開催のボナムス社主催のオークションに出品されるジャガーXK140は、あまりにボロボロで錆だらけの状態だが、推定落札価格は24万ドル(約2650万円)~36万ドル(約3975万円)と、大変高い評価を受けている。そこには、このXK140が歩んできた66年間のドラマが存在していた。





ジャガー XK140は、最高のシャシーと最高のエンジンを搭載していたにもかかわらず、1954年に登場したときにはすでにやや時代遅れの感があった。XK140のボディは、当時のジャガートップであるウィリアム(後のサー・ウィリアム)・ライオンズが1948年にデザインした先代のXK120の全体的な外観を基本的にそのまま受け継いでいた。ライオンズはヨーロッパの優れたデザインに精通しており、その影響はXK120を見れば明らかだ。しかし、XK140が登場する頃にはもう世界は進歩しており、6年前のデザインと揶揄されるまであった。



XK140の中でも特に有名なのが、トリノのカロッツェリア・ギア社が手がけた4台のXK140だ。当時ギア社は、ジョヴァンニ・サヴォヌッツィがデザインした有名な「スーパーソニック」と呼ばれるXK120をすでに3台完成させていた。ギア社のXK140は、4台ともほぼ同じデザインのクローズドクーペで、シャシー番号はS810827DN、S814937DN、814942、S815404だった。



これら4台のXK140のボディは、手作りのワンオフモデルによく見られるようにすべてアルミニウムで作られており、スチールボディの市販車と比較して100kg(220ポンド)の軽量化を実現した。出品されたこの個体は、リヨンの実業家であるハンス・アルトウェグ氏が、特注のボディを作るために中古で購入したものだった。アルトウェグ氏は、1955年12月12日にロイヤル・エリゼ(シャルル・ドラクロワ)からこの車を購入し、XK140はすぐにトリノのギア社に送られ、そこから1956年10月のパリモーターショーに出展するのに間に合うように戻ってきた。それに先立つ1956年8月、アルトウェグ夫妻はカンヌで開催されたコンクール・デレガンスにギアボディのXK140を出品している。写真にはフロントグリルの形状の違いが写っているが、これはこの2つのイベントの間にギアが変更したものと思われる。



ジャガーXK140/150に関する決定版『Jaguar XK140/150 in Detail』の中で、アンダース・ディトルフ・クラウザーガー氏は「810827DN」について次のように述べている。「1959年に事故に遭った後、ギア社によってフロントエンドがモディファイドされ、フロントウイングにエアベントが追加されたが、ボンネット上のエアインテークと同じレジストレーションマーク(「7434 AN 69」)は維持されていた」



この改造は、1969年7月17日に発行されたフランスのCarte Griseに記載されているリヨン在住のジャン・ルイ・ベルテロット・マリアット氏の指示によって行われたと考えられている。マリアット氏は、この車をラリーやヒルクライムで走れるものにしたいと考えていたようだ。最終的にXK140は、フランスの著名なジャガー歴史家であり、フランスジャガードライバーズクラブの創設者である、故ローランド・アーバン氏のプライベートコレクションとなった。アーバン氏は、特別なジャガーや珍しいジャガー、特にそのコーチビルダーに常に魅了されていたため、このギアボディのXK140を所有したいと考えていた。



1969年にこの車を購入したローランド・アーバン氏は、3.8リッターのジャガーXKエンジンを搭載し、トリプル ツインチョーク ウェーバー キャブレターを装着した。その後10年間、彼はこのジャガーで多くのヒストリックラリーやレースに参加している。



アルミ製ボディによる軽量化とパワフルな3.8リッターエンジンの組み合わせにより、XK140は非常に高いパフォーマンスを誇り、ローランド・アーバンはモンツァのような高速サーキットでのレースで、フェラーリ250TDFを破って優勝したこともあった。



ローランド・アーバンは、このジャガーを長年にわたってほぼ毎日使用した後、1979年から自宅のガレージに保管していた。1976年にはXK Bulletinの表紙を飾り、「ディスクブレーキとトリプルウェーバーのDヘッドを装備」と紹介された。



現在はレストアが必要な状態ではあるが、この歴史あるXK140は、ジャガー愛好家にとってはコレクションを充実させる垂涎の逸品となっている。



画像ギャラリー【全40点】には、現在のみならずこのXK140の昔の写真も多く掲載している。気になる方は是非チェックしてほしい。

オクタン日本版編集部

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