ラグジュアリー・ブランドだからこそできること|ベントレー・ベンテイガ・ハイブリッド

Photography:Masaya ABE

環境問題に真摯に向き合うのは、ラグジュアリー・ブランドの社会的責務のひとつである。SDGsという言葉がまだ一般的ではなかった時代から、ベントレーは持続可能な社会の実現に向けて最先端を走ってきた。いま、そのひとつの答えが「ベンテイガ・ハイブリッド」を通して見えてきた。



環境問題対応の最先端


ベントレーといえば、当然のごとく、ラグジュアリーなイメージが強い。実際、英国のジェントルマン・ドライバーたちに支持されて戦前のレース・シーンを席巻した歴史があり、また英国王室の公用車としてロイヤルワラントを持つなど、長い歴史の中で、英国のラグジュアリー・ブランドとして確立されたイメージがある。しかし、意外に思われるかもしれないが、環境問題への対応で最先端を走るブランドでもあるのだ。

時計の針をグッと戻すことになるが、筆者がそのことを知ったのは、2008年のジュネーヴ・サロンの会場でのことだった。唐突とも思えるタイミングで、ベントレーが環境問題への対応を強化すると発表したのだ。今でこそ、SDGsという言葉が浸透し、持続可能だったり、エコ・コンシャスな製品が支持される時代になったりしたが、当時はまだエコといえば、車がつまらなくなると敵視されるような時代だった。しかも当時のベントレーは、W12気筒搭載モデルのみをラインナップしており、まだV8エンジンを開発していなかったにもかかわらず、だ。

その内容とは、「ウェル・トゥ・ホイール・ベースで、2012年までに全モデルのCO2排出量を120g/km以下にする」という非常に意欲的なものだった。世界的には、当時はまだ、ハイブリッド技術は主流ではなく、CO2排出量120g/kmといえば、1.5リッター4気筒エンジンあたりの排出量だったから、大排気量のパワフルなユニットを搭載することが大前提のラグジュアリー・ブランドでは、到底、達成できない数字に思えた。が、「車両性能を維持しながら、排出ガスの低減と経済性の向上を実現する」と宣言した通り、その後にバイオ燃料や電動化といった環境技術を進化させてきた。



2020年には、そのコンセプトを進化させて、持続可能なラグジュアリーモビリティのリーダーを目指す「ビヨンド100」なる経営戦略を発表した。具体的には、2026年までに全ラインアップをPHEVとBEVに移行し、2030年までに全ラインアップをBEVに移行するなど、さらに意欲的な環境対応策に打って出る方針を打ち立てたのだ。2030年までにカーボンニュートラルを達成し、驚くことに、クルー工場ではCO2の排出より吸収の方が多いクライメートポジティブを実現するとしている。

そんな真摯な姿勢を知った上で、今回、日本に上陸したベントレー「ベンテイガ・ハイブリッド」を眺めてみると、この英国製ラグジュアリー・ブランドの本質がよく見えてくる。海面に浮かぶメガヨットを彷彿とさせる滑らかなボディラインを持つスタイリングは、際立つ存在感をも放ちつつも、アジアの雑多な街並みにも不思議と馴染むのが興味深い。押し出し感のあるSUVが人気の昨今ではあるが、今の時代、圧迫感があるよりも、溶け込むことの方が女性や若い世代に受け入れられるように感じる。本社の調査によるとベントレーの顧客の1/4が女性ユーザーだそうだ。

乗降時に足元を照らす、いわゆるドアカーテシランプ。今や多くの車に採用されているものだが、このWINGED Bのロゴデザインで迎えられると何故だか厳かな気分になってくる。

大ぶりなドアを開けて、室内に乗り込むと、まるで自宅のリビングルームのような落ち着いた雰囲気が醸されている。ドアトリムやシート地に触れると、丁寧になめされた革の手触りがよく、出迎えられるような印象を受ける。上質な革で丸ごと包まれたフロント・フェイシアには、手触りだけではなく、見た目も滑らかに見える独自のデザインが採用されている。エアコンの吹き出し口などの細部にまで丁寧なクローム仕上げが施されている。今回、連れ出したモデルは、「ベンテイガ ハイブリッド」の発売を記念したファーストエディションゆえに、シートに大きく「First Edition」と刺繍が施されている。加えて、専用バッジ、専用ステッチが施されたダイヤモンド・キルティングなどの専用装備が備わる。ナビ画面が大きくなって視認性が向上した次世代インフォテインメントシステムをはじめ、コネクティビティもアップデートされている。

ハイブリッドにおいても室内パッケージについてはバッテリー搭載による影響は皆無である。約200㎏重くなった車重は、走行に与えるマイナスの印象はほぼない。乗り心地は逆に間違いなく良くなっており、安定感やしっかり感に繋がっている。

この上品なインペリアルブルーの色が伝わればうれしい。オプションではあるが、本革についてメインハイド、セカンダリーハイド、さらにはステッチタイプについても選ぶことができ、本当に自分だけの1台を創り上げることが可能なのだ。

文:川端由美 写真:阿部昌也

無料メールマガジン登録   人気の記事や編集部おすすめ記事を配信         
登録することで、会員規約に同意したものとみなされます。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事