究極のF1観戦 モナコGPを船上から眺める

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船上からGPを観戦する。それも今年で75回を迎えるF1GP DE MONACOとなれば異次元中の異次元、これはまごうことなく非日常な体験となる。

クルーズ船でツアーの一環として観るのではない。パーソナルなクルージングボートでの観戦。億単位いや数十億単位の価格が当たり前のメガヨットでの観戦となれば、それはその世界が当たり前のステージとなっている、そんな別次元のソサエティへ仲間入りすることでもある。船上デッキパーティ、まったく新たな世界の体験である。

先の申し上げると、レースを真剣に観戦することが目的ならば、それはコースサイドの観覧席が一番だ。だからボートでの観戦は予選がいい。たとえほんの一瞬だけでも、通過するマシンが見える特別な環境に身を置く、その非日常性が魅力なのである。本戦をごひいきのチームやドライバーの近くで見たければパドックパスや観覧席を買えばいい。

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市街地コース3㎞337m、最高速290㎞/h、78ラップ。MONACO最大のフェスティバルなのだから当然陸路は混雑する、コース閉鎖が朝から夕方までと長いため自由移動はかなり大変。ボートタクシーが圧倒的に便利で、何艇ものボートが港内を行き来する。5月26日の金曜日にMONAKOに入った我々も、王宮の西にあるFontvieille ハーバーまでクルマで行き、そこからはボートタクシーでぐるりと王宮から伸びる旧市街の断崖の岬を周りエリキュール港に入る。目的のクラシックボート、グランドバンクス80アラスカ「Sai Kung」のいるヌーベルシケイン先の桟橋に降り立った。それぞれの部屋で荷物をひらき2階のフライブリッジに。冷たいタオルとウエルカムシャンパンをいただく。南欧の明るい花々がアレンジされたテーブル、北側にはモナコの華やかな建物群、歴史的なカジノ・ド・モンテカルロの建物、シアター・プリンセスグレース、エルミタージュの建物や最新のクルーズ船を思わせるモナコヨットクラブの建物とその背後の山々、西には王宮の丘がこの港をぐるりと囲んでいる。

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サポートレースのフォーミュラー・ルノーが、くぐもるようでいながら音圧のあるサウンドを響かせて周回を重ねている。それを遠くで聞いているうちに、すっかり気分が盛り上がってきた。キャプテン、コンシェルジュ、シェフ、クルーの若い男女たち。笑顔を絶やさず、礼儀正しくもてなしてくれるスタッフが、居心地をより良くしてくれている。オールマホガニーとチークの穏やかで落ち着いた内装がエレガントな空間。1975年生まれと、まさにクラシカルエレガンス、フネ泊まりの楽しさがわきあがる。

コースオープンとなる夕刻、レッドブルの送迎ボートでパドックのある対岸に渡った。その横にはメルセデスベンツ・コンセプトボートがVIPサポートボートでゆっくり走行している、アストンマーティンボートも見える。また港内は様々なテンダーボートが行き交う。観戦用の大型艇はメガヨットの200フィートクラスから80フィートクラスまでがずらりと並んでいる。その艇数は200艇以上。また港内に入れないクルーズ船やメガヨットはモナコ沖に錨泊している。

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さあ、いざパドッククラブに。夕方というのに夏の太陽が降り注いでいる。プールサイドでシャンパンに続きモヒートを。ピットエリアを歩く。ドライバーたちが気さくにガードレール外の観客たちにサインをしたり記念写真を撮ったりとサービスに忙しい。ちょうどメルセデスチームのタイヤ交換練習に遭遇。一瞬の作業を目の当たりにして、その俊敏さに感動を覚えた。フネに戻りデイナーだ。カジュアルな服装で美酒美食を楽しむ。アぺリティフを含めコース全体がトスカーナ料理、白ワイン、赤ワイン.....。正にとめどない時間だ。このフネでは静かなクラシックが流れているようだが、それがほとんど聞こえない。周辺のフネはまるでクラブ状態。オープンディスコ、我々の初日はそのサウンドに巻き込まれダンシングナイトと化していた。そして気が付いたときには、ステートルームのベッドの上であった。

