現代によみがえった伝説のマシンに試乗|気分は1965年にタイムスリップ?

Bizzarrini

ビッザリーニ 5300GT コルサは、あまり市場に出回ることがない。1965年のル・マンでクラス優勝を果たしたシャシーNo.0222の場合は、さらに稀少である。しかし、“あらたに”24台の5300GT コルサを手に入れるチャンスが巡ってきた。この5300GTは「Car Zero」と呼ばれるプロトタイプ1号車で、新生ビッザリーニ5300GTコルサ・リバイバルの最初の車両である。ビッザリーニは、このスーパーカーを発表するにあたり、5300GT コルサに対して漠然とした印象しかもっていない人々に、その存在を再認識してもらうことを目指していた。

「我々にはかつての偉大さを取り戻すという目的があり、5300GTはその第一歩なのです」と、同社COOのリチャード・クインランは話す。



この名称は、ペガサス・ブランズが2018年にフォードから買収したものだ。5300GTコルサ・リバイバルの初期プロセスは徹底しており、何千ものオリジナルの設計図や手書きのメモ、さらには日の目を見なかったロッソ・コルサのペイントが施されたオリジナルのボディパネルまで綿密に調査された。Car Zeroの塗装は、約60年前のオリジナルとまったく同じ色が再現されている。

このプロジェクトはRML社が主導し、自社の施設の一部を24台の「カスタマーカー」の製造に充てている。以前紹介した、同社がフェラーリ250GTを現代的なランニングギアで再現したRMLショートホイールベースに関する記事を読んでいる人は、この名前にピンときたかもしれない。この3500GT コルサは、ジョット・ビッザリーニのアイデアを現代によみがえらせたものなのだ。

ビッザリーニはかつて、アルファロメオのテストドライバーを経て、エンツォ・フェラーリに招かれ、250GTOを世に送り出した。そしてその後、ジローラモ・ガルディーニらと共にATS(Automobili Turismo e Sport)を設立し、イタリア初のミドエンジン・スポーツカー、2500GTを開発した。また、コンサルタントとして、ジョバンニ・ヴォルピ伯爵のために空力的に過激なフェラーリ「ブレッドバン」、そしてランボルギーニのV12エンジンを開発することになる。ランボルギーニのV12エンジンは、50年以上にわたってサンタアガタの主力製品として活躍した傑作である。

その後、彼はイソ社に入社した。そこでビッザリーニは、「改良型GTO」と呼ばれるグリフォA3/LandA3/C-acarheを開発した。そして、ビッザリーニがイソと決別すると、A3/Cはビッザリーニ5300GTに進化した。若きジョルジェット・ジウジアーロが手がけたボディワークにピエロ・ドロゴが手を加え、パワフルなシボレーV8をフロントアクスルのかなり後方にマウント。独立サスペンションで後輪を駆動するコルサ仕様で、結果的にレースでは成功を収めた。レースが終わったあと、なんとジョット・ビッザリーニはビッザリーニ5300GTを自ら運転し、北イタリアに持ち帰ったそうだ。カー・ゼロは、それを忠実に再現することを目指した。

オリジナルに忠実なレプリカでありながら、FIAのレギュレーションに適合するよう微調整が施されている。ボディワークはスチールフレームにカーボンファイバーの一枚板で、最新のシェルバックシートにはハーネスが装着され、ロールケージで保護されて、消火器と安全性の高い燃料電池が装備されている。



V8エンジンのスワップなら、GMの「クレート」のV8が安価で入手可能だが、5300GTはあえてウェーバーキャブレター付きのコルベット5.3リッター(327ci)V8を搭載し、しかも現代仕様に改造されているため、約400bhpを発生させる。トランスミッションは4速のボルグワーナーT10だ。ステアリングホイール、メーター、スイッチ類はオリジナルメーカーのもので、ステアリングボックスは、現在は引退しているが、オリジナルサプライヤーの元弟子の職人によって製作された。



生産台数はル・マン24時間にちなんだ24台。すべてがサーキット走行を想定した状態で提供されるが、個別に公道走行用のホモロゲーションを取得することも可能だ。



V8がパチパチと音を立て、車体をわずかに揺らす。背中を床から離し、リクライニングして座ると、前方にはダッシュボードとボンネットが見える。プロトタイプのギアシフトだと、シフトアップはうまくいくものの、シフトダウンは難しかったが、正確で満足のいくアクションの素地は感じ取れる。ステアリングは適度に重さがありながら、フィードバックに富んでいる。天候が悪い上に、バンピーなコンクリートのテストコースはかなりハードだったが、すぐにGTの絶妙なバランスを体感することができた。この車は、ビッザリーニの計算通り、1,250kgという車重を四隅に正確に配分しているのだ。驚くべきことである。



ノイズが多く、容赦はない車だが、その分、没入感もある。1965年のル・マン24時間レースのスターマシンを運転するのはどんな感じだろうともし一度でも気になったことがあるのなら、24台のマシンのうちの1台を、ぜひ運転してみていただきたい。必要なのは、165万ポンドの資金を用意するということだけだ。


文:Glen Waddington まとめ:オクタン日本版編集部

オクタン日本版編集部

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