「未来の車は、僕らが子どものころに夢見たものになるだろうか?」パリの博物館で考える

Tomonari SAKURAI

自動車に未来はあるのか?そんな質問を投げかけながらパリ3区にある美術工芸博物館で開催されている特別展示の「Permis de conduire?」(運転免許証?)に出かけてみた。この博物館は何度かこの場でも紹介している。車だけでなく、機械全般、それがどう進化してきたかということを見ることができる博物館。ギアや機械が一杯で、それが何をするのか分からない機械でもワクワクしてしまう。

そんな博物館が今一度、車がどのように発展してきたか、その昔、そして未来の車はどうなるのか?なんていうのを振り返りつつ、車の未来を考える展示。ここで何度も紹介しているがパリはもう数年で電気自動車しか走ることができなくなる。V12気筒、DOHC、オーバルピストン、ロータリーエンジンなど、技術者が設計し、職人がそれを作り上げた時代が幕を閉じようとしている。電池とモーターだけになってしまうのだ。

会場に進むとまず1/18サイズのモデルカーが迎えてくれる。2CVを頂点としフランスを中心にドイツに英国の車が並ぶ。日本車はない… ここでまず懐かしさを感じて欲しいようだ。逆に子供達は何を思うのだろう?

1/18サイズのミニカー達がまず迎えてくれる。日本車は…

その先にはガソリンスタンドを模した展示がある。そこにある車はルノー4CV。ここでは「未来」ではなく、化石燃料を使った車の仕組みをおさらいしようという趣向らしい。車がヴィンテージなのは構造が比較的シンプルで理解しやすいからだろう。ブレーキ、ミッション、エンジンの基本動作を理解する体験型の模型が置かれていて、子どもだけでなく大人もそれを真剣に試している。フランスでもオートマが増えた現在、マニュアルトランスミッションは興味深いのかもしれない。

Renault 4CVが停車しているガソリンスタンドに到着。

スタンドに停まっている4CVは、反対側に廻るとカットモデルになっている。これで、車の中身を覗くことができる。リアエンジン車を選ぶところがまた良い。ガソリンスタンドのウィンドーには当時もののオートモービリアが展示され、車の文化を知ることができる。そういえば昨今はカーナビのおかげで車には地図を積んでいないことにあらためて気づいた。ドライブ用のマップなんていうのも、何だかめずらしいものに映るのかもしれない。

停車していた4CVはカットモデル。リアに収まるエンジンもさらにカットされている。

フロントにタイヤが収まり、このヴィンテージなかわいらしいスタイルのカットモデルからその内部を見ると、子ども達も夢中になる。

ガソリンスタンドでもらえたマップやマッチなどは過去の話。でもそれを博物館が展示して見せていることが素晴らしい。

次の展示は未来に向かって。そのためにはいくつものテストが繰り返される。クラッシュテストのマネキンや、最新技術のエアレスタイヤ、自動運転システムなどをさらっと紹介。

クラッシュテストのマネキンが鎮座し、未来を見据えているというところか?奥にはエアレスタイヤが展示されている。

いよいよ未来の車のコーナー。天井にはDSがぶら下がっている。空を飛ぶ車の紹介だ。展示されているのはポール・アーゼンズによる電動車「卵」だ。1942年に作られたこの車はジュラルミンのボディをもつ。戦時下で燃料が不足していたことにより電気自動車として生まれ、戦後は125ccのエンジンを積んだ車となった。このデザイン、さらに電動車であることもあって、まさに「未来の車」と呼ぶにふさわしい。

今この車がパリを走っていてもまったく違和感のないスタイルを持つ1942年製電動カー「卵」。ジュラルミンボディが美しい。

天井からぶら下がったDSは、空を飛びそうなエアロダイナミズムをもつ車として、空飛ぶイメージで作られたモデル。実際に2024年にCDG空港とパリを結ぶ実用化ができるよう、飛行機に変形する車の開発が進められているという。

未来の車のひとつは空飛ぶ車。DSはそのスタイルからもっとも空に近い車のひとつというわけだ。

そして仕上げは映画の中の未来の車達。SF映画に登場する車達を見てその制作時にどんな思いで未来の車を想像していたかを見てみようというもの。

もうすぐそこにある近未来の車社会は、僕らが子どものころにワクワクしていた未来の車、その夢がかなう未来になるのだろうか?いまひとつ近未来の車に夢がないように感じるのは年のせいなのだろうか?そんな想いをさせる展示は来年の5月23日まで!パリに来る機会があれば是非一度覗いてみてほしい。

Permis de conduire ? 展
https://www.arts-et-metiers.net/musee/permis-de-conduire


写真・文:櫻井朋成 Photography and Words: Tomonari SAKURAI

Tomonari SAKURAI

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