オンナゴコロもくすぐるワクワク感|ジープのピックアップ「グラディエーター」で冒険に出かけよう!

Kazumi OGATA

さぁ、冒険だ~。丸目のライトに縦スリットグリルというお馴染みのジープ顔に5名が乗車可能なキャビン、そして250kgの最大積載量を保つ広大なベッド(荷台)を備えるグラディエーター(Gladiator)は街中の風景すらも大自然に変えてしまいそうな存在感がある。そんなモデルで今回は実際にオフロードを走行する機会を得たのだった。サイドステップのないグラディエーターのドライビングシートにややよじ登るように座る行為すらワクワク。着座位置も高いシートから目の前に広がるオフロードを眺め、思わず冒頭の「さぁ、冒険だ~」という言葉を発していた次第だ。



ジープ・グラディーエーターは2019年に北米から発売をスタート。ジープがピックアップトラックを発売するのは1992年に発売を終えた「コマンチ」以来ぶり、ちなみに日本でジープのピックアップトラックを発売するのは初めてとなる。

2021年に誕生から80年(1941年~)を迎えたJEEP。日本では一時期販売が低迷していたが、ここ10年以上はラインナップされるモデルたちの販売は好調だ。なかでも一番の人気車種はラングラー。昨年、同クラスの欧州SUV勢が3000台で推移するなか、7000台近く(参考:ジープブランド全体の販売台数は1万4000台超え)を販売したという。ラングラーについてはご存知の方も多いと思うが、ジープブランドのなかでも最もJEEPらしいカタチと性能を持ち合わせた、他のSUVとは明らかに一線を画すモデルだ。

そして新たに上陸を果たした“強者”が「グラディエーター ルビコン」だ。このモデルはザックリと言ってしまえば性能部分の多くを共通とする「ラングラー アンリミテッド ルビコン」のピックアップトラック版とも言える。ただしホイールベースは+480mm、全長を+730mm延長し、全幅も+350mm。グラディエーターの全長5600mm×全幅1930mm×全高1850mm、ホイールベース3490mmというボディサイズは日本では特大クラスとなる。最低地上高は200mm、水深762mmという渡河性能を持ち、本格的かつ最新の4WD走破性能も持ち合わせ、V6 3.6リッターの自然吸気エンジン(284ps/347Nm)を8ATで走らせる動力も貴重。これに荷台(ベッド)を持つワイルドなユニークさが特徴と言える。



そんなモデルは実は2018年のLAショーでお披露目されるも当初は日本で販売する計画はなかったのだそうだ。ところがニュースを聞きつけた日本のお客様やディーラーからの反響が多く寄せられ導入を決定。30台/月、100台/年間ほどの販売を見込んでいたら、初めの輸入枠の400台をあっという間に完売してしまったのだった。ちなみにこのモデルは一般的な乗用車の扱いではなく、普通貨物として“1ナンバー”登録となり所有する際のメリット/デメリットがある点はお伝えしておきたい。

今回の試乗はJEEPのオーナー向けに開催されたアウトドアスクール「JEEP Adventure Academy」用のコースを使用して行われた。前日の大雨によってコースはぬかるみ、人間の足では踏み入れ難いようなコンディションのなかBFグッドリッチのマッドテレインタイヤというシューズを履き、走行モードをダッシュボードにあるスイッチで前後のデフをロック、さらにシフトレバー横の副変速機レバーで“Loギヤ”を選び、様々なシチュエーションを走行した。気持ちでは直滑降に思えた勾配のきつい斜面を下る際もドライバーアクセル/ブレーキ操作は不要。また別の急斜面を上る際にわざと途中で一旦停止したりもしてみたが、足元がもがく様子もなく平坦な泥濘路で発進するかのようなスムーズなものだった。



ちなみにボディ重量は約2.3tもある。またタイヤが一輪浮いてしまうような深くグズグズ(何台もの車両が走り時間の経過とともにさらにコンディションは悪化)の轍ではタイヤが埋まるほどの深さをお尻でも感じられるほどだった。ココでは最初にセットしたモードでも走行は可能だったが、“フロント・スェーバー・ディスコネクトシステム”を作動させるとデフがディスコネクト=スタビライザーをフリーにすることができ、必要な車輪のサスペンションが伸び車両姿勢も安定しタイヤの接地性も一層高まり、乗り心地まで良くなった。そもそもこのような場面でも性能を発揮できるサスペンションストロークのフレキシブルさに感心させられた。



今回のような悪路で3.6リッター V6エンジンの扱いやすさもよくわかった。アクセルを踏み込んでみればトルクの厚みは直ぐにわかるだろう。一方で、例えば人間が指先やつま先で岩の突起を掴むようなピンポイントのグリップを得るための力加減はアクセル操作による微量かつリニアなトルクが欲しいところ。グラディエーターはそんなシーンでも思い通りのトルクをドライバーのアクセルペダル操作によって得ることができる。今回は一般道の走行は叶わなかったが、この扱いやすさはシーンを選ばず万能なはずだ。



ところで、グラディエーターのキャビンを覆う軽量なパネルは3枚で構成され、フレームを残しつつ3枚すべて/フロントパネル2枚だけを取り外すことも可能だそうだ。ピックアップトラックで開放感をさらに満喫できそう!? 荷台(ベッド)にアクティビティのお供を載せて出かけるも良し、IKEAやDIYストアでも活躍しそう。いやいやリアルに何かを載せることよりも、ジープのピックアップトラックの佇まいを味わいたいという方も日本では多いかもしれない。ムダが贅沢。可能性は無限大?

キャビンの広さに見合った操作スイッチや計器類の大振り加減は操作し易く、逞しさこそ感じられても決して大雑把ではない。オフロード走行向けのレバーやスイッチがしつらえられて並ぶグラディエーターならではの機能的キャビンは飾らずも質は保たれ、レザーのシートやステアリングとともにアメリカのピックアップの大らかさかを前面に出す。一方で実はとても繊細な操作をサラッとやってのける懐の深さに気づいてしまうと、タフな走破性も相まって、はじめに抱いたワクワク感はそのままに筆者のオンナゴコロすらくすぐられたのだった。今度は都会の街中をグラディエーターで冒険してみたいと思った。


文:飯田裕子 写真:尾形和美
Words: Yuko IIDA Photography: Kazumi OGATA

文:飯田裕子

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