秋の夜長のお供に、戦前のヴィンテージカメラを愛でる

Tomonari SAKURAI

パリに戻ると朝晩はもう10℃を切る。秋と言うより冬。日本を離れるころはまだ暑く、そのつもりでバイクに乗ったら完全に凍えました。さて、パリに戻って最初に立ち寄ったのが以前もご紹介したAntiq-Photo。戦前のカメラや映像機器を専門に扱うブティックだ。僕が日本にいる間に2年ぶりに開催されたヨーロッパ最大のヴィンテージカメラ市Foire internationale de la photo à Bièvresには行けなかったので、その様子を聞きに行ったのだ。結果から言うと、来場者数は少なかったものの売り上げは良かったと。ぶらっと来る冷やかしが減って、本当に欲しいというお客さんが残ったというところだろう。

何に使うのか想像も出来ないガゼットも。こちらで詳しく。

木と真鍮というだけでも美しい。ただの飾りではなくキチンと撮影可能だ。どんな絵が生まれるのか?

興味本位でフランス製の8X10の大型カメラを拝見する。19世紀のカメラだ。シャッターや絞りなどもない。ただ、木と真鍮が美しい。各メーカーで折り畳みかたが違ったり、もちろんその作りも違って面白い。俄然興味が湧いてきた。と、店内を見回すといつになく戦後のカメラが多く揃っている。その中でも雑誌やネットでしか見たことのないレアものもあった。

null8X10の大型カメラ。こんな風に映る。この大きさのフィルムを使うのだ。

ということで、今回はそれらを紹介したい。そのひとつがフランスのFOCA Universal RC。戦前、ドイツのライカに追いつけ追い越せと開発を進めていると大戦が始まりパリが陥落。ドイツの命令でFOCAでは宿敵ライカを含むドイツのカメラのパーツを作ることになる。それまでに開発した独自のカメラを隠して。

フランスのFOCA Universal RC。フランス海軍納品モデルである小さなプレードが付く。

戦後ドイツがパリを離れるといよいよFOCAは本格的なカメラ製造に乗り出す。戦中にその宿敵の下請けを受けたことで、ライカをライバル視する思いは強くなり、徹底的にライカと違うカメラを作ることにする。これでもかというほどライカのシステムを避けるような執念的な作りがFOCAだ。残念ながらライカを越すことは出来なかった。多分追いつきもしなかった。

ライカがダイヤルでフィルムを巻き上げていた時代にレバーで巻き上げるモデルをFOCAは作ってそれを継承している。

ただし、最後のモデルのUniversal RCはフランス海軍で採用された。このモデルは2000台程度しか製造されず、そしてここにあるのはその数少ないフランス海軍納入モデルなのだ。

FOCA Universal RCのキャリングバッグにも海軍と入っている。このケースには別に3本のレンズが入っている。

もう1台はフランス製で数が少ないもの。一つ目小僧と言われる独特なスタイルを持つAlsaphot Cyclope。中にミラーを二つ使ってフィルムに映像を送る独特のシステムを持つ。そんなものも今回見ることができた。

フランスの中型カメラALSAPHOT Le Cyclope。一つ目小僧。

僕は戦前の大型カメラはほとんど知識がなく、美しいとは思うもののそれ以上は何とも、というところだったが、今回は見覚えのあるモデルが結構合ったのでいつも以上にテンションが上がった。顧客のほとんどが博物館というちょっと変わったカメラ店だけあって、珍しさや、程度の良さもAnitiq-Photoならでは。サイトではコレクションが紹介されているので秋の夜長に眺めてみるのも良いかもしれない。

2眼レフの最高峰、6X6の最高峰とも言えるローライフレックスも。

ANTIQ PHOTO
https://www.antiq-photo.com

写真・文:櫻井朋成 Photography and Words: Tomonari SAKURAI

写真・文:櫻井朋成 Photography and Words: Tomonari SAKURAI

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