北へ、南へ、シトロエン2CVと30年|第26回:2CVとの旅

photography : Yoshisuke Mayumi

北へ、南へ、なんて連載タイトルのわりには旅行ネタが少ないということにハタと気がついた。この1年半というもの、2CVで出かけたのは、北はせいぜい埼玉県まで、南というか西も含めてそっち方面は横浜市内からすら出ていない。

この連載の開始が2020年4月、つまりコロナ禍の真っ最中だったから、ということは言い訳で、実際のところコロナ以前からこの10年以上2CVで旅に出ていない。最近で一番遠くに出かけたのは2018年のフレンチブルーミーティング(FBM)だ。でもこれは旅とは言えない。



筆者が在籍していた頃の「じゃらん」編集部では「旅」という言葉を使うことは禁止とは言わないけれど、なるべく使わない方が良いとされていた。創刊前のアンケート調査で「あなたはこの1年間、旅行に何回行きましたか?」という問いに対しての答えが、たしか平均1回ちょっとという驚くほど少ない結果だったことが理由だ。質問を変えて「スキーに行きましたか?」「海水浴に行きましたか?」などと聞くと、みんな「行ったよ」と答える。

どうやら首都圏在住者にとって「旅行」や「旅」とは週末の1〜2泊程度の宿泊を伴ったレジャーではなく、少なくとも1週間程度の周遊ツアーや、北海道や沖縄など飛行機に乗っていくものを指しているらしい。だから1〜2泊程度の近場の旅行ニーズを拾いたかった「じゃらん」の特集は「貸し切り露天風呂へ行こう」とか「旬の美味しいものを食べに行こう」といった目的別のものが多くなった。

いまだに当時の感覚が残っている筆者は、片道300km以上、最低3泊以上を「旅」もしくは「グランドツーリング」と定義している。FBMが行われる車山までは片道200km程度、泊まるのも1泊だから「旅」ではないのだ。

それにしてもグランドツーリングとか書いてしまうあたり、いまだに筆者の思考回路が古の「NAVI」の影響から抜け出せていないことがわかる。徳大寺さんが巻頭エッセイを寄せていたNAVIの「ああ、人生グランドツーリング」特集は好きだったなぁ。

若い頃は2CVで片道300km&3泊以上の「旅」によく出かけた。北陸や東北をぐるっと回ったり、京都・大阪・神戸あたりを巡ってみたり。中でも一番思い出深いのは四国・九州・山陰を4泊5日で駆け抜けた一人旅だ。たしか1998年の夏の終わり頃だった。

四国・九州・山陰を選んだのは47都道府県で行ったことがないところを重点的に回るためだ。国内旅行雑誌の編集者たるもの47都道府県制覇をしなければならない、と勝手に思っていたからである。それとNAVIの特集を真似して四万十川の沈下橋で2CVの写真を撮ることも目的だったと正直に告白しよう。

初日は大阪の後輩の家に1泊して、2日目に明石海峡大橋から徳島に入り室戸岬で2泊目。3日目は高知市内を抜けて四万十川で念願の沈下橋と2CVを写真に収め、その日のうちに八幡浜からフェリーで九州に渡り別府で3泊目。4日目は博多にある九州じゃらんの編集部に顔を出した後、島根県の浜田まで走り4泊目。5日目は出雲大社と鳥取砂丘をかすめて帰路についた。東京に戻ったのはたしか翌朝の7時過ぎだったはずだ。ラジオから聞こえてきたジョン・カビラさんの「グッドモーニング、TOKYO!」というテンションの高い声が、徹夜で走って疲れ切ったアタマの中に響きわたったのを覚えている。



その時の写真は、編集部の一眼レフとポジフィルムで撮影していたこともあって手元に残っていない。本当に行ったのかと疑う人も身内を中心にいそうなので、翌年、東海じゃらんで書いた記事を証拠(?)として提出しよう。なお、連載タイトルが本連載と似ているのは著者が同じということでご容赦ください。

2CVは高速を100km/hで何時間も巡航してもタフなエンジンは音を上げないし、長い周期で揺れを吸収する足回りは快楽ですらある。しかし高速で吹き込む風と車内に満ち溢れる音は弱点だ。60~80km/hくらいで流すのがちょうどいい。もちろん季節は夏を避けるべきなのは言うまでもない。



ところで冒頭、車山で行われるFBMは「旅」ではないと書いたが、「ドライブ」としては最高の場所だ。特に霧ヶ峰から車山へ抜けるビーナスラインはお気に入りのドライブルートの一つである。

残念ながら今年もFBMは車山での実施は見送りとなってしまったが、昨年に続いてオンラインでの開催を予定している。日程は10月2日(土)15時スタートで3日(日)の15時まで。名古屋を中心に車山、東京、パリ、シンガポールなどにスタジオを設置し、豪華ゲストによるトークショーやライブなど内容は盛り沢山。特に3日13時過ぎからは2CV乗りにとって見逃せないプログラムもあるようですよ。以下のURLからぜひご参加を!

Youtube channel FBM :https://www.youtube.com/c/FBMonline
FBMについてはこちらから:https://www.frenchbluemeeting.com/

文・写真:馬弓良輔 Words & Photography: Yoshisuke MAYUMI

文・写真:馬弓良輔

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