アストンマーティンとF1チーム、協業の先にあるものは?

まずは私的な話から。今年のF1日本グランプリと、筆者の息子が通う小学校の運動会は同日の開催だったが、私は校庭で息子の応援をするのではなく、鈴鹿に行ってアストンマーティン・レッドブル・レーシングのダニエル・リカルド選手の応援をしていたのはここだけの話。

その理由は、輝く太陽のように、見る人の心を温かくする彼の笑顔。取材する側のこちらが緊張してしまうような予選前というシビアな時間帯に、なぜこれほどリラックスしていられるのだろう。これはリカルド選手の余裕がなせる技か、持って生まれた天性のものか。

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2018年のF1日本グランプリは、鈴鹿サーキットでの開催が30回目を迎えるということで、休眠していたファンも目を冷ましたのか、久々に前年を上回る16万5000人という観客を三日間で動員した。

節目の年であることに加え、今年序盤のF1はメルセデス1強ではなく、コンストラクターズやドライバーのチャンピオンシップ争いが熾烈だったことも、現地で観戦したいというファンがサーキットに足を運ぶ一因になったのかもしれない。

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特にメルセデス、フェラーリ、レッドブル・レーシングのトップチーム3の強さはいわゆる"鉄板"で、今シーズン前半はサーキットの特性に応じて優勝チームがレースごとに入れ替わるような面白さ。

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日本グランプリ前に「モナコでの優勝以来のシャンパンが恋しい」と語っていたリカルド選手に、予選日に鈴鹿でインタビューする機会を得た際の様子が、冒頭に書いた笑顔のシーンである。

「モナコは鈴鹿と同じで、カーブが連続するサーキットなので、ずっと集中力をキープし続けなければならないんだ」という。だからこそ、単純なストレートが続くサーキットに比べて、ネガティブなことを考えることもなく運転に集中し続けられるところが好きなのだ、と。

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F1マシンで鈴鹿を走るだけではなく、アストンマーティンDBSスーパーレッジェーラでもサーキットをドライブしたリカルド選手に、アストンマーティンの魅力を尋ねると、即座に返ってきたのが「サウンドだね」との言葉。「僕にとってのアストンマーティンは、なんと言っても音。それから、ジェームズ・ボンド!」。こんなセリフを満面の笑みで言われたらひとたまりもなく、私にとってのアストンマーティンの魅力も一気に倍増してしまう。抜群のPR効果だ。

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続く決勝の日曜日には、チーム・プリンシパルのクリスチャン・ホーナーにも話を聞くことができた。

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現在のレッドブル・レーシングの正式なチーム名は「Aston Martin Red Bull Racing」という。詳しくご存知ない方のために補足をすると、アストンマーティンはチームにエンジンを供給しているわけではなく、スポンサーとしてのパートナーシップ契約を締結している。

それは果たして金銭面だけの関係なのか?といえば、さにあらず。レッドブル・レーシングが擁する空力の鬼才、チーフテクニカルオフィサーのエイドリアン・ニューウェイが開発に携わったアストンマーティン・ヴァルキリーの存在はよく知られている。

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「ヴァルキリーの開発時のコードネームは001でした。これは我々とアストンマーティンの協業の第一歩で、今後は002についても検討を進めています」とホーナー氏は語ってくれた。将来的にル・マンに参戦する可能性について示唆もするほど、両者のテクニカルな側面での関係が深いことを伺い知ることができた。そう聞くと、002だけではなく、003、004までも期待してしまうのが人情というもの。続報を楽しみに待ちたい。

若手ドライバーの育成にも積極的、鬼才が手がける独創的なマシンで革新的なチャレンジを続けるレッドブル・レーシングと、意欲的なビジネス姿勢で革命をも恐れないアストンマーティン。両者の協業から生まれるマシンがサーキット内外で活躍する日が来るなんて、想像するだけでワクワクが止まらない。

文:オクタン日本版編集部 写真:アストンマーティン、オクタン日本版編集部

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