ランボルギーニの次期型フラッグシップがついに見参!「レヴエルト」の名が意味するものとは?

Automobili Lamborghini S.p.A.

ランボルギーニの次期型フラッグシップモデルがついにその姿を現した。創立60周年の記念すべき節目の年に、全く新しいプラグインパワートレーンを積んだモデルの登場である。その名は“レヴエルト”。もちろん、サンターガタのネーミング手法に則って、ムルシエラゴやアヴェンタドールと同様、それはスペインの闘牛名から拝借したものだ。

スペイン語で“かき混ぜる”という意味の単語だが、検索してみるとスペイン風スクランブルエッグのレシピばかりが出てきて面食らってしまった。けれどもサンターガタの説明を聞いて大いに納得する。19世紀末にとある猛牛がバルセロナのアレーナで戦った。その勇敢かつ獰猛な戦いぶりに会場は混乱と興奮の坩堝と化したという。それゆえレヴエルト=引っ掻き回す、と名付けられた。次世代に向かって内燃機関と電気モーターを“かき混ぜて”高性能を発揮する新型フラッグシップの名として、語感も含め、これ以上のネーミングはないだろう。



これまで主要な情報が小出しに公開されてきた。本サイトのご覧の読者なら新型レヴエルトのパワートレーンやボディ骨格、ドライブモードといった情報の詳細はすでにご存じかもしれない。詳しく読んでないという向きには既出の記事を復習してもらうとして、ここでは簡単に振り返っておくにとどめたい。

注目のパワートレーンは新開発の6.5L V12自然吸気エンジンに前2機+後1機の電気モーターとリチウムイオンバッテリー、新設計8速DCTを組み合わせたもので、外部からの給電も可能なPHEVである。システム総合出力はなんと一気に大台越えの1015cv。パワーウェイトレシオ1.75kg /cvというからアヴェンタドールを大いに上回った。新たに発表されたパフォーマンススペックにも驚く。0→100km/h加速は2.5秒で0→200km/h加速も7秒。最高速は350km/h以上というから“加速だけ自慢”のEVを歯牙にも掛けない。

ちなみにタイヤはブリヂストンのポテンザスポーツで専用開発品。サイズはフロント265/35ZRF20もしくは265/30ZRF21(オプション)、リアは345/30ZRF21もしくは355/25ZRF22(オプション)で、いずれもランフラット。そのほかチューブレス仕様やレース仕様、ウィンター仕様などブリヂストンがさまざまなタイヤセットを用意するという。



そのハイパフォーマンスを支えるのが“モノフュージレージ”と名付けられた全く新しいCFRPモノコックボディ構造だ。当然、先代より軽く、剛性も上がった。プリプレグやRTM、鍛造コンポジットなど異なる成型法を適材適所に用いており、なかでも“ロッカーリング”と呼ばれるRTM一体成型品がユニークだ。市販車初のCFRPフロントサブフレームの付け根とサイドシルの内側、さらにリアバルクヘッド下までをリング状に繋いで一体とした形状で、その中に鍛造カーボンのバスタブをごそっとはめ込む。いかにも頑丈そうである。このコンセプトは今後、グループ内で他のブランドにも使われるというから興味深い。エンジンとミッションはアルミサブフレームに結合される。





そして何といっても今回その全貌が明らかとなった内外装のデザインに注目したい。ワールドプレミアの一ヶ月前、世界から限られたメディアをサンターガタはチェントロスティーレ(デザインセンター)に招いてプレビューが開催されたが、そこにはオレンジのレヴエルトが飾られており、センターのボスであり友人ミッティア・ボルカートがこれまでみたことのない満面の笑顔で筆者を車体の後方へと手招きした。

小さい頃からカウンタックのファンだったミッティアは、今回、カーデザイン界において自分の夢を果たした一人となった。就任して以来、量産モデルのデザインは基本変更であり、彼のディレクションによるオリジナルデザインは限定車やコンセプトカーに留まっていた。つまりレヴエルトこそがミッティアにとって初めての量産ランボルギーニであり、それはカウンタックの直系というべきフラッグシップモデルであったのだ。



「この角度からのデザインを見て!」。ミッティアが指を差す。エンジンブロックが剥き出しになっていて、その向こう、大きめのリアガラスからインテリアがくっきり見通せた。「ダッシュのセンターがエイリアンみたいに見えるだろ?」、とミッティアは眉毛を斜めにしてみせた。



なるほどレヴエルトのデザインハイライトはミッティアの言う通りリアセクションだろう。ユニークなリアランプに上方排気、可変スポイラー、デュフューザーなど迫力満点で、しかもその先にエンジンが丸見えときた。インテリアの様子さえ伺えるのだ。個人的にはリアフェンダーまわりのふくよかなラインにカウンタックやムルシエラゴのシンプルな曲線美を発見することができて嬉しかった。前から後ろにかけて多用される斜めにカットされたラインも角度が見事に計算されていて面白い。もちろんパフォーマンス面ではエアロダイナミクスの向上もまた大きく作用していることは言うまでもない。派手なエアロデバイスに頼らず効果的なダウンフォースを得ることは今やスーパーカー界の常識だ。ちなみにリアスポイラーは三段階に開く。



シザードアを開けた。アヴェンタドールよりもさらに少し外へと開く感じ。サイドシルがドアに付いて上がった。マクラーレンと同じだ。開いた時の足元が広く、内側まで進めるので乗降性が格段に増している。ちなみにルーフ高も上がって、室内高はアヴェンタドールよりも26mm高くなった。



実際に座ってみる。大きなセンターモニターなど随分とモダンになった印象だ。170cmの筆者が座ると握り拳ひとつ分の頭上スペースがある。これならヘルメットを被ってサーキットを走っても窮屈さはないだろう。





新デザインのステアリングホイールには2つのダイヤルがあって、従来からのドライブモードに新たなハイブリッドモードを組み合わせること13通りの猛牛キャラ(中には乳牛のように従順なモードもあるけれど)を選ぶことができる。そしてなんとADASも初めて採用された。



レヴエルトのアッセンブリーラインも見学することができた。伝統の本社工場内、アヴェンタドールのラインを大幅に改装して使う。これまで以上に明るくクリーンな印象で自走式ロボットが駆け回って(と言うほど速くはないが)おり、労働者の快適性を十分に考慮した設計となっていた。もちろんV12エンジンは専用ラインにてワンマン・ワンモーターで組み立てられている。



当面、レヴエルトは日産7台のペースで生産されるという。
 

文:西川 淳 写真:ランボルギーニ
Words: Jun NISHIKAWA Images: Automobili Lamborghini S.p.A.

西川 淳

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