アメリカ育ち第1号のランボルギーニ・ミウラSVがオークションに出品!

Wolfram Schroll ©2022 Courtesy of RM Sotheby's

1966年のジュネーブ・サロンで初めて公開されたランボルギーニ・ミウラP400のインパクトは、並々ならぬものがあった。それは、他のどの車とも似ていない、高性能車のデザインにおけるパラダイムシフトを示すものであった。マルチェロ・ガンディーニが27歳のときに手がけた華麗なデザインは、当時の若々しさを表現している。猛牛の角をモチーフにしたとされるドアの形状など、細部に至るまで美しいスタイルが施されている。ミウラは、官能的でありながら筋肉質な、完璧な自動車のシルエットを誇っていたのだ。おそらく世界が初めて目にした真のスーパーカーとして、ミウラの性能はそのルックスに見合ったものであった。



ミウラの最終モデルであるP400SVは、その前に登場したP400Sから数々の改良が施されたモデルである。フロントシャシーを強化し、リアサスペンションを改良してハンドリングを向上させ、リアホイールをワイド化。また、シリンダーヘッドはインレットバルブが拡大され、トリプルチョーク・ダウンドラフト・ウェーバーはジェットとベンチュリが大型化された。また、リアランプの形状を変更し、ヘッドライトのアイラッシュを削除するなど、美と攻撃性を両立させた、より完成度の高いスーパーカーとなった。



シャシーナンバー4884。アメリカンSVの第1号車


ランボルギーニは、アメリカ市場向けにわずか21台のミウラSVを製造した。反射式サイドマーカー、レギュレーションカラーのウインカー、ウィングのない八角形のセンターホイールナット、3点式シートベルト、異なる警告灯など、連邦規制に対応するため、通常のSVとは微妙に異なる装備が施されていた。また、最初の8台は時速200kmスケールのスピードメーターとシングルサンプオイルシステムが採用されたが、後の13台は時速190kmスケールのスピードメーターとスプリットサンプオイルシステムが採用された。アメリカ市場向けに調整する中でも、EPA(米国環境保護局)の排ガス規制をクリアするのが一番難しいのだが、これはニューヨークのモデナ・レーシング・カンパニー社の新インポーター、アルベルト・ペドレッティに任されることになった。



このミウラSV(シャシー番号4884)は、当初、ランボルギーニの不規則な車両供給のせいでに仲違いしていたインポーターのボブ・エステスによってオーダーされたものである。さらに、請求書にはロッソ・コルサとブルー・カラーのミウラが確認されている。1971年6月までに、ランボルギーニはシャシー4884をアルベルト・ペドレッティに譲渡し、6月18日にようやく引き渡された。彼はエミリア・ロマーニャ州の、メーカーが生産した車を撮影する写真家であり、この写真はランボルギーニの広報資料やSVのパンフレットにも使用されることになった。



東海岸に到着したアルベルト・ペドレッティは、シャシー4884をミシガン州アンハーバーに運び、EPA(環境保護局)のテストを行った。自動車エンジニアであるペドレッティは、以前にもサンタアガタに行き、ベーパーをカーボンキャニスターに排出するためのエアポンプシステムの開発を手伝ったことがあった。そしてペドレッティの言う「スペリメンターレ」エンジンで10日間の調整とテストを経て、この車はついに合格し、正式にアメリカへ上陸したのである。



ペドレッティはリアにモデナ・レーシング社のステッカーを貼り、1971年のボストン・オートショーに4884で登場。SVのデビューを飾り、アメリカへの売り込みに乗り出した。このミウラはショーの後、カンザス州ゴダードのジャック・ロビンソンに売却された。ロビンソンはカンザスの平地で定期的にミウラSVの性能をテストし、ボンネビルソルトフラッツに乗り付けたと言われている。1977年、トピカにあるアストロ・モーターズが、ロビンソンに代わってジョージア州サバンナのアラン・ブラウン博士に売却し、その時点で走行距離は12,275マイルであった。ブラウン博士は、SVを手に入れた直後にランボルギーニに手紙を書き、シャシーナンバー4884が、型式証明を得るために送られた最初のアメリカ向けのホモロゲーションSVであることの確認を取っている。



2005年にブラウン博士が他界した後、ミウラ愛好家のジョー・サッキー氏がオドメーターが19,548マイルになったこの車両を購入。そして、カリフォルニア州サンディエゴのミウラレストアラー、ゲイリー・ボビレフに送られ、ベルトーネのシート素材に至るまで、ファクトリー仕様の徹底的なレストアが施されたのである。コンクールクオリティのレストア後、シャシーナンバー4884は2006年のコンコルソ・イタリアーノでクラス1位を獲得した。



5月14日にRMサザビーズ主催で開催されるオークションMONACOに出品されるこの#4884のミウラは、約3億~3億6000万円の値がつくと予想されている。ただでさえミウラは貴重な存在であり、アメリカでのヒストリーを持つSVとなればこのような価格になるのも頷ける。アメリカで育ったとも言えるこのミウラが、再びアメリカの大地を走ることになるのか、気になるところである。



Wolfram Schroll ©2022 Courtesy of RM Sotheby's

オクタン日本版編集部

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