色濃く残る昭和の香り。2台のメグロで都内を流す!

Photography: Tomonari SAKURAI

フランスを離れ日本滞在中に恋しくなるものはチーズとエスプレッソ。そしてバイクだ。保険や車検のこともあり、「ちょっと実家に置いておく」というのは現実的ではない。それでも今ならバイクのレンタルなんていうのもある。そこで今回の帰国に際してはヘルメットやグローブ、ブーツをスーツケースに詰め込んできた。

今回初めてレンタルバイクを利用。実に20年ぶりに日本の道をバイクで走ることになった。レンタルしたのはカワサキのメグロ。限定車でないにしろ初期生産台数は終了しており実質入手不可能なレアバイクだ。実際受付中にW800を予約していた人がメグロ狙いだったが一足違いで逃したのだと悔しそうに話してくれた。今回メグロを選んだもうひとつの理由がある。友人のM氏がメグロオーナーでこの希少車がゆえに他に走っているのを見たことがなく、2台で走る機会なんて滅多にないからというものだ。

メグロのワークスをモチーフとしたエンブレムは職人の手による5色塗りでひとつひとつ制作されているという凝りよう。

2台のメグロが並ぶことは非常に希。一台は僕のレンタルとは言え、現在希少車なのにこれがレンタルできるのも凄い。


この日は9月の3連休の最終日。渋滞が予想されるということで都内を流す程度で我慢した。僕が驚いたのはすり抜けをするバイクがいないこと。20年前はバイク便も多く、すり抜けは当然のことだったように記憶している。ちなみにフランスでは2車線の車の間をすり抜けるのが当然だし車もそれを見越してスペースを空けて走っている。それには理由がある。まだバイクレーンともいえるスペースが確立されていなかった時代に、それを確立させるためバイカーたちはスペースを譲らない車のミラーを壊して通過していったのだ。「避けないと車のミラーが壊される」という認識が広まり、バイカーたちは自らのスペースを切り開いていった。まさに革命の国フランスならではだ。

ややワイドで高い位置のハンドルバーと、ステップも前より。無理のないポジションで気軽に扱いやすい。

メーターには液晶パネルを配置し時間や走行距離が表示される。ETCが使えるのも21世紀のバイクだ。


メグロはカワサキのW800をベースにメグロブランドでドレスアップしたモデル。創業大正13年のメグロ。メグロ スタミナKPは1964年の東京オリンピックでは白バイ、先導車で活躍した。カワサキに吸収され消えていったブランドだ。それが令和になってカワサキから復活を遂げた。ベース車両は既存のW800であるもののタンクのメッキや塗装、何よりも職人の手によって作り込められたメグロのタンクバッジなどその意匠からカワサキの本気度が感じられるのだ。もちろん現代のバイクでABSやETCなども装備されて安心して楽しむことができる。

シリンダーがブラックなのは空冷ツインのシンボル的なカラーリング。そこにW800同様にべべルギアのチューブが主張する。ヘッドのギアの部分には赤いリングでメグロであることを主張する。


現代の基準だと静かな排気音かと思いきやエンジンを始動するとバーチカルツインらしい歯切れのあるサウンドにニヤリ。パワーを確保するために高回転型に味付けされててしまうことが多いが、こいつはドコドコと低回転でトルクで駆け出していく古き良き乗り味が残されている。かといって高回転を犠牲にしているわけではなくべべルギアでコントロールされるSOHC4バルブはストレスなくレッドゾーンに達する。

フロントはシングルディスクで制動に不安はない。

W800に比べやや高くワイドなハンドルは昭和なポジション。乗りやすく扱いやすい。ヴィンテージ感をしっかりと残し、最新のバイクとして安心して乗れるバイクに仕上がっている。変にトラクションコントロールやモード切替などは省き最低限安全に走れるABSなどを装備している。乗って、眺めて、磨いて、バイクの持つ楽しさを十二分に堪能できるメグロK3。初回のロットを逃した人も多いはず。カワサキがまたメグロの生産を再開することを心から願う。やっぱりバイクはメグロに限る。

もっとメグロを見たい方はこちらの画像ギャラリー【全12点】

写真・文:櫻井朋成 Photography and words: Tomonari SAKURAI

写真・文:櫻井朋成 Photography and words: Tomonari SAKURAI

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