CHRONO

-CHRONO- update

メカニカルとハイドロが融合する不思議な時間

「ハイドロ・メカニカル・ホロロジスト」を謳うHYTの新作、「H0 」が日本でリリースされた。最新の医療や化学、物理学を駆使したテクノロジーを組み合わせた、機械式液体制御という新しいジャンルの時計は、何を指し示しているのか。

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時間は周り巡るものだろうか、または流れるか、矢のように飛ぶものか?時計の造り手がしばしば「lecture du temps」と呼ぶ、時間の再生表示あるいはその読ませ方は、車でいう足回りに似ている。時間でも道でも、通り過ぎていくものを視覚や触覚、平衡感覚に伝えてくるという意味においてだ。

時間表示のために、液体が封入され、加圧と減圧をピストン動作で行う仕組みが入っている点で、HYTの「H0」は時計でありながらそのままシトロエンDSを思い出させる。そういえばハイドロの回路内を流れるLHMも、緑色だったではないか。

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H0は2017年発表の新しいコレクションで、HYT に独特のキャピラリー(ガラス管)とベロー(ふいご)を際立たせるデザインを採用。ベゼルが無いというか、ドーム状のサファイヤクリスタルガラスが、まるでキャノピーのように文字盤とケースを覆う。動力と調速機構は通常の機械式で、分表示の針を輪列から採っている点は定石通り。だがカムを介してピストンを押すことでフレキシブルな合金製ベローの内圧を変え、ハイドロ回路内の液体を制御する。

ちなみに堅牢性の高い染料で着色した緑と透明、2種類の液体は分子の陽極・陰極で分かれ、この分離面こそが、通常でいう時針にあたるわけだ。時間を表示するのに、よりシンプルな仕組みはある。だが時間や乗り心地とは、それを感じる主体ごとに抽象的なものだし、五感を開いてこそ味わい深くなることを、このハイブリッドな時計は気づかせてくれる。

文:南陽 一浩 Words:Kazuhiro NANYO

H0 Black
エイチ・ゼロ・ブラック
ハイブリッドの構造自体は明快だが、そこにリューズによる調整機構が介在し、6時位置で戻るレトログラードの進みに正確さを確保すること、機械と液体を分ける気密性を思えば、セッティングの複雑さが窺える。手巻き、ブラックDLC SSケース&SSリューズ、ケース径48.8mm。560万円(税抜)

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