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翌土曜日、フォーミュラー・ルノーの走行音で目覚める。なんだか楽しい経験だ。メインダイニングでゆったりフルコースモーニング。11時にF1フリー走行開始。前座のルノーとは、その音も走行の迫力も、まったく次元が違う。そして午後2時。F1の予選が始まる。甲高いエグゾーストが周囲のビル群に反射してエリキュール港に響き渡る。建物と山の岩盤で囲まれた自然のサラウンド効果により、エンジン音は、まさしく偉大なる交響楽団の演奏会場となる。フェラーリエンジンの甲高さ、メルセデスエンジンの破裂音............。ヌーベルシケインでの減速から加速の一瞬のシーンが目に焼きこまれる。トンネルを抜け7速280km/hから2速65km/hまで一気に減速。TVモニターでのバーチャルと、横を向けばリアルシーンが同居する興奮。この船上でなければ体感できない、至上の世界が展開する。

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F2では日本の松下信二選手がエントリー、仕上げは好成績7番手で終了。コース解放まではボートと桟橋のみが運動場所。あとはテンダー移動となる。6時過ぎに開放、ゲストを待つ。ジャケット着用。美形の日本人ゲストお二人来場。この夜、我々のフネはオペラ歌手が登場、周辺のクラブサウンドとは異なる展開、キーボード、バイオリン、歌手がマダムバタフライやアベマリアを神々しく歌い上げる。周辺のメガヨットからはダンシングミュージックが響き渡る。夜が更けるにつれ美酒美食と美形とともにナイトタイムに.....水中ブルーライト、煌びやかなライトの数々がデスコナイトだ。トスカーナ料理にシャンパン、ワイン、もりあがらないわけがない。延々と続く。朝までだ....。

決勝の朝、晴天のモナコ。朝9時からポルシェカップ、フォーミュラー・ルノーのレースが前哨のエキサイティングなシーンを展開する。12時半。スタート前進行が始まる。ドライバーがメルセデストラックに乗りレーストラックを1周する。ホンダのクラリティにAlbert2世モナコ大公が自らの手で運転し、コースをめぐる。

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カウントダウン。スタート前には係留しているフネがホーンを鳴らす。午後2時スタート!爆裂するエキゾーストサウンドに包まれながら我々はランチのシャンパン!過酷で美麗なモナコグランプリが始まり、ドラマがスタートした。2時間後の結果はベッテル、ライコネンのフェラーリのワンツー!レッドブル、リカルドは3位。75回MonacoGPはフェラーリの手に!我らがホンダ、無念......。だが晴天のモナコの夏は始まっている。モニターのバーチャルとシケインのリアル。エリキュール港を取り囲むビル群、背後の山、熱情のF1サウンドがエナジーを発散し、まるでファンタジーのようだ。船上観戦、クルーたちのもてなし、コンセルジュの対応、夢のような時間が過ぎていく。レース終了とともにまた係留されているフネたちがホーンを鳴らす。ありがとう、また来年!素晴らしかった!

夏の太陽が照らし込む。まだ明るいのにボートの上ではもうダンシングパーティが繰り広げられている。さあ、我らも負けずに盛り上がろう。ボート観戦の楽しみはまだまだ続く!来年も来なくちゃね。

文:山崎憲治 Text:Kenji YAMAZAKI
写真:桜井淳夫 Photo:Atsuo Sakurai ※一部は編集部による
協力:Tobi Marine Trading UK Ltd. Canella Yachts
問合せ:株式会社トービマリン・トレーディング  TEL: 045-506-2422

※チャーター料金は €20,000~(宿泊、食事、アルコール代 含む)1週間チャーター8名様まで。出港はローマ近郊から、サルディニア島、コルシカ島、ナポリ、 シチリア島など(応相談)。燃料代、ハーバー利用料、税金は別途。

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