2016年にエンジンを6気筒自然吸気から4気筒ターボへと変更、車名を「718ボクスター/718ケイマン」としたポルシェのミッドシップスポーツカーに、新たな高性能モデル「GTS」が追加された。日本上陸に先駆けスペインで試乗する機会を得た。
現在のポルシェの商品戦略において、基準車をベースに、S、GTSとパワーを積み上げていくことは911やカイエンやマカンにも共通する常套手段だ。911であれば、SとGT3のあいだを、718であればSとGT4の間を埋める立ち位置ということになる。日常性、公道での快適性に加えてサーキットでの速さも取り入れた、いいとこ取りのモデルというわけだ。
果たして、718ボクスター/718ケイマンに設定されたGTSは、Sに対して15psアップの365ps、トルクはマニュアルトランスミッション仕様がSと同じ420Nm、PDK仕様は10Nmアップの430Nmとなり、それぞれトルクバンドが500回転広がっている。これはインテークダクトの容積拡大とターボチャージャーの最適化、最大ブースト圧を1.1から1.3バールにまで高めたことにより実現している。
開発初期の段階において、こうした商品展開をどの程度まで計算しているのか、718モデルラインの開発責任者であるヤン・ロス氏に尋ねてみると、「パワートレイン関係は一度の開発でおよそ7年のライフサイクルをみている。ベースとなるエンジンに対しては将来的に発揮しうる最大の性能を想定していて、GTSはSに対して15〜20psの出力向上を見込んでいた」と話した。
その言葉のとおり15psアップされた、まずはボクスターから試乗を始める。718導入時に感じた4気筒エンジンゆえの低回転域でのバラつき、トルクの細さが改善されていると感じた。スポーツエグゾーストシステムを標準装備しており、スイッチオンの状態でスロットルをオフにすると、バリバリバリと後方からアフターファイアの勇ましい音が聞こえてくる。市街地ではスイッチオフにしておいたほうがいいかもしれない。しばらくして屋根を開け放って走り出すと音は気にならなくなった。やはりボクスターはオープンに限るということのようだ。シャシーはポルシェアクティブサスペンションマネジメントシステム(PASM)を標準装備し、車高は標準モデルより10mm低められている。また20インチという大径のカレラSホイールも標準装備するのだが、うまく履きこなしておりとても乗り心地がいい。オプションのセレミックコンポジットブレーキ装着車では、バネ下重量の軽減からかさらに乗り心地がよく感じられた。
ケイマンではスペインにあるサーキット、アスカリも走行した。全長約5.4km、コーナーの数は26もあるテクニカルなコースゆえ覚えるだけでも四苦八苦だったが、そこはPDKに救われた。ステアリングに備わるモードダイヤルをスポーツ+にして、あとは思いっきりアクセルを踏みつければいい。トルクのツキが素晴らしく、ブレーキングを終了してゆっくりとコーナーへ進入するとノーズはシャープに向きをかえる。トルクを可変配分するトルクベクタリング(PTV)や機械式リアデフの恩恵もありリアタイヤはしっかりと路面をつかみ終始安定しており、コーナーからの立ち上がりでもきっちりトラクションがかかる。
きっと近いうち、よりサーキット志向の走行性能を高めたGT4が登場するのだろうが、街乗りのしやすさ、ときにサーキットも楽しめる懐の深さ、そしてアルカンターラなどをうまくあしらったインテリアなど装備のよさを考慮すれば、おそらくこれが、ポルシェのベストバランススポーツカーという解になるのだと思う。
文:藤野太一 Words:Taichi FUJINO
2024.03.29
ランボルギーニ、その60年はV12と共にあり|60 Years of ...
ランボルギーニの起源にまつわる物語はよく知られている。イタリアン・エキゾティックの世界で新参者のフェルッチョが注目を集めるためには、フェラーリに匹敵するエンジンを持たねばならなかった。そこで彼は世界最 ...
2024.03.26
フェラーリのあるライフスタイルのために|Nicole Competiz ...
2024年2月にオープンした「Nicole Competizione プレオウンドショールーム & サービスセンター」は、総床面積4191㎡という広い建物に20台前後の認定中古車とレーシングフ ...
2024.03.27
クロノグラフを発明した天才、『ルイ・モネ』の時計|Louis Moin ...
自動車の歴史はスピードというもっともわかりやすい性能を競う歴史であり、そのスピードを数値化する計測の歴史でもある。その計測において、クロノグラフという機構がもたらした功績は計り知れないが、意外やルイ・ ...
2024.03.20
DSをキャンバスに!? 子どもも喜ぶ「ヴァンセンヌ旧車会2024年3月 ...
パリの東の要、ヴァンセンヌ城。その前の広場で毎月開かれるヴァンセンヌ旧車会定例ミーティング。今月3月は第二週日曜日に集まった。本来は第一日曜日だが、先週はパリ セミ マラソンが開催されそのコースの一部 ...
2024.03.18
連載:アナログ時代のクルマたち|Vol.22 ポルシェ908シリーズ
1968年にFIAはグループ6のスポーツカープロトタイプカテゴリーのレギュレーションを変更し、最大排気量を3リッターに定めた。この結果ポルシェはレギュレーション一杯の3リッターエンジンを開発することに ...
2024.03.22
ポルシェ新型パナメーラ海外試乗記|未体験の乗り味を実現した、驚きのサス ...
ポルシェの2023年のグローバル販売台数は32万221台と過去最高を記録している(ちなみに国内の新規登録台数も初の8000台超え)。もっとも売れているのがカイエン、続いてマカン。そして911、タイカン ...
2024.02.22
【追悼】マルチェロ・ガンディーニが若者に伝えたい大切なメッセージ|トリ ...
人生の恩師 マルチェロ・ガンディーニを偲んで…世界中のクルマ好きを魅了した天才デザイナーが2024年3月13日、永眠した。去る1月12日、トリノ工科大がマルチェロ・ガンディーニに機械工学 ...