「頑な」という言葉が最もふさわしい自動車と言えば、間違いなくそれはポルシェである。創業当時まで遡ってみてもポルシェには決して順風満帆とは言えない厳しい時代が何度もあった。だが、それを新しいアイデアと工夫を加えることで確実に乗り越えてきた。ポルシェとはそういうタフなブランドである。
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ただ、ポルシェがこれほどまでに多くの車好きを魅了する理由はその斬新さだけではない。ポルシェが有するもっと大切なこと。それはモノ作りの根底に流れる信頼性にほかならない。
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自分たちの技術に信念をもって、真面目にしっかりとした自動車を作り続ける力。ポルシェは自動車としての、すべての魅力にあふれているのだ。
映画『栄光のル・マン』で使われたスティーブ・マックイーン所有の911は、1971年にサルト・サーキットを離れてから、オークションハウス、コレクター、そしてメディアの目に留まらずにずっと過ごしていた。
最初のポルシェがオーストリアの小さな小屋で誕生してから、およそ65年が経った。その間はまさに波瀾万丈、様々なできごとがあった。
1970年代半ば、911ロードカーをベースにしたコンペティションモデルの最高峰に位置するのが2.8RSRだ。
935の1号車を操るデレック・ベル。走りながら1970年代の記憶がよみがえってきたという。この暴力的ともいえるクルマが彼のポルシェ復帰への扉となったことも含めて。
純血統のクラシックカーの中でも、カスタム好きから多くの興味をもたれるのが初期のポルシェだ。特に「アウトロー356」の故郷であるカリフォルニアでは……。
ポルシェの第1号車、ポルシェ356が誕生する9年前に製造されたTyp64。フェルディナント・ポルシェとその息子フェリーが、後に発表するスポーツカーの実証用として日常の足として使用していた。その後、最初のプライベートオーナーが約50年間に渡って所有してきたが、ついにその姿を再び公の場に現わした。
ポルシェ356は、多くの点で時代のはるか先を歩んでいた。分割式フロントウィンドウを持つ初代モデルは、登場と同時に大人気を博した。現存する中で世界最高と認められている1台を紹介する。
イギリスでの911ターボといえば、1980年代のロンドン金融街(シティ)で大儲けしている金融マンが乗っていた車、そう揶揄されてきた。実はそうしたネガティブなレッテルとはまったく異なる優れた車である。
スタンダードの914は興奮するような車ではなかった。だが、このオリジナル914/6GTが証明するように、素晴らしい車になる可能性があったのだ。
ポルシェ911の歩みは、自動車がこの半世紀の間にいかに発展したかを示す歴史そのものであり、最新モデルの991はその集大成というべき存在である。8台の911とともに、その半世紀におよぶ歴史を振り返る旅へと出かけよう。