【INTERVIEW】70周年を迎えたフェラーリが日本で目指すもの

今年はフェラーリ社創設70周年で、「Driven by Emotion」と銘打たれた記念イベントが世界60カ国で開催されている。日本では去る10月12日、東京・両国国技館にて創設70周年記念モデル「ラフェラーリ・アペルタ」が日本で初めて披露された。と同時に、フェラーリの歴史を彩ってきた新旧の車両、約40台が展示された。フェラーリによる日本進出50周年を記念したJ50(世界限定10台)、セルジオ(世界限定6台)、そしてSP1(ワンオフ)などはそうそう見かける機会はないだろう。また13日、14日にかけては東京、静岡、伊勢、名古屋をフェラーリ・オーナーが走るラリーが催された。

両国国技館ではフェラーリ極東・中東エリア統括CEOを務める、ディーター・クネヒテル氏をインタビューする機会を得た。まずは70周年を記念するラリーの意図することを聞いてみた。

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「我々のイベントは、常にドライビングにフォーカスしています。フェラーリの商品としての魅力を再発見して欲しいですし歴史、革新性を感じて貰えれば、と思っています。だからラリーのコースも新旧様々で、フェラーリと走る国が持つ魅力の橋渡しをしたいと思っています。」オーナー同士のつながりを深める、フェラーリ社とオーナーとの絆を深めるイベントでもあるそうだ。

日本におけるフェラーリ販売は、今年で半世紀を迎えた。アジア諸国の目覚ましい経済発展こそあれど、日本は未だにアジアにおける販売台数ならびに走行台数は最高峰を維持している。今後の日本市場の展望を聞いてみると、まだまだ日本市場における存在感の強化を目論んでいるという。

「中国市場の目覚ましい発展に目が向きがちですが、アジアではこれからもしばらく日本市場がナンバー1であり続けると思っています。日本におけるフェラリスタによるフェラーリのブランドの歴史、DNAについて深い理解を得ています。これは一朝一夕で得られたものではなく、50年という歳月な成せた業です。さらなるサービス拠点、ディーラーネットワークの拡充を図ることで、これからもプレゼンスを高めていくつもりです」とクネヒテル氏。プレゼンスの向上と耳にすると、販売台数の増加を思い浮かべるがフェラーリが大切にしている希少性と相反しないのだろうか?

「生産されるフェラーリには、必ずオーナーがいます。生産台数を増やすことは容易ですが、あくまでも"需要より1台少なく"という生産計画を練ることで希少性を保っています。生産台数と希少性は相反関係にあると思われがちですが、実は違うんです。我々はカリフォルニアの投入で新しい顧客層を取り込むことが出来ましたし、ポルトフィーノも活躍してくれることでしょう。GTC4ルッソにしてもボリュームを狙ったわけではなく、フェラーリでありながら利便性の高いGTカーを欲するニッチな層をターゲットにしたわけです。最近、噂になっているフェラーリのSUV計画にとどまらず、どのようなモデルで新しい顧客を取り込めるのか常にリサーチをしています。」

つまりは、モデルラインナップの拡充で、顧客層の拡大を図りながらもフェラーリブランドの希薄化を回避する、という方針のようだ。そして、どのモデルも "需要より1台少なく"という生産計画を練るのだろう。このような生産計画を立てられるのは、フェラーリのブランド力があってこそ。

フェラーリは常に「スペチアーレ」と呼ばれる限定車の投入に積極的だ。最近ではM・ベンツAMGやアストンマーティンによって"ハイパーカー"と銘打ったスペシャルモデルの投入が相次いでいる。フェラーリによるハイパーカーの投入はあるのだろうか?

「ハイパーカーの定義が明確ではありませんが、フェラーリにはスペチアーレだけでなく、FXX-Kのようなサーキット専用車の存在があります。今回、日本で初披露となったラフェラーリ・アペルタもその高性能ぶり、希少性からハイパーカーと呼べるのではないでしょうか。だから、あえてハイパーカーの投入、と我々が謳うことはないと思います」。販売台数が限定されているスペチアーレやサーキット専用車などは、"招待制"となっているのがフェラーリの凄いところだ。購買力があるからといって買えるものではない。

「限定車への需要は旺盛です。ただ、残念ながらすべてのニーズには応えられません。どの顧客に限定車を割り振るか、という独自のガイドラインは存在しますがここでは明かせません」。フェラーリ社内での選考というわけではなく、ディーラーと綿密な打ち合わせがあるという。また、限定車の割り振りは、フェラーリからの"お返し"という意味合いが込められている、とも。つまりはフェラーリに誠実な顧客が買える、ということなのだろう。

どのような顧客が限定車の購入を招待されるのかは明言できないようだったので、フェラーリにとって理想のオーナー像を聞いてみることにした。

「フェラーリに情熱的で、フェラーリに理解があって、インタラクティブな人とでも言っておきましょう。フェラーリのイベントに参加してくれ、レースに参戦してくれ、常にフェラーリを運転してくれる人が、理想のフェラリスタです。そして、自分が築いたフェラーリ・コレクションを次世代に譲る、なんて素敵ですよね」と笑いながら答えたクネヒテル氏。もちろん、これが限定車購入に招待される条件だとは言っていなかったが、限定車を手にするには険しい道程があることだけは伝わった。

文:古賀 貴司(自動車王国)

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