DS 9。この車の真の魅力を理解する秘訣は「オープンマインド」であること

Octane UK

DS 9を理解するには、頭を柔らかくして先入観をなくすことが鍵となる。シトロエンの熱心なファンの私でも、正直いって最初はどう解釈して良いか分からなかった。まず第一に、これはシトロエンではない。今では「DS」自体がひとつのブランドになっているのは周知のとおり。つまり、シトロエンから派生した、ステランティス・グループのフレンチ・ラグジュアリー部門の代表だ。だが、フラッグシップモデルとしての「9」は、かつての輝けるシトロエン「C6」に匹敵するものに違いない。

DS 9はうわべを飾りたてた車ではない。ルックスは非常に高級感があり上品で、ディテールにこだわりがある。ヘッドライトは芸術品レベルであるし、Cピラーのポジションライトとボンネット中央のクロームなど、オリジナルのシトロエンDSをさりげなく想起させる。



DS 9はプジョー508をベースにしており、パワートレインも同じくガソリンと電気のハイブリッドだ。このモデルはRIVOLI E-TENSEの旧仕様の225馬力で、今では250馬力のモデルがこれに代わっている。さらなるパフォーマンスが必要な人向けには、よりハイスペックのプラグインハイブリッド仕様で、355馬力のモデルも用意されている。

DSブランドが目指すところは、快適性と洗練性だ。その特別感のあるインテリアが醸し出すムードが、その性質を決定づけている。ブジョー508を運転したことのある方なら、キャビンレイアウトの類似点に気づくかも知れない。しかし、多くのスイッチには独特のフィーリングがあり、マッサージ付きのシートは驚くほど快適だ。DSで使用されている素材は、クオリティも格別だ。



さて、乗り心地はどうだろうか?この点では、“シトロエニスト”の仲間達の間では少々物議を醸すかもしれない。というのも、DS 9は表向きには、”スタンダード”なサスペンションとダンパーのセットを装備しているからだ。しかしながら、これらはよく適応したダンバーで、適切な快適性のバランスと安定性をもたらしており、素晴らしい出来だと思う。それには、19インチのアルミホイールと分厚いタイヤも一役買っている。

さらにDS 9には、「DS アクティブスキャンサスペンション」が搭載されており、前方の道路状況をモニターし最適な制御をする。これは都市部での低速時にもよく機能し、キャビンは道路上の穴やわだちによる振動とは無縁だ。高速になっても、すべてにクッションが与えられつつ、タイトにコントロールされる。リラックスしながらの高速移動を楽々と実現してくれるのである。

私がイギリス国内でのシトロエンC6の販売終了についての記事を書いた日から、もうすぐ10年になる。そして7年間で1000台のC6が販売された。大多数の購入者はそのことを理解していないかもしれないが、大型シトロエンの次のモデルはもう出ない…かもしれない。だが、DS 9はここにいる。「理解するのが難しい」という点においてもC6と引けを取らない車だ。



この10年間での大型SUVの台頭により、大型サルーンの市場は減少した。DSはイギリスでの現実的な販売ターゲットを、“数百人”に絞ったという。つまり、アウディA6やBMW5シリーズの購入者をごっそり奪おうというわけではないようだ。この車は、他と純粋に違うものを求める人のために造られたものなのだ。そして私が思うに、所有者を感動でぞくぞくさせる車である。できるだけ多くの人に、ぜひその感動を実感していただきたいと願う。


文:Matthew Hayward まとめ:オクタン日本版編集部

オクタン日本版編集部

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