最後の純粋なイタリアメイド|ランボルギーニ プレグンタ・スピードスターを試す【後編】

Photography:Max Serra

この記事は「20世紀最後の“やりすぎた”ワンオフカー|ランボルギーニ プレグンタ・スピードスター【前編】」の続きです。


その後のプレグンタ

 
誕生から23年を経ても、いまなおプレグンタは見る者を圧倒する。スペイン語で「質問」を意味するプレグンタは、まさにユーリエの「挑発的なスタイリング」を体現するモデルだ。内装は戦闘機のコックピットを連想させ、車高がわずか1.1mであるため、フロントガラスは水平に近い角度で寝そべっている。ボディパネルは樹脂コンポジットで、2分割式のタルガトップはポリカーボネート製だが、パネルが取り付けられることは希だ。


 
プレグンタには航空宇宙とF1技術が取り入れられた。ダッソー・ラファール戦闘機に用いられたステルス外板塗装、ダイナミック・エアインテーク、F1タイプのマレリ社製完全電子式計器類、シュロス製の4点式セーフティー・ハーネス、内蔵型光ファイバー照明(DGA)、ミラーに代わるリアビュー・カメラ、CDIクリスティンGPSシステム、戦闘機の形をしたモールド・イン・シートなどだ。

マグネティ・マレリ社製の計器類はF1マシン用で、ステアリング・コラムは見たこともないような太さだ。

シュロス社製ハーネスを構造体に組み込んだシートは、まるで戦闘機のようだ。
 
標準的なディアブロからの唯一の大きな技術的変更点は、ラジエターの位置がリアからフロントに変更され、そのエアインテークがワイドスポイラーによって強調されている点である。サイドに設けられたエアスクープがフレッシュエアを吸い込み、523bhpを発揮するV12エンジンに供給する。トランスミッションはディアブロの5段マニュアルを用い、最高速度は333km/hに達する。


 
1999年3月のジュネーヴ・ショーでは、プレグンタは再びユーリエ社のブースで展示され、その後、軍事基地でダッソー・ラファール戦闘機を追走するシーンを撮影するなど、宣伝活動に用いられ、最終的に製作者のもとに納められた。

現在のプレグンタ


「2006年に、プレグンタが売りに出されるかもしれないという話を聞きました」と、ミシェル・レヴィは振り返る。

「10代の頃から好きだったランボルギーニのコレクション、20台を完成させるために、ユーリエス・トリノから直接購入したのです。フェラーリもいい車でしたが、ランボルギーニは宇宙船のような車でした。建築家である兄が仕事を始めてから、1970年代の終わりに、安くなっていたこれらの車を買うようになりました」

「私たちにとって、プレグンタは最後の純粋なイタリア製ランボルギーニであるディアブロを元に製作された車で、ランボルギーニの伝統である“究極のワンオフカー”の最後の1台なのです。細部に至るまで完全なオリジナルです。しっかりと整備をおこない、使用可能な状態に戻しました」





「納車されて間もない時のドライブは特に思い出深いものです。パリで外出した際、警察に止められました。ホモロゲーションを取得していないユニークなランボルギーニに乗っていたので、書類に何か問題があるのではないかと心配しましたが、警察官は単にこの車に興味があり、写真を撮りたいと言われただけでした」

「スパ・フランコルシャンでのトラックデイに参加した時は、200km/hを簡単に超えることができました」
 
ランボルギーニ本社に持ち込まれたプレグンタは、整備を受けるだけでなく、ポロ・ストリコからの認定を受けていた。


 
今回、私にはドライブする機会が与えられた。プレグンタは運転しやすく、ディアブロを軽くしたような感じがした。前方と側方の視界はディアブロよりも良好だが、後方視界はそれほど良好とは言えない。リア・ビュー・カメラはモノクロで映像も粗いが、23年前の製品だからしかたがないだろう。
 
ドライビングポジションにはそれほど違和感はないが、身長が180cm以上の人は、頭がフロントガラスからはみ出してしまう。どのスピード域でも、V12は恐ろしいほどの雄叫びをあげ、コンポジット製ボディが発する雑音をかき消してくれる。結局のところ、23年前に造られた車に使われた複合素材やほかのワンオフ部品は、それほど長い寿命を持つとは思えない。
 
数多くのランボルギーニが展示されているサンタアガタ・ボロネーゼでさえも、戦闘機のような外観を持つプレグンタは際立って見える。高い速度で走行ができる性能を持ちながら、都市部でもオーバーヒートすることはないプレグンタは、特別な存在だ。アウディ傘下に入る以前のランボルギーニにとって、最後の作品といえよう。まさに一時代の終わりを告げる存在がプレグンタである。



ランボルギーニ プレグンタ・スピードスター

エンジン:5707cc 60度V12、DOHC、電子制御式マルチポイント燃料噴射およびエンジンマネー
ジメントシステム、ミドシップ
最高出力:523bhp/7100rpm
最大トルク: 446lb-ft/5500rpm
トランスミッション:5段MT、後輪駆動
ステアリング:ラック&ピニオン、パワーアシスト
サスペンション(前/後):ダブルウィッシュボーン、コイルスプリング、テレスコピックダ
ンパー
ブレーキ:ベンチレーテッドディスク
性能:最高速度 208mph、0-62mph 3.9sec.

編集翻訳:伊東和彦 (Mobi-curators Labo.)  原文翻訳:オクタン日本版編集部
Words:Massimo Delbò Photography:Max Serra

編集翻訳:伊東和彦 (Mobi-curators Labo.)  原文翻訳:オクタン日本版編集部

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