ビートルズのジョージ・ハリスンが愛したポルシェ928S。シートの下には思わぬ置き土産も・・・?

RM Sotheby's

エリック・クラプトン、ジェームズ・ヘットフィールド、ジャスティン・ビーバー…。今でこそ車好きとして知られるミュージシャンは数多いが、その元祖とも言えるのがビートルズのメンバーではないだろうか。ポール・マッカートニーはランボルギーニ400GTアストンマーティンDB6、ジョン・レノンはメルセデス・ベンツ 230 SL ロードスターや、有名なロールス・ロイス・ファントムV、リンゴ・スターもファセル・ヴェガファセルⅡといった珍しい車を愛車にしていた。しかしメンバーの中でも特に車好きだったのがジョージ・ハリスンだ。映画「マジカル・ミステリー・ツアー」に登場したサイケデリック・ミニやジャガーEタイプ、さらにはなんとマクラーレンF1なども所有していた。またモータースポーツの大ファンでもあり、自身もレースに参戦している。

そんなカーエンスージアストであるジョージが愛した車の一台に、ポルシェ928がある。



1970年代初頭、ポルシェの代名詞ともいえる「911」の販売台数が減少していることに危機感を抱いたポルシェは、抜本的な新設計の車が必要であると判断し、「928」を発表した。928は、それまでのポルシェのデザインとはまったく異なり、大排気量の水冷V型8気筒エンジンを車体前部に搭載し、トランスアクスルを介してリアにパワーを伝達するFRの車だった。また、50対50の重量配分により優れたハンドリングを実現した。1980年、ポルシェは競合メーカーに先んじるため、ヨーロッパ市場限定で928Sを発表した。外観上の改良もさることながら、最も顕著な改良点は、300馬力を発生する4,664ccの大型V型8気筒エンジンを導入したことである。



ジョージは、この928Sをいち早く手に入れた。彼は自分をコレクターではなく、あくまでもドライバーだと考えていたため、大規模なコレクションは持たず(いうまでもなくその気になれば容易に実現できていただろうが…)、同時に所有する車は彼が慎重に選んだ数台のみだった。

8月18日から20日に、モントレーで開催されるRMサザビーズ主催のオークションに、ジョージが所有していたポルシェ928Sが出品される。



1980年2月に納車されたこの928Sのオーナーズマニュアルには、最初のオーナーとしてジョージの名前と住所が記されている。ブラックの外装にフルブラックレザーの内装という、他の928Sと大きく変わることのない仕様で、ジョージは4年近く928Sを日常の足として使用し、走行距離は1万1000マイルに達している。そしてその後は928Sから500SEL AMGに乗り換えた。その直後にエンジンブロックが交換され、さらに約10万8000マイルを走行している。

2017年、この特別な928Sは現オーナーによって購入された。オーナーはこのような重要なポルシェにはレストアが必要ではあるが、一方でジョージが多くの時間を過ごしたオリジナルのインテリアも重要視していた。そのため928Sは塗装が剥げてしまっている部分のリペイントが行われ、その他にもかなりのメカニカルワークが施された。レストアにかかった総額は125,285ドル(約1700万円)にものぼり、ここまでコストを費やされた928Sはなかなか存在しないだろう。

予想落札価格は15万ドル(約2000万円)~25万ドル(3400万円)となっており、928Sの相場から考えるとかなり高額にも思えるが、手間暇かけられたレストアが施されていることや、史上最高のバンドのメンバーが愛した車であることを考えれば、特にファンにとっては、プライスレスの価値がある車であると言えよう。



レストアの際、運転席の下に1980年製のヴィヴァルディの「四季」のカセットが落ちているのが発見された。ジョージがこの作品を気に入っていたことはよく知られており、おそらくこのカセットテープを最後に聴いたのは彼自身だったのではないだろうか…。

現存する数少ないジョージの愛車として、このポルシェは、次のオーナーのカーライフを明るく輝いたものにしてくれるだろう。そう、まるで『Here Comes The Sun(太陽が昇る)』ように…。

オクタン日本版編集部

